高校2年の冬、明日はクリスマス・イブだ。
今年は特に寒い冬になるらしい。

 

窓の外を見るとちらほらと雪が舞い始めたようだ。大きなブラウン管のテレビに映る左上の数字は19時を過ぎたことを示す。

 

学生はすでに冬休みに入って数日経ち、クリスマスと太陽暦で年越しを控えるという事もあって、慌ただしくも賑やかで、私もその空気感を楽しめている中のひとりになったのだろう。

 

 

生まれて初めてのこの下腹部の鈍痛、悪い痛みじゃない。

 

なかなか言えなかったが、先輩は気づいて驚いたようだった。

私は一体、どんな風に見えていたのかな。

 

 

祝日の金曜日の夜だが、明日こそこんなカップルが多いだろうな。
 

特別な日、今の私にとっては今日がその特別な日で間違いない。

 

先輩は、明日と明後日は別のバイトがあって忙しいという事で、遊びに行こうという流れから今日になったのだ。

 

 

まさか、こんな日が来るとは思っていなかった。

 

てっきり彼女がいて、この一年間バイト先で和気あいあいとしながらも、時に理不尽な客もくる中、みんなで乗り切ってきた仲間で、どちらかと言えば私は妹のように見られているんだとばかり思っていたから。

 

 

先輩の横にこうして一緒に横になれている事が、いまだに信じられない。

 

 

頬をつねるまでもなく、もう少しは立ち上がって歩きたくはない鈍痛がその事実を証明している。

 

 

痛いだけでちっとも良いことなんて無かったが、目の前にいるのが先輩だという光景だけがせめてもの救いだった。

 

 

これから、電車で帰る必要がある。
 

でも、もう少しだけこうしていたい。

 

 

先輩がおもむろにゆっくりと床に足をつけて立ち上がる。なんだか同じ時間を、家族として一緒に過ごしているような気分だ。

 

あの時、遠出して雑貨と一緒に下着もそろえておいて良かった。

 

一緒にいた友達にはバレていないと思う。

トイレに行って、離れているその間にすかさず買い、元の場所にみんな居なかったから、メールで連絡しつつ合流するという、流れるような身のこなしだった。

 

 

「何か飲む?」冷蔵庫を開けて先輩が言ってくれる。お茶は胃が痛くなりそうなので、水をもらう事にした。

 

21時には家にたどり着けばいい。

 

あと1時間はこの幸せな時間に浸れる。

 

シャワーを浴びたいが、この繁華街の派手なホテルのアメニティを使ってしまうと、強い香りがして家に帰った時にバレそうだ。

 

 

せっけんなら問題ないだろう。

出る前にさすがに一緒にシャワーを浴びることにした。

 

 

アルバイト先や普段の制服では見せない姿を見て、また求めてくれる先輩が嬉しくて、かわいいとさえ思うのだった。

 

 

画像
 

この物語はフィクションであり、実際の人物や団体とは一切関係がありません。架空の創作物語です。

この作品は2024年2月13日にnote.comで掲載したものです。

 

特別に教えて

ブログを始めたきっかけは?

 

 

 

フィクションを書く!

 

 

 

 

 

Amebaからの手紙を受け取る

 

 

 

 

 

カバンから上衣を取り出し、前のジッパーをあげて身を包む。


家でジーンズに履き替えてきたので動きやすい。

肩までの茶髪を後ろ一つにまとめる。


なんだか学校に行く朝より気合を感じる。

 

住宅街の中の店舗なので、繁華街や駅前の店舗と比べて静かではあるが、道路沿いであることもあって、店舗前の駐車場の見通しが良くなるのは深夜帯から早朝にかけてくらいだ。

 

シフトには昨日、一昨日と入っていなかったので久しぶりな感覚すらある。

 

アルバイトでもノルマがあるらしい。
クリスマスケーキか。バックヤードの事務室に入ると駅前の店舗から様子を見に来たオーナーから、そんな話をされた。

 

1個でいいらしいので、自分の家の分だけで済みそうだ。

そういえば、昨日は学校で同じグループに居るあの子が入っていたはず。私とほぼ入れ替わりのシフトになっている。

 

一昨日は珍しかったんだな。トイレを見に行こうとフロアに入ろうとすると、裏で飲料の補充をしている人がいる。

 

