ヴィオラで聴く『詩人の恋』 | 興味の赴くままに

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クラシックのレコード音楽鑑賞と山歩きと野茂投手が好きで歴史の進歩を信じる壮年が、興味の赴くままに綴るブログです。
特に好きなのは、音楽ではモーツァルトの全部、ベートーヴェンとブラームスの交響曲、山では剣岳と鳥海山。
そして、スポーツでは野茂投手です。

弦楽器の中でヴィオラが一番好きな私、オーケストラ演奏会では真っ先にヴィオラに注意が行くのですが、そのヴィオラで、シューマンの名作歌曲集『詩人の恋』を聴かせてくれるという、レアなリサイタルを目当てに、とあるコミュニティセンターの小ホールに出掛けました。


若手ヴィオラ奏者の田原綾子さんと夫君實川風さんのピアノによるデュオで、演目はこのチラシの通り。

歌曲を器楽演奏で聴くのも大好きな私にとっては、願ってもないコンサートです。

田原さんは、以前NHKBSで放映されたエール弦楽四重奏団の演奏会でヴィオラを弾いていたのを見て以来の注目株です。

初めに、フォーレの歌曲2曲で耳慣らし。
いずれもヴィオラの音色にピッタリの曲と演奏で、
これですっかり二人の演奏に惹き込まれました。

続いては、實川さんの新作、無伴奏ヴィオラのための「3つの夕べの歌」。
演奏前の實川さんによる曲紹介のお話の中で「古い日本音楽をイメージしました」と言われた通り、雅楽を思わせる幽玄な響が印象的。
冒頭の最弱音で弾かれた部分では、弓が弦を擦る音がはっきり聞こえたのが新鮮でした。
途中、唱歌「朧月夜」の旋律も見え隠れしていました。

前半最後は、シューベルトの大作アルペジョーネ・ソナタ。
私が大好きな、美しくも哀愁に満ちたこの曲の魅力を、しっかり引き出してくれました。

後半は、目当てのシューマン『詩人の恋』。
独身時代にこの曲に嵌って感情移入していた私にとっては、かけがえのない曲の一つながら、結婚後はずっとご無沙汰。
しかし、ピアノの前奏が始まるや直ちに曲の記憶が蘇って来ました。

この曲でも演奏前に二人による内容紹介のお話があり、含まれる.16曲それぞれについての熱い思い入れが語られました。
それを反映した演奏は、二人の演奏技術を駆使して曲ごとの性格をきっちり弾き分けた見事なもの。
田原さんの渋くも艶のあるヴィオラの音色と絶妙の強弱コントロールで紡がれる歌と、それを支える實川さんの輝かしいピアノとが、一心同体となった充実した演奏でした。

定員100名ほどの狭いホールにブラヴォーの声が飛び交いました。

それに応えてアンコールに奏された「献呈」は一層の素晴らしさ🎶。

最後を〆たのは、前半で弾かれた無伴奏曲の1曲目「月の晩」の原曲に当たる、實川さんが昨年新たに編曲した「朧月夜」。
その冒頭が、「月の晩」の始まりとおんなじでした。
主部は『詩人の恋』の名演に劣らない聴き応えがありました。

このホールのリサイタルでは、毎回終演後のホール内で演奏者とのトークタイムが行われているとのことで、せっかくの機会なので私も残って参加してみました。

会場から質問を募って出演者に答えてもらうという趣向で、こんな時には質問せずにはいられない私、真っ先に手を挙げました。

今日の『詩人の恋』が大変素素晴らしかったので、次は是非、同じシューマンの名作歌曲集『女の愛と生涯』を演奏していただけませんか?

それに対するお答えは・・・。

實川さん曰く、『詩人の恋』に劣らない名作ですが、歌詞に「女性の幸せは結婚して愛する人の子供を育てること・・・」という、現代の世にそぐわないものもあるので・・・と、微妙。

田原さんは、いつの日にかシューベルトの『冬の旅』を演奏するのが私の夢です❣️

その日が来るのを楽しみに待ちます♬🎶~🎵