名手5人が奏でるマイム付き「音楽の捧げもの」 | 興味の赴くままに

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そして、スポーツでは野茂投手です。

バッハ晩年の渋い傑作「音楽の捧げもの」をマイム付きで上演するという、ユニークなコンサートを体験しました。

出演したのは、このチラシ記載の面々で、演奏は我が国の5人の古楽名人、マイムはフランスのユニット2人。
音楽の捧げもの20240217

この「音楽の捧げもの」、良く知られている通り、バッハが、次男が仕えていたプロシアのフリードリッヒ大王の宮廷を訪ねた折に、フルートの名手でもあった大王からピアノ即興演奏を所望されて披露したのに続いて、王にフーガの主題を出してくれるよう求め、それを元に作曲して王に献呈した作品です。

全部で13曲からなり、内訳は、リチェルカーレ(=フーガ)2曲、カノン10曲、トリオ・ソナタ1曲で、いずれも大王の主題に基づいています。

今日の公演では、最初に3声のリチェルカーレ、最後に6声のリチェルカーレが、ホールアドバイザーでこのコンサートの企画者でもある松居直美さんのパイプ・オルガン独奏で弾かれ、その間に、名手達によるカノン10曲とトリオ・ソナタ、という順に奏されました。

全ての曲にマイムの舞踏が加わり、耳だけでなく目でも楽しめる趣向でした。
マイムの舞踏は、奏者達の後ろの舞台全面に特設された高さ1メートルほどのプラットホームの上で演じられました。

1時間を超えるこの渋くて地味な曲を聴き通すのはなかなかの忍耐を要するところ、マイムが加わることによって、それが緩和されたのは事実ですが、紙製のあれこれ工夫した小道具も使って演じられたそのマイム、各曲にマッチし引き立て合っていたかどうかは、好みの分かれるところです。

大王のためにバッハが意を尽くして作曲したフルートを吹いた前田りり子さん、前田さんと共に旋律を担うヴァイオリンの寺神戸亮さん、通奏低音で支えるヴィオラ・ダ・ガンバの上村かおりさんとチェンバロの曽根麻矢子さん、いずれ劣らぬ練達した腕前で見事な演奏を聴かせてくれました。松居さんは、カノンでも舞台に置かれたポジティフオルガンで演奏に加わりました。

プログラム冊子の松居さんの説明で知ったのですが、「リチェルカーレ」とはフーガの古称で、この曲の副題「Regis Iussu Cantio Et Reliqua Canonica Arte Resoluta(王の命令による楽曲、及びカノン技法で解決せらるる他の楽曲)」の各語の頭文字を採った、バッハの言葉遊びだったのです。

アンコールは、バッハの「われ汝の御座の前に進みいで BWV668a」。初めて聞く曲ですが、心に染みる曲と演奏でした。
アンコールもマイム付き! 本割と違って、プラットホーム上ではなく、奏者達と同じ舞台に降りて来て、5人の奏者の間を自在に巡りながら演じられた様子が愉快。