なるほど、ちょっと気合を入れて身だしなみを整えていたのは。

この人がその大学生の先輩だ。
挨拶すると軽く会話する。

 

学生期間を抜けて歳を重ねるほど、数年の年の差なんてほぼ関係なくなってくるが、高校生から見て大学生や、25歳くらいの人はとても大人に見える。

 

この先輩のように学生でひとり暮らししているなんて、憧れも相まって輝いて見えるものだ。

 

始めてシフトに入ってからしばらくは店長に仕事を教わったが、先輩もレジのことについて教えてくれた。

 

距離の近さと良い香りがすることも相まって、あまり内容が入っていなかったのはここだけの話だ。

 

あれから1年近くにはなる。

 

そろそろ、商品搬入のトラックが到着する時間だ。

昨日、一昨日といなかったねという話から、シフトが入っていない時はどんな風に過ごしているのかという話になりかけたところで、他のパートさんから注意される前にトイレを見てきますと言って離れる。

 

お客さまがレジに並びだす忙しくなる時間を控え、搬入された商品を速やかに商品棚に補充していく作業を控えている。

 

ゴミ出しはパートさんが15時くらいにやってくれているので、次は帰る前にやればいいだろう。

 

お客さんの多い時間帯はこの後だ。

 

サラダやお弁当、多少の冷凍食品の補充を行っていく。
店長がレジまわりで作業をしているので、お客さんがレジに来ても対応は問題ないだろう。

 

大学生の先輩とともに商品補充作業が始まった。

 

周囲の目と耳を気にしながら。

 

なるほど、これを楽しみにしていたのか。

 

画像
 

この物語はフィクションであり、実際の人物や団体とは一切関係がありません。架空の創作物語です。

この作品は2024年2月12日にnote.comにて掲載したものです。

 

とりあえず井上さんにだけでも連絡はしておこう。


あの時代で言う"ケータイ"を枕元から手繰り寄せる。一応あの帰宅後、雨に濡れたことで体調危なめな予感がしますと正直な直感を伝えてはおいた。

 

まさか、本当にそのとおりになるとは思わなかったけども。

 

この時期には大体体調崩れる傾向があるので、去年なんともなかった分を回収しているんだろうという心持でいることにする。

 

「え?大丈夫?そっち行こか?」

と即レスされる。さすが井上さんだ。

 

大丈夫だと思います、いま汗をかいて起きて気が付いたところでした。着替えて、ストック用の固形食食べたとこです、と続ける。

 

「社長からヘルプ来てて終わったら寄ろうか?」

 

まだこれから寝るのでお気遣いありがとうございます、汗かいて体温も落ち着いたし食欲もあるから回復するだけだと思います。薬もあるし。

あと、どうせなら昨日来てもらいたかったかもしれません 笑

とちょっと遊び心というか余裕を含ませておく。

 

「大丈夫そだね 笑 わかった。お大事にね。なんかあったら言うんだよ。」どうやら意図が伝わったようだ。

 

あの時代のような勤怠に縛られない現代社会の良さだなあと、なんだかじわじわと有難さがこみあげてきた。

 

 

井上さんもありがとう。
あなたのそういうところが私は好きなのです。

おやすみなさい。

 

そろそろ朝も7時になろうかというところだが、若干身体を冷やしてしまったこともあって、市販品ではあるが薬を飲んで寝る。

 

葛根湯は優秀だ。

そういえば、これまで数々のワクチンの接種を受けてきたが、そのたびに体調を崩すことが多々あった。風邪に似た症状もあれば、目まいで起きられないことだってあった。

 

寒気がするときは葛根湯でなんとか乗り切った。ただ、ケースバイケースだとは思うので接種時の説明書をよく読んでおくべきだろう。

 

 

さて、先ほどまで横になっていたベッドにまた入る。

汗で濡れてしまった洗濯物は、洗濯機にセットして乾燥まで自動でやってくれるのでそのまま任せることにする。

 

そういえば、何かの話の途中だった気がするが、今はゆっくり休ませてもらう事にしよう。

 

カレンダーを見れば今日は木曜日。

 

あの事務所のサーバーが忙しくなるのは、大体週末に多い傾向があるので、おそらくはゲームかマップ関係のアプリの処理が多いだろう。

 

平日は行政かドローンの中継あたりか、いずれにしてもそれぞれ言語が違うようなものなので、処理中のデータの中身を覗いて見たところでわけがわからないものになっている。

 

