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未知なる心へ

統一教会入信から脱会までの日々と、脱会後の魂の彷徨。

人にはいろんな人がいる。見た目で他人を理解することはできないし、多少の付き合いがあったとて、その人の真の姿を知ることは難しい。

 

 

わたしの職場の同僚、というか先輩の警備員S氏。とっても温和で優しくて良い人である。ただ、細かい経費の精算を忘れたりして、ちょっといい加減なところもあると思っていた。まあ、そのくらいなら誰にでもありうることだから、仕方ないと思っていたのだが……。

 

 

わたしの不在時に、ロッカーの中に置いてあったスティックコーヒーを、S氏が盗んでいたことが判明したのだ。

 

 

スティックコーヒーは減ってきたら補充して、常に数本はストックしてあったのだが、どうも、減るスピードがはやい。最初は気のせいだと思っていたが、念のため、ロッカーに鍵をかけるようにした。

 

 

だがある日、鍵をしないで帰ってしまった。そして翌日、コーヒーを確認すると、やはり減っていた。あまり飲まないで、二本だけずっと残っていた銘柄のコーヒーが、一本になっていたのだ。

 

いつも自分が飲んでいるコーヒーだと、減ったのは勘違いで、実は自分が飲んでいたということもありうる。しかし、自分が飲まないコーヒーが、勝手に消えるわけはない。

 

 

それから数日後、また鍵をかけ忘れた。翌日コーヒーを確認すると、残りの一本も消えていた。これで、S氏が盗んでいるということは、ほぼ確定した。

 

 

他人のロッカーを勝手に開けて、中のコーヒーをくすねるなんてちょっと考えられないことだが、いわゆる「盗癖」があるのだろう。多分、本人に悪気はなく「ちょっとぐらい、いいだろう」という軽いノリなのだと思う。

 

 

それからは、コーヒーをロッカーに置くことはやめた。韓国では盗む人より、盗まれるようなところに物を置く方が悪いというらしいが、わたしもコーヒーは持ち帰ることにしたのだ。

 

 

鍵はうっかり、かけ忘れることもある。だが、コーヒーさえなければ盗めない。わたしはコーヒーを持ち帰り、ロッカーに鍵をかけ、さらにロッカーにドクロのステッカーを貼った。「おれは分かってるよ」と、暗に知らしめるためである。

 

 

以前、女性の元マラソン選手が万引きで逮捕されたが、その方もある種の精神的な病気だったらしい。S氏の盗癖も、それに近いものがあるのだと思う。とにかく良い人で、色んな面でお世話になっているだけにショックも大きかったが、コーヒーを何杯かおごってやったと思って、あきらめようと思っている。

 

 

普段から気に入らないと思っている人だったら、会社なり上司なりに訴えても良いのだが、S氏はとにかく良い人だから、そこまでして関係を悪くするのが嫌だし、かわいそうだという思いもある。一応、警備会社の課長だから、窃盗を働いたとなると少なからず問題になるだろう。

 

 

人は見かけによらないということを、改めて思い知った出来事であった。まあ、わたしだって他人から見れば、得体の知れない人物に見えているのだろう。実際、自分でも自分のことが分からないのだから、他人のことなど分かりようがないはずだ。