地面に一直線に吸い込まれる

 

一瞬のはずなのにどうして

 

 

その恐怖にハッと目を覚ます。

 

いつもの自室。
天井。
 

窓のカーテンからははっきりと力強い光が漏れ出ている。

 

 

気づけば汗びっしょりになっていた。
これは風邪の熱のせいではないだろう。

 

なぜ、あんな小さな子があんな思いをしなければならないのだろう。

汗だけじゃない。
涙が止まらない。

 

なんでわたしはこんなに泣いているんだろう。

 

ただ眠っていただけなのにという不思議な感覚半分、幸せだったはずの時空から、突如として突きつけられる悲しい末路を辿った少女と共にした感覚の落差に身体からだが追いつかない。

 

しかも、こんなにもはっきりと覚えている。

 

熱はすっかり下がったようだ。でも、長い事眠っていたこともあって、この宙に浮いた感覚が気持ち悪い。

 

まず、濡れてしまったパジャマをどうにかしたい。ベッドも少し湿っていてまた横になるのはかなりしんどい。

 

かといって、起きていられるかというと、そうでもない。
少し時間が必要かもしれない。

 

軽く水を飲んで、椅子にしがみついたものの冷えてきそうだ。

 

平衡へいこう感覚がまだおかしいものの、水を飲んで少しマシにはなったので、着替えるついでにシャワーを浴びてみることにした。

 

昨日の明け方にセットしておいた洗濯物は、すでに乾燥まで終え、洗濯乾燥機の中で冷たくなっている。

 

今着ているパジャマは裏起毛のついた薄ピンク地に、白い太線で描かれた手のひらくらいの大きさのくまさんが斜めに並ぶ、かわいい上下のセット。

 

とてもお気に入りだが、汗を吸ったためにずっしり重い。

しかたない、薄青色のくまさんパジャマの出番だ。

 

ベッドはすでに掛布団をはぐっている。

あとは温風サーキュレーターに頑張ってもらうしかない。

 

わたしがシャワーから出てくるまでにどのくらい乾燥してくれるかに、その後の身の置き所がかかっている。

 

無茶を言ってくれるなと聞こえてきそうだが、そこをなんとか。

 

上はインナーも着ていたが、汗が搾れるくらいだ。まるでウエットスーツを脱ぐように、身に着けているものを脱いでいく。

 

パジャマとインナーを脱ぐとスーッと身体が外気を浴びて心地よかったが、少しずつ寒くなってくる。

 

下着も上下着けて寝るので、当然じっくりと汗を吸っている。もしかして、衣類にわたしの身体の水分をほとんど持って行かれたのでは。

 

数日ぶりにブラのホックを外そうとするが、後ろに手がなかなか回らない。身体が固くなっている。続けるとどちらか、下手をしたら両方の肩をやってしまいそうだったので、やむなくホックを前に回して外すことにした。

 

 

小さな頃から、あまりにも変な夢ばかり見る。

 

睡眠時間が他人よりも長い上に、一人暮らしが長くなるにつれ、寝ている間に二度と起きることが無くなったらどうしようと不安になってからは、恥ずかしくないように下着まできちんとして寝るようにしているのだ。

 

内容の真偽はともかく、大半の人が知らない、もしくは信じない世界が真の姿だとすれば、見えないあらゆるものの中で我々は生きていることになる。

ならばせめて、恥ずかしくないようにしたい。

 

洗濯乾燥機のスイッチを入れる。お気に入りの洗剤と柔軟剤を入れている。

 

さあ、数日ぶりのシャワーを浴びよう。

まだふらふらするが、なんだかベタベタする身体をまずなんとかしたい。

 

あの子はなぜ、ああまでしてお風呂に入らなかったのか。

 

母親もお風呂にどうして娘と一緒に入らなかったのか。

 

なぜ、あの親子はああまでに会話がなかったのか。

 

おばあちゃんは、なぜ最低限の関わり方しかしてくれなかったのか。

 

 

ひとつの命が目前で散ったという衝撃がどうしてもフラッシュバックして脳裏によぎる。なぜ、どうしてがとまらない。

 

わたしがこうして思いを巡らせたところでどうしようもないのに。

 

 

今のわたしが生きる現代では、学校というものはもはや存在していない。

国が直接管理下に置く教務センターで管理されている。

 

さらに、日本国籍を持っていれば大人であれ子供であれ、個人名義の口座に毎月決められた生活費を振り込んでくれる。

 