それは利用する側がどんな言語を使うのかによって変わるため、解けない事は無いだろうが至難の業だろう。

 

かつての、第二次世界大戦時のエニグマ解読のようなテンプレートが見つかれば話は別かもしれない。

 

もちろん、しっかり法に触れるのでやらないに越したことはないが。

 

テキスト系のプラットフォームのサービスはそんなに負荷がかからないため、動画や生配信関係の処理が重ならなければ問題はないはず。

 

そもそも、うちの会社だけが一手に引き受けているわけではないので、分散して上手く機能するはず、などと考えているうちに、徐々に意識が遠くなり、再び深い眠りにつくのだった。

 

画像
 

この物語はフィクションであり、実際の人物や団体とは一切関係がありません。架空の創作物語です。

この作品は2024年2月11日にnote.comにて掲載したものです。

 

へえ、昔はこんなににぎわっていたんだ。

 

あれから適当に解散して家が近い子同士で帰路につく。駅が近い事と、そもそも公共交通機関が充実しすぎていて迷路のようだ。

 

しかし、この"私"は慣れたようにすいすいっと進む。

 

ビル群と商業施設、繁華街を抜けて駅の改札を抜けて階段を上がると一日を乗り切ったという人たちの様々な表情が見える。

 

おじさんたちの視線が気になるところだが、なるほどカバンにストラップをたくさんつけることによりガードになっている、というわけでもないのか。

 

 

ちらほら空いているロングシートの席の中で、おばあさんの横に迷いなくすっと座ると、カーディガンのポケットの中からケータイを取り出し、母親へ今帰ってるとこと打ち込んだ。

 

 

わたしが過ごす現代でも新宿シンジュクは残っていて、高層ビルこそメンテナンスの問題から低く改築されたものの、ビジネス街、行政機能のある街として存在している。

 

しかし皇居から東、霞が関の東側三分の一は、農地、または土壌改良中のまっさらな土地になっているはずだ。

 

湾内は大水が回析かいせつして海面が乗り上がり、塩害を被った土地もあった。その後、堤防の嵩増しかさまが施され、避難塔も造られた。

 

その材料の多くに元高層ビルの建材が再利用されたと聞いている。

コンクリートや土に関する技術、とりわけリサイクルに関する技術が、いわゆる低地居住禁止令が出てから大きく進歩したのだった。

 

 

そんなことを考えていると、先ほどまでの猥雑な雰囲気から一転して静かな夜の住宅街の中を進むごとに電車は中身を軽くする。

 

今日はいつもよりは遠征したらしい。
遠回りな寄り道だ。

 

時計の針は20時を少し回ったくらいを指す。

 

もうすぐ冬が訪れることがわかるくらいには冷え込んできた。もう少し体が冷えないように太ももが隠れるくらいにはすればいいのに。おしゃれはがまんとの闘いなんて名言が伝わってくる。ついでにこの角を曲がればもう自宅らしい。

 

2階建ての新旧混ざった戸建てが並ぶ住宅街は、自動車や自転車に乗った人たちがちらほら行き交う。

 

時間的には小さい子供がいる家庭はすでに夕食を済ませて、翌日に備えるようなそんな頃合いだろう。

 

見覚えは無かったが、珍しさと懐かしいにおいがする光景だった。

 

 

 

汗をかいたな。
気持ち悪いから着替えたい。

 

はっとしてまぶたをあげると、慣れ親しんだ自室の天井。

新しくも古くもないアパートの一室。

 

一昨日に雨に濡れて帰ったせいで、昨日から熱が出て大変だった。

 

こういう時に一人暮らしだとなんだか心細くはある。

 

ついでに喉も随分渇いた。セラミックボトルのスポーツドリンクを冷蔵庫から取り出す。

 

寝相が悪かったせいか、汗をかいた身体が冷えたことが気になるが、食欲が回復しているようなので食べれそうなうちに保存しておいた固形食を摂る。

 

時計は午前4時と半分を回った所だ。

 

あんなに毎日出勤や通学していたら、こんな時にはいったいどうするのだろうか。今度隣のおじいちゃんにでも尋ねてみようと思うのだった。

 

画像
 

この物語はフィクションであり、実際の人物や団体とは一切関係がありません。架空の創作物語です。

この作品は2024年2月10日にnote.comにて掲載したものです。