忘れない。忘れられないあの日のこと。その2 | つれづれなる、のろのろ日記。

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楽描き人(らくがきにん)のろこの、仕事・家族・地元・絵・写真・妄想などなど。
お気楽に読んでみてくださいね~。

ここからの続きです。



スポーツドームには、沢山の人達が車に乗って避難をしに来ました。
暗くなっても尚、人は増えて行きました。


それにしても…

本当に冷える。



電気は付かないし、余震は続くし…
本当に何をしても不安で不安で仕方なかった夜。

施設の一部屋に知らない人達が寄り添い避難しているこの光景。



そんな中…

「これ、味無いけど召し上がってください。
 こんな時は少しでも何かお腹に入れてたほうがいいですから」と

どこかの奥さんが「せんべい汁」用のせんべいをパキッとわけて
ひとかけらくれました。


お礼を言い頂いたけど…

本来なら夕食の時間のはずなのに、不思議と空腹感はなく…
とにかく、時が過ぎるのを待ちました。



そんな中、私の目の前にいた奥さんの元に
旦那さんが駆け寄ってきた。

「おおおおお!!! 無事だったかーーー!!!」

号泣して抱き合うご夫婦。
その姿を見てて、こちらも泣けてきた。
良かった良かった。無事だったんだ。
その場は多分、みんな密かに泣いてたと思う。


そんな夫婦もいれば、一方で息切れをしながら話す女性が。

「私…大船渡から 歩いてきたの…
 家族が ここにいるんじゃないか と 思って…」

この寒い中、上着も着ずに仕事の作業服のまま。




・・・歩いてきた、って。
あの加工工場なら何時間かかったんだ?

5時間くらいはくだらないんじゃないか…??
この暗闇を、この余震の中を
あかりも何も無いのに…たどり着いたんだ。



そんな人も見受けられ…


新しく人が来れば

「高田小学校まで波が来てたって!」
「酔仙はダメだったぞ!」
「竹駒のローソンもダメだ!」



私の実家とNさんの家は、地区が隣同士で
会話の中に出て来た「酔仙」というのは、Nさんの地域内にある
酒造会社。

そこがダメだ、と聞いたとき…


N「ねぇのろちゃん。
  それじゃあ、うちらの家ってもしかして…」
私「…ですよね。うちもきっとダメだったのかも…」


まさかとは思っていたけど、どうやらそれが濃厚になってしまった。

「父さんも母さんもちゃんと逃げたべな…」


高田にある私の実家は、私が小学校2年生の時に建てられたもの。
父親は
「津波とはまず無縁なところ。ここまでは来ないだろう」

ということで、その土地に決めて家を建てたそうです。


(父ちゃん…お願いだから母ちゃんの言うこと聞いて逃げててよ…!)

こう思わずにはいられませんでした。




ほとほと夜中になった頃…

窓に掛けられたカーテンを取り外し、上着代わりにする親子や家族。
スポーツ施設だからの幸いで
ユニフォームが入った袋を座布団の代わりにして座りました。

でも… 本当に震えが止まらない
どうにも寒くて仕方がなかったけど…
それしかないから耐えるしかありませんでした。


そしたら。

「アンダ達、寒いべがらホレ、これ敷がっせん」と

ダンボールを手渡してくれたおばちゃんが。

3人「…あ、ありがとうございます!!!!!」

ダンボール1枚のみなのに
めっちゃ暖かい!!!!!


3人でくっついてダンボールに座り…

そしたら、さっき安否を確認できたご夫婦が
私達に毛布を貸してくれました。

「主人の職場の、宿直用のものですが…」と。


本当にありがたい…
この2つのアイテムのおかげで、本当に助けられました。


いよいよもって皆が寝る時
施設にあったストーブを付け始め、高齢者を中心にあたりはじめると
ほんの気持ち…

あたたかくなってどうにか暖をとることができた。


小声で話す私達。

S「明るくなってきたら、すぐに行動開始するか。
  まず、Nさんはオヤジさんとこ見に行きな。」
N「え、じゃあSさん達どうするの?オレいいっすよ。
  車もオレのだけだし…ガソリン見ながら行けるところまで行きますって」
S「大丈夫だ、なんとかなる」
私「うん、大丈夫だよ」


そこで、私とSさんは明るくなってきたら歩いて移動することを覚悟しました。



S「まずは… 寝よう。明るくなってからだ。おやすみ」


*****



夜中にトイレに行ったり、やはり余震で目が覚めたり
でもやっぱり寝付けず…

そして
私達のそばには水道が。
(※幸いにもその時は水が出て、水洗トイレもちゃんと機能していた)

避難してきた家族の中に新生児~生後1ヶ月くらいの赤ちゃんがいたのですが
お母さんがミルクを作りに約2時間おきに水を汲みに来ました。
その度に「すみません…」と謝って…
赤ちゃんが泣く度に周りに申し訳なさそうにしてて…

そんなこと無いのに。


生後生まれてすぐの赤ちゃんに
殺菌無しの水を含ませての授乳はかなり抵抗もあっただろうなぁ…



何気に目が覚める度に考えるのは
家族や両親の安否。

しまいにはありとあらゆる人達が心配になって
手に変な汗をかいていたり…

とにかく、変な一夜を過ごしました。


*****


大体、五時半を過ぎたあたりだと思います。

じわじわとあたりが見え始め……
さて、もう少し目が覚めたら行動開始するか…と思っていたら。


それまで見えなかった周りの人達の顔も見え始め
互いに挨拶や「また余震、嫌だねぇ」等
少し会話をしつつ…

そしたら。


部屋の隅に、夢子のクラスメイトのお母さんを発見!

駆け寄って肩をたたき…


「…!!!! どうしてここにいるの??」
「いやいや、どうしてって、仕事からそのままここに逃げてきたんだよ」
「私は、就職先決める面接がこっちであってさー。それでここ来てたんだよ」

彼女は、ふみさん。(仮)
隣には、ふみさんのお友達「ダスキンさん」が。
※ダスキンにお勤めだったので…この呼び名で定着。


ふ「これから、赤崎帰るんでしょ?」
私「うん。もちろんそのつもりでいたよ」
ふ「車とかは?」
私「会社に置いてきたから…多分もう流されたと思う」
ふ「私もこれから向かうから、一緒に乗って行ぐべし」
私「!!! いいの?
  たださ、私の他にもう1人いるんだけど、いい?」

と、Sさんを呼び、ふみさんに紹介した。


S「オレも車を会社に置いてきたから、無いんだよね」

ダスキンさんも、住まいは大船渡の人。

ダ「ならば、オレの車に乗って行きましょう!」と
言ってくれた。



これで夜明け後の行動は決まった。


S「Nさん、俺たちこの二人にお世話になることにするよ。
  大船渡なんだって、おうち。
  だからNさん、オヤジさん捜しに一中(地元の中学校)行ってきな。」
N「方向一緒だから安心ですね。
  じゃあ、オレ…いいですか、一中行っても」
S「おう!行げ行げ!ホントに助かったよ!あ、そうだ…」


ポケットからゴソゴソと自分の車の鍵をNさんへ渡すSさん。


S「オレの車、ガソリン結構あったはずなんだ。
  ナンバーは◎◎-◎◎で…
  もし見つけたら、ガソリン抜き取ってていいから!」

N「わかりました!じゃあ、鍵預かりますね」


きっとまた会うことを約束して
ここで、Nさんと離れた。




S「さ、うちらも行くぞ」

ここから、
私、Sさん、ふみさん、ダスキンさん4人での行動が始まりました。


続く