親子ひとつ屋根の下で時間を過ごすのがほぼ一般的だと思うが、不幸にしてそうならないケースだってないわけじゃ無い。

 

子供が一人暮らしをしたい、そう望めばできない事は無い社会になった。

後は各々、教務センターの学習室や学習棟へ、昔の学校のように通うもよし、家で黙々と勉強するもよしだ。

 

お隣のゆみさんのように、弓道を極める人だっている。

サークルに参加することもできるからだ。

 

もしかしたら、あの子のような数々の命の犠牲があって、今のような社会に改められたのかとはっと気づく。

 

あの子は最後に鳥のように羽ばたいたが、いじめの対象としてしつこく付きまとわれて、追い込まれて、冬の海や川で裸で泳がされて亡くなった子もいたらしい。

 

なぜ子供とは言え、そんな残酷になれるのだろうか。

 

なぜ、当時の社会は個人に対し集団に属することを強要したのだろうか。

 

 

強要は過ぎた誤解であったとしても、当たり前や常識を前提とした同調圧力の中では同じことだ。

 

そんな無言の圧力で、自分の人生をゆがめられたら、奪われたら、そりゃ呪いや祟りのたぐいの話も絶えないだろう。

 

一人娘を犯されたと思ったなら、怒り狂い我を忘れれば、火だってつける父親も万人に一人はいてもおかしくはない。

 

そうは言ってもというのであれば、これまで犠牲になった数々の御霊みたまの前でそれこそ、弱かったお前が悪いとそう言ってみればいい。

 

間違っていないならそうできるはずだろう。

 

シャワーを浴びながら、あのどうしても頭から離れない一連の光景が、目からあふれ出すものと共に流れていくのだった。

 

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この物語はフィクションであり、実際の人物や団体とは一切関係がありません。架空の創作物語です。

この作品は2024年2月15日にnote.comで掲載したものです。

 

 

いってきます。

 

 

ほんとうは学校になんか行きたくないけど、行かないといけない。

 

昨日も登校して、ようやく終わったと学校の敷地を出るときほど心が軽くなる瞬間を私は他に知らない。

 

中学生からは自転車で登校する事も可能だ。でも、うちは他の子のようには余裕が無いので、自転車が欲しいなんて言いにくい。

 

違う、言えない。

 

 

お母さんはほぼ毎日、夜中に帰ってくるので今は寝ている。

 

仕切りのようにあるふすまを開けるとほぼ一部屋のアパートの一室に母娘二人暮らしだ。

寝ているお母さんを起こさないように、毎朝家を出るのが私にできる数少ない事のひとつだ。

 

小学生の頃は制服が無くて、ほとんど毎日同じ服を着て学校に行くものだから、よくからかわれていた。

 

男子は子供だから、からかわれても仕方がないと思えても、女子からもからかわれるのは本当につらかった。

 

よく6年間も通えたなと自分でも思うほどだ。

 

食事も給食があるのが救い。

まともな食事と言えばお母さんの親、おばあちゃんがたまに様子を見に来てくれる時くらいだ。

 

洋服を買ってもらえるのも、部屋が片付くのも、おばあちゃんが来てくれないと大変だった。

 

 

たまに区役所の人がやってきて、様子を見にくる。

 

学校の事を相談しても良いかいつも悩むが、後の仕返しが恐しい。
逃げ場所なんてない。言えるわけがない。

 

最近は、特に学校がしんどくなってきたので、いよいよ相談しようかと毎回思うが手が震えて声も出ない。

 

どうしたらいいんだろうか。

 

 

おばあちゃんに言えたらいいのに。

 

先生に言えたらいいのに。

 

区役所のおばさんに言えたらいいのに。

 

 

中学校に入るときに、おばあちゃんがお世話してくれたおかげで制服を買う事ができた。

 

お金は区からもらえるらしく心配はいらないらしいが、お母さんが最近はほとんど構ってくれないので、おばあちゃんと制服屋さんに揃えに行ったのだ。

 

 

私はお母さんにとって要らない子なんだろう。

 

直接ぶたれたりとかしたことはないが、小学生の頃は何かを叫んでいるような記憶しかない。

 

違うかな、私がもう覚えていないだけかもしれない。

 

 

中学生になって、区からお金が入ってくるという銀行口座のキャッシュカードをおばあちゃんから預かった。

 

お母さんの名前がカタカナで書いてあるカードだ。

 

近くのコンビニで引き出すことができる。

 

ただ、絶対にこの金額を下回らないように下ろさないとだめだよと教わった。

そうしないと、水道やガス、電気も使えなくなって、最悪アパートに住めなくなるという。

 

私はそれを聞いた時、恐くてしかたがなかった。

 

 

出来るだけ使わなければ、そんなこともないんじゃないかと思うと、お風呂でさえ入るのもおっくうになる。

 

冬ならそんなに入らなくても、目立たないからいい。

 

困るのは暖かくなってからだ。

 

 

学校まで歩いて30分ちょっとくらいの距離を毎日。

 

夏だと最近は特に暑いから困る。

 

またからかわれるのかな。臭うって後ろの子から言われるのかな。

 

嫌だな。行きたくないな。

 

 

なんで、学校なんか行かなくちゃいけないの。

 

なんで、みんなと一緒に同じ部屋で勉強しなくちゃいけないの。

 

勉強ならまだいいかもしれない。
 

別にわからないわけじゃない。

 

でも、あの空間にいると、他の子の目が気になる。

またなんかコソコソ悪口言ってる。

 

スマホなんか持ったことが無いけど、タブレットが学校から貸し出される。いつだったか、私のタブレットがゴミ箱に入れられていたことがあった。

 

誰の仕業だろう。居すぎてわからないや。

 

私に味方なんていないから。

 

 

あと1年ちょっとも通わなきゃいけないのか。
 

考えただけで吐き気がする。

その先は?

 

高校?いけるの?

冗談じゃない。

 

おばあちゃんもひざを悪くしてからなかなか来られない。一緒に住むとそれはそれで苦しくなるという。

 

お父さんという人はどこで何をしているのか知らない。

顔なんて知らない。

 

おじいちゃんは、かつてお父さんという人の家でけんかをしたらしい。

私が産まれる前の話だ。

 

そして暴れた末、火をつけた。
よくなかった。

 

地域に噂なんてあっという間に広がる。
おじいちゃんは結局、ついに帰ってこなかったらしい。

 

おばあちゃんとお母さんは逃げるように住んでいた家を離れ、今のように別々に暮らすようになった。

 

私のためだと聞いたことがあるが、いったい今のすべての何が私のためなんだろうか。

 

誰か私のことを辛かったねと言ってくれないだろうか。
 

そんな人どこにいるかな。おばあちゃんだってきっと私の事を邪魔じゃまだと思っているんだろうな。

 

 

学校のみんななんか嫌いだ。
 

家に私の事をいじめたやつの名前とされたことを書いてきた。

 

先生だって知ってるくせに。

 

 

今日はいつも行く道を外れる。

学校に通うたびに高いところはないか探してきた。

 

警察に行けば、そんな怖い思いをしなくてもいいかもしれないとタブレットでニュースを見て知ったが、そもそも警察に行くこと自体がこわい。

 

 

古いマンションのビル。
エレベーターもあるが、そんなに早く上に行きたくない。

 

でも、学校に行くくらいなら早く楽になりたい。

 

足が震える8F。
遠くに山が見える。
へえ、この町ってこんなだったんだ。

 

高さゆえの西風が、前髪を吹きつける。

もういいや。
どうせ私の事なんか誰も見てやしない。

 

 

私が思い切り何かを叫んで、
鳥のように高く飛べたのは生まれてはじめてだった。

 

 

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この物語はフィクションであり、実在する人物や団体とは一切関係がありません。架空の創作物語です。

この作品は2024年2月14日にnote.comに掲載したものです。

 

正式名称

|日本放送協会《にっぽんほうそうきょうかい》
NIPPON HOSO KYOKAI

 

略称

NHK
エヌ・エイチ・ケイ

 

設立

昭和25年6月1日
放送法に基づく日本放送協会の設立日

 

放送局所在地

東京・渋谷と全国の道府県庁所在地などに計54局

 

業務内容

  • 国内放送(総合テレビ、Eテレ、BS、BSプレミアム4K、BS8K、ラジオ第1、第2、FM)

  • 放送と受信の進歩発達に必要な調査研究

  • 国際放送

  • その他、放送法に定められた業務

 

職員数(2022年度)

10,343名

 

根拠法

電波法 昭和二十五年法律第百三十一号
放送法 昭和二十五年法律第百三十二号

 

契約種別

地上契約

地上系によるテレビジョン放送のみの受信についての放送受信契約

衛星契約

衛星系及び地上系によるテレビジョン放送の受信についての放送受信契約

特別契約

地上系によるテレビジョン放送の自然の地形による難視聴地域又は列車、電車その他営業用の移動体において、衛星系によるテレビジョン放送のみの受信についての放送受信契約

 

