南西に500kmの道のりをひたすら歩く。

 

 

 気温はマイナス70度の雪景色だが、真っ白ではなくややグレー色に染まっていて、時折吹く風に簡単に舞い上がる。

 

 

 過去の記録によれば、氷点下ギリギリの気温の時代ではまだ舞い上がる塵はそう多くはなかったらしい。

 

 

 極端な気温の低下が空気中の湿度を雪に替えて、乾燥するばかり。

 

 

 すると待ってましたとばかりに、人類がこれまで自然に貯めこんできたプラスチックの塵が活発に空気中を漂うことになったという。

 

 

 まるでアニメや映画の世界のようだ。

 

 

 

 直接空気を吸うと肺に溜まってしまうから、鼻や口を布一枚はせめて覆って呼吸しなければ命に関わる。

 

 

 もう人間はおろか、生物という生物が外気中で自然な営みを続けることは叶わないだろう。

 

 

 いっそ、世界中の火山という火山が噴火して、地上全てを一旦焼き払ってくれれば、いつまでたっても晴れることのないどんよりした上空の雲もすべて蒸発してすっきりするかもしれない。

 

 

 ただ、そちらはそちらで火と熱さとの闘いになるだろう。

 

 

 

 なんでもいい。この終わることの無い寒さと太陽を遮る分厚い雲、そしていつまでも残り続ける厄介な物質さえ取り除いてくれたならば、皆の心の底にあるモヤモヤも晴れわたるはずだ。

 

 

 

 この距離と環境だから、凍傷のほか気が狂って脱落する人間も現れる。

 

 

 それをどうにか皆で互いに心を紛らわしながらひたすら進むのだ。

 

 

 

 子供たちは少ないこともあって、共に旅は出来ない。

 

 

 場合によってはやむなく親子離れ離れになって、いつかまた必ず会う機会を夢見ながら生活する者も少なくないという。

 

 

 きっとかつての西洋宗教が残っていれば、これは神が下した人間への罰だといつかその罪が赦されることをひたすら願い祈るのだろう。

 

 

 実際そうだとすれば、もったいぶらずにさっさと顕現していただいてこの状況をどうにかするか、せめて交渉させて欲しいものだ。

 

 歩き始めは会話もあったが、ここまでくると皆一様に疲れてきたようで、ただただ無言で目的地を目指すばかり。

 

 

 幸い、かつての文明が残した高速道路が落石や破断してはいるものの、一定の道筋を我々に示してくれているからまだなんとかいい。

 

 

 今日はこのくらいにしようと山肌の横穴に身を寄せつつ、限られた食料をつつきながら身体を休める。

 

 

 

「…社長?」

 

 

🔽続きはこちら

 

 

※この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在する人物や団体とは一切関係がありません。

 

※この作品は2026年6月1日にnote.comに掲載したものