問題は「東大教室(17東大日本史本試Ⅳ 問題)」をご覧ください。

 

第4問 近代(政治)

大日本帝国憲法下における内閣と軍部

 

解説

 

明治憲法体制と「軍部の自立性」

 

明治憲法体制のもつ特質を前提にした問題。

 

設問の解説にはいる前に、問題文にある「大日本帝国憲法の下においては、内閣・帝国議会・枢密院などの国家機関が複雑に分立し、内閣に対する軍部の自立性も強かった」という表現を簡単に分析しておきたい。

 

まず、「内閣・帝国議会・枢密院などの国家機関が複雑に分立し」の部分。

 

明治憲法体制のもとでは、日本の国家的決定はすべて天皇の名でなされるものの(天皇大権)、その実質的な決定権は諸国家機関がそれぞれの役割に応じて掌握した(宮中・府中の別)。

 

こうした権力の割拠性が生じるメカニズムや、それがもたらした問題点については、東大日本史最頻出テーマの1つであるにもかかわらず、教科書の記述が不足している。

『詳説日本史ガイドブック 下』(p.35、山川出版社、以下SNGと略記する)などを参照して必ず理解を深めておきたい。

ブログ「グラサン日記」の「教科書の研究(明治憲法体制の特質)」も参考になるだろう。

 

また、『謎とき日本近現代史』(講談社現代新書)でも、「明治憲法下の内閣はなぜ短命だったか」「戦前の政党はなぜ急成長し転落したか」という問いをとりあげている。

東大や一橋大の問題が下敷きになっているので当然のことだが、今後の出題に備えるという点でも一読してみてほしい。

 

次に、「内閣に対する軍部の自立性も強かった」の部分にも注目しておく必要がある。

 

「軍部の自立性」をもたらしたもっとも大きな要素は、統帥権の独立だったSNG p.35)

統帥権(統帥大権)とは、軍の作戦・用兵などを指揮する権限をいう。

明治憲法に「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」(第11条)と規定された統帥権は、天皇の大権事項の1つとされ、天皇と陸海軍を直結させていた(統帥権の独立)。

 

一方で、明治憲法体制下の天皇は、その政治的権限を先頭にたって行使しないこと(宮中・府中の別)を原則としていたため、結果として、この統帥権の独立は、統帥事項(軍の作戦・用兵など=軍令事項)を統轄した参謀本部海軍軍令部が内閣や議会の関与を許さずに行動するための根拠になっていった。

 

「17東大日本史本試Ⅳを考える②」に続く。