受信料額

令和6年度収支予算、事業計画及び資金計画より主な月額を示す

沖縄県を除く地域

・地上契約 月額 1,100円
・衛星契約 月額 1,950円
・特別契約 月額 860円

沖縄県

・地上契約 月額 965円
・衛星契約 月額 1,815円

 

令和4年度決算

【図1】日本放送協会の令和4年度決算|会計検査院

 

日本放送協会(NHK)は以下、協会という。

 

協会の資産

図1によると協会の資産は、1兆2,973億19万1千円である。

 

協会の負債

図1によると協会の負債は、4,107億7,084万3千円である。

 

協会の純資産

図1によると協会の純資産は、8.865億2,934万8千円である。

 

協会の事業収支剰余金

一般企業で言う当期純利益に当たる事業収支剰余金は、図1によると285億8,478万6千円である。

 

事業収支剰余金の取り扱い

放送法第七十三条の二の定めにより、還元目的積立金として積み立てなければならない。

協会は、毎事業年度の損益計算において第二十条第一項及び第二項の業務(前条第二項第一号に掲げる業務を除く。)から生じた収支差額が零を上回るときは、当該上回る額のうち総務省令で定めるところにより計算した額を還元目的積立金として積み立てなければならない。

放送法 第七十三条の二

 

前条第二項第一号に掲げる業務を除く。とあるのは次の業務である。

第二十条第二項第二号及び第三号の業務(専ら受信料を財源とするものを除く。)

放送法 第七十三条

二 協会が放送した又は放送する放送番組及びその編集上必要な資料その他の協会が放送した又は放送する放送番組に対する理解の増進に資する情報(これらを編集したものを含む。次号において「放送番組等」という。)を電気通信回線を通じて一般の利用に供すること(放送に該当するものを除く。)。


三 放送番組等を、放送番組を電気通信回線を通じて一般の利用に供する事業を行う者(放送事業者及び外国放送事業者を除く。)に提供すること(協会のテレビジョン放送による国内基幹放送の全ての放送番組を当該国内基幹放送と同時に提供することを除く。)。

放送法 第二十条 第二項

 

生放送を除き、かつ受信料を財源としない放送番組や協会が放送する番組への理解を深めるものならば、電気通信回線(インターネットやケーブルテレビなど)の放送事業者を除く一般事業者に提供するような業務からなる収支は計算から外す、という理解で良いかと思われる。

 

この理解が正しければ、当該業務で出た損失は純粋な協会の損失となり、逆に利益となれば、積立金に含める必要のない利益だという理解になる。

 

還元目的積立金の取り扱い

還元目的積立金は、協会が次項の規定により収支予算を作成し国会の承認を受けた場合において当該収支予算に係る事業年度の損益計算において前項に規定する収支差額が零を下回るときに、当該下回る額を当該事業年度の予想収支差額(当該収支予算で定める当該収支差額が零を下回る場合における当該下回る額をいう。次項において同じ。)を限度として補う場合を除き、取り崩してはならない。ただし、総務大臣の認可を受けた場合は、この限りでない。

放送法 第七十三条の二 2

 

要は、事業年度の収支が赤字になる場合に取り崩せるお金、また総務大臣が認可した場合に取り崩せるお金という理解になる。

 

令和6年度収支予算書

協会がウェブサイトで公開している令和6年度収支予算、事業計画及び資金計画によると、令和6年度収支予算書は次のとおりである。

 

【図2】令和6年度収支予算、事業計画及び資金計画|日本放送協会
https://www.nhk.or.jp/info/pr/yosan/assets/pdf/2024/syushi.pdf
【図3】令和6年度収支予算、事業計画及び資金計画|日本放送協会
https://www.nhk.or.jp/info/pr/yosan/assets/pdf/2024/syushi.pdf

 

令和6年度収支予算では570億7,904万8千円が赤字となる見込みのため、還元目的積立金から補填できる。

 

渋谷放送センターの建替

現在、協会の渋谷放送センターの建て替えを行っている。

【図4】令和6年度収支予算、事業計画及び資金計画|日本放送協会
https://www.nhk.or.jp/info/pr/yosan/assets/pdf/2024/syushi.pdf

 

放送会館の整備には当然多額の資金を要するが、財務諸表上は東京渋谷の固定資産になるため、不動産価格の上昇が続けば資産として非常に心強い。

 

人件費

【図5】令和6年度収支予算、事業計画及び資金計画|日本放送協会
https://www.nhk.or.jp/info/pr/yosan/assets/pdf/2024/syushi.pdf

【図6】令和6年度収支予算、事業計画及び資金計画|日本放送協会
https://www.nhk.or.jp/info/pr/yosan/assets/pdf/2024/syushi.pdf

 

放送法

ここまでは協会に関して取り上げてきたが、ここで、そもそもの根拠となる放送法を知ることとする。

 

この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
一 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること
二 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること
三 放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。

放送法 第一章 総則

 

今回は協会について取り上げているため、放送法の中でも協会に関する部分に注目する。

 

協会は、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送(国内放送である基幹放送をいう。以下同じ。)を行うとともに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い、あわせて国際放送及び協会国際衛星放送を行うことを目的とする。

放送法 第三章 日本放送協会 第一節 通則

協会は、他人の営業に関する広告の放送をしてはならない。
2 前項の規定は、放送番組編集上必要であつて、かつ、他人の営業に関する広告のためにするものでないと認められる場合において、著作者又は営業者の氏名又は名称等を放送することを妨げるものではない。

放送法 第八十三条

 

協会は、公共の福祉のために放送を行う事を目的としている。また、広告放送を行ってはならないが、広告目的でないと認められるものについてはそれを妨げない。

 

定義と番組編集の自由

ここまでは主に協会に関する放送法の部分を見てきた。


放送法には協会に関する規定もあるが、例えば民間放送事業者もこの放送法の規定を遵守する必要がある。

 

この法律及びこの法律に基づく命令の規定の解釈に関しては、次の定義に従うものとする。
一 「放送」とは、公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。)の送信(他人の電気通信設備(同条第二号に規定する電気通信設備をいう。以下同じ。)を用いて行われるものを含む。)をいう。
二 「基幹放送」とは、電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)の規定により放送をする無線局に専ら又は優先的に割り当てられるものとされた周波数の電波を使用する放送をいう。
三 「一般放送」とは、基幹放送以外の放送をいう。
(以下、省略)

放送法 第一章 総則 定義 第二条抜粋

放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。

放送法 第一章 総則 第三条 (放送番組編集の自由)

 

電波法

電波法が出てきたので、電波法にも触れる。

 

この法律は、電波の公平且つ能率的な利用を確保することによつて、公共の福祉を増進することを目的とする。

電波法 第一章 総則

電波とは

一 「電波」とは、三百万メガヘルツ以下の周波数の電磁波をいう。

電波法 第一章 総則 第二条

 

無線局の免許等

無線局を開設しようとする者は、総務大臣の免許を受けなければならない。ただし、次に掲げる無線局については、この限りではない。
一 発射する電波が著しく微弱な無線局で総務省令で定めるもの
(以下、省略)

電波法 第二章 無線局の免許等 第一節 無線局の免許 第四条(無線局の開設)抜粋

 

おわりに

協会は公共の福祉のために放送を行うことを目的としている。

 

民間放送事業者は、広告を放送することで対価を得て、その資金で放送を行っているが、協会は受信者から受信料という形で放送を行う事により、広告主の影響が及ばない構造となる。

 

放送法によると、協会、民間、いずれにしても公平な放送をするよう定めているが(放送法第四条)、資本主義における公平な放送を期待するとなると協会の放送形態がより中立的と言えるだろう。

 

ただし、放送番組は適法である限り何人にも制限されるものではないが、電波法における免許制である限りは、放送とは関係のない、行政側の意図で実質的に放送ができなくなることも絶対に無いとは言えない。

 

例えば、無線局免許の停止、取り消し等によるものが想定できる。

 

ゆえに、真に公平な放送と言えるのは、電波も行政の免許によるものではなく、一つの外国資本の参入を制限した固定資産のように扱った前提でなければ、無線局免許の停止取り消しに配慮した放送にならざるを得ないだろう。

 

受信料という財源だけを根拠に公平性の実現を謳うのは、不十分であるという考えも絶対にないとは言えないことを念頭に置くべきである。

 


 

さて、災害や緊急事態などの放送においては、近年のインターネット環境と端末の普及を鑑みて、行政放送、あるいは民間放送、またはその両方を置き、行政放送は緊急時に税金で運用、すべての民間放送に優先同時配信することで役割を明確にし、無借金経営の輝かしい優良企業たる協会は民営化してよいのではと個人的には思うところである。

 


 

この作品または資料は、2024年2月23日にnote.comに掲載したものです。

参考および出典

 

年金制度の成立に関する背景

国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)が設定された昭和34年ごろは、日本の人口が著しい増加を始め、1980年代のバブル期に至るまで日本経済が著しく成長した時代の初期といえる。

 

なお以下、年金保険料は保険料という。

 

国のメリットは以下が考えられる。

  • 税金とは区別した保険料という形で徴収できる

  • 高齢を理由に離職した国民を保険料で扶助できる

  • 税収で直接高齢な国民を扶助しなくて済む

  • 高齢者よりも生産年齢人口が著しく多いと徴収した保険料が余る

国民のメリットは以下が考えられる。

  • 保険料を納めることで高齢期は年金給付で生活することを期待できる

  • 納めた保険料以上の月額給付を期待できる

根拠法

・日本国憲法第二十五条第二項
国は、すべての生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 

※なお同条第一項は有名で、すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。である。

 

・国民年金法 昭和三十四年法律第百四十一号

保険料額の推移

・昭和36年4月~昭和41年12月 100円(35歳未満)150円
・昭和45年7月~         450円
・昭和50年1月~       1,100円
・昭和60年4月~省略     6,740円
・平成5年4月~省略     11,100円
・令和5年4月~12か月   16,520円

年金給付額

令和5年4月分からの年金額については次のとおりである。

・国民年金 老齢基礎年金(満額月額)66,250円

・厚生年金            224,482円
(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な月額)

人口の推移

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【図1】我が国における総人口の長期的推移 - 総務省
https://www.soumu.go.jp/main_content/000273900.pdf

総人口は急激な減少トレンド

図1より日本の総人口は2004年12月、12,784万人をピークに急激な減少傾向であることが一目でわかる。

高齢人口の一方的な増加トレンド

図2より、高齢人口は2020年から比較的増加から維持傾向にあるが、生産年齢人口が急激な減少傾向にあるため、その比率は目下急激に上昇中である。

 

政府推計では、2030年の高齢化率は実に31.8%となっている。

高齢者単独世帯の増加

画像
【図2】世帯数の推移 - 総務省
https://www.soumu.go.jp/main_content/000273900.pdf

高齢者単独世帯、2030年には約4割へ

高齢者単独世帯の増加は、限界集落の増加や消滅集落の増加に伴う地方自治体単独でのインフラ維持が非常に困難になっているという問題も孕んでいる。

 

インフラは、電気、水道、ガスなどのほか、道路整備、民間輸送網、食糧や生活必需品を販売する店舗にまで及ぶ。

 

先祖代々受け継ぐ土地で数世帯が住んでいる集落の場合、例えば災害によって橋が崩落したなどした場合、言い方は悪いが、たった数世帯のために何億円もかけて橋を復旧するのかなどの問題もある。

 

また、近年の気候変動による影響は大きく、災害がより甚大化してきている傾向にある中、今後被災する可能性が高い場所に住み続ける世帯を、そのままにしておいていいのかなどの問題もある。

 

つまり、現状での高齢者の一方的な増加は、単に給付額の増加だけではなく、将来の都市計画に関わる費用の増加にまで及ぶ。

日本の財政状況

令和5年3月29日に公開された、令和3年度の国の財務書類は次の通りである。

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【図3】令和3年度連結財務書類の概要 - 財務省
https://www.mof.go.jp/policy/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2021/renketu.gaiyou20230329.html

資料を発表のまま考えると、国の負債は約1,541兆円にまでのぼり、資産との差額は約572兆円で債務超過状態となっている。

 

計算書を見ると、社会保障給付費が約54兆円におよび、地方の財源である地方交付税交付金等の約3倍にまで膨れ上がろうとしている。

 

前述した増加の一途をたどる給付金の給付総額と、短期中期的な都市計画に関する費用も考えると、現状のまま運営できるのか疑義が生じる。

消えた年金問題

平成19年に、持ち主不明の年金記録、約5,095万件の存在が明らかになり、大きな社会問題となった。

 

この問題により社会保険庁は2009年に廃止、現在の日本年金機構となり、現在もねんきん特別便やねんきん定期便などを郵送することにより、持ち主不明の年金記録との突合を行っている。

グリーンピア問題

公的年金流用問題として明らかになり、国民の厳しい批判にさらされた。

年金福祉還元事業の一環として進められ、グリーンピアという保養施設が全国各地に建設された。

数々のスキャンダル

他にも社会保険庁が廃止されるまで、汚職や、国民年金不正免除問題など数多くのスキャンダルが存在する。

 

また、事務費用の無駄遣いも様々、明らかになった。

  • 職員宿舎の整備費用

  • 社会保険庁長官の交際費

  • 社会保険庁の公用車購入費

  • 社会保険庁職員の福利厚生にかかる費用(社会保険大学校のゴルフ道具、社会保険事務所のマッサージ機器、職員のミュージカル鑑賞やプロ野球観戦の福利厚生経費など)

  • 社会保険事務局の家賃

  • 年金福祉施設等の運営費

日本年金機構の職員は公務員ではない

日本年金機構の職員は社会保険庁時代は公務員であったものの、現在は特殊法人という組織であるため、民間企業の会社員と同じである。

 

例えば、採用選考は公務員試験という形ではなく、民間企業と同様に書類審査および適性検査と面接で行われている。

日本年金機構の財務諸表

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【図4】日本年金機構 令和4年度財務諸表
https://www.nenkin.go.jp/info/johokokai/disclosure/zaimu/zaimu/index.html

これは令和4年度の機構運営に関する財務諸表である。
年間に約2,724億の運営交付金が主な収入源で、334億円程度の剰余金が出ている。

これは国庫納付金としてのちに処理され、結果として本機構の運営には約2,400億円程度が使われていることがわかる。

通常は千円などで単位が扱われるが、年金機構となった経緯が経緯なので、1円単位で資料を作成することでクリーンさをアピールしているのだろう。

ただ、交付金が主な収入源の運営費であることを考えると、保険料として納付されたものとは別と考えるのが通常なので、なにかズレている気がしなくもないが、主旨とズレるので今回は深くは触れない。

年金給付状況

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【図5】主要統計(160) - 日本年金機構

 

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【図6】主要統計(160) - 日本年金機構

図6によると、厚生年金および国民年金の給付は令和5年10月支払い合計額がほぼ8兆円ちょうどであることがわかる。

年金給付状況 (162) 2024/02/18追記

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【図7】主要統計(162) - 日本年金機構

前回値より若干給付が増えている。

保険料納付状況

国民年金

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【図8】主要統計(160) - 日本年金機構

各月納付率が図8からわかるが、納付月の翌月末を超えて納付されるものがそれぞれ2割は納付されていないことがわかる。

 

つまり、本来納められるはずの総額よりもざっと見て2割は少ない状態が続いていることにはなる。

 

見る限りは、おおむね2割の2割の2割が結果として未納状態として残るものと考えられる。

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【図9】保険料の納付状況 - 日本年金機構

厚生年金

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【図10】主要統計(160) - 日本年金機構

厚生年金は給料から天引きが行われ、勤務先が納付するものなので95%と比較的収納率が高い。

 

それでも5%が納付されていない。

課税対象になる年金

遺族年金や障害年金は課税対象にはならないが、そのほかの年金は雑所得として課税対象になる。

 

収入が年金だけであれば、年間給付額によって非課税となる。
・65歳未満 108万円以下
・65歳以上 158万円以下

 

課税対象になるのであれば、次年度に住民税が課税されることになるので、実際の手取りはもっと少なくなるだろう。

賦課方式

年金は自分の老後の積み立てで支払うものというイメージがあるが、実際はそうではなく、現役世代が納付した保険料から給付するという賦課方式を採用している。

 

これは、物価が上がると給付額も上げないとならなくなるという問題から、給付額も引き上げると同時に納付額も引き上げることで、積み立ての場合に生じる過去の貨幣価値からの差を他の手段で埋める事態になることを避ける必要があるという考え方からである。(マクロ経済スライド)

 

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【図11】マクロ経済スライド - 日本年金機構

現役世代が価値を納付し、その価値を直接給付するわけだから差が生じないという訳だ。

 

一見して一片の隙も無いように思えるが、表面だけ見ればそうである。

図10でもあったが、国の制度だから国が存続する限り破綻することはないというキメ台詞がすばらしい。

 

ならばそうかと多くの人はそこで思考停止せざるを得なくなるからだ。

年金保険料を納めたら必ずもらえるのか

いずれの年金も、長生きしない限りもらえるわけではない。

 

年金をもらえるようになるまでに、不幸にもこの世を去ることになってしまった場合、当然ながらもらうことはできないわけだ。

 

だからといって、現制度が続く限りは納付しない方がいいと言いたいわけではないので注意していただきたい。

GPIF

年金積立金管理運用独立行政法人という。

 

GPIFは、厚生労働大臣から寄託された年金積立金の管理・運用を行い、その収益を国庫に納付することにより、年金の財政安定に貢献する組織とある。

 

前身は、年金福祉事業団である。

その中でこんな記述がある。

基礎年金の半分は国庫負担

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【図12】年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)

実際の年金制度の運用は中身がどうなっているのかわかりにくいと感じる。しかし、GPIFに記載があった。

 

・保険料は上限が固定されていること(永遠ではない)
・基礎年金の半分は国庫負担
・年金積立金の活用(今後100年間と超長期的に)
・給付水準を自動的に調整

 

基礎年金とは、ざっくりと国民年金は基礎年金そのまま。厚生年金の場合は基礎年金に加算して厚生年金部分が給付される。

 

つまり、基礎年金は国民年金と厚生年金の基礎の部分にあたる。

その基礎年金は、すでに税金で基礎年金の半分が補填されている。

 

この事実は、GPIFの資産を取り崩すよりも税金で年金給付を補填することが優先されていることを意味する。

 

このことで、年金給付を含む社会保障費用負担の税負担を理由に増税が必要だといつでも政府が国民に訴えることが可能な状態にあるということだ。

 

以下、GPIFの財務諸表を引用しておく。

(参考)GPIFの貸借対照表

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【図13】GPIF財務諸表

(参考)GPIFのキャッシュフロー

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【図14】GPIF財務諸表

令和4年度においてGPIFの国庫納付

200兆円もの資産をもつGPIFは、株や債券などに投資を行っている。年金制度の維持に役立つように運用することが目的だ。

 

財務諸表を見る限り、令和4年度は国民年金の国庫納付金として、380億円が納付されているだけで、総資産の200分の1にも満たない。

 

税金で基礎年金給付額の半分が負担されている現状の割には、GPIFの年金給付に関する拠出額はずいぶんと控えめな額である。

年金制度は善意で作られたものなのか

さて、ここまで様々な資料を基に年金制度について述べてきたが、最大の疑問が残る。

 

昭和34年に国民年金法として設定された年金制度だが、これから現役世代の人口の増加が大いに期待できる状況下、果たしてこの年金制度は本当に善意で創設されたものだろうかという点である。

 

数々のスキャンダルも偶発的なものだったのか。

 

不正流用は長い歴史の中、証拠が残っていて隠せなかったものが出てきただけで、本当はもっとひどかったのではないかと誤解をされても仕方がない。

 

「知っておきたい年金のはなし」という日本年金機構が発行する冊子があるが、かつての年金問題を払拭すべく必死な気持ちが伝わってくる。

 

いかに自分たちが必要な存在か訴える必要があるからだ。

 

経団連も社会保険料負担が上がるくらいなら、消費税を上げてくれた方がまだマシだと動くくらいには、狂っている気がする。

 

ただでさえ、内需に頼るしかない日本経済の消費税を上げると、余計に不景気になることは目に見えている。

 

本当は誰のための制度なのか。

 

有権者が思考停止的に過去の選挙を消費してきたという責任があるだけに、政府だけの責任とは言わないが、年金制度設定当時とは全く環境が変わってしまった現代社会において、現年金制度は役目を終えたのかもしれない。

 

ただ、突然制度だけ終了しますでは反感を買うだろう。

せめて、各々が納付した保険料だけでも返してあげれば済む。

 

すでに年金生活をしていても、職人であれば、例えば宮崎駿氏のように何度も現役復帰することも絶対に不可能ではないはずだ。

 

定年だからと一斉に無職にする合理的な理由もわからない。

 

本当に持続的な社会を望むのであれば、一部の権力ある人間たちの利益のために制度を創設したり存続させることを直ちに辞め、ただでさえ現役世代の負担は増えることは確実視される中、将来を担う子供も育てなければならない。

 

政府はその現実から目をそらすべきではないだろう。

 

参考・出典

国民年金法 - e-Gov法令
国民年金保険料の変遷 - 日本年金機構
令和5年4月分からの年金額等について - 日本年金機構
国の財務書類 - 財務省
年金記録問題 - 日本年金機構
消えた年金に関する質問主意書 - 衆議院
「消された年金」に関する質問主意書 - 衆議院
令和4年度財務諸表 - 日本年金機構
主要統計 - 日本年金機構
主要統計(162) - 日本年金機構
知っておきたい年金のはなし - 日本年金機構
GPIF

 

この作品または資料は2024年2月18日にnote.comにて掲載したものです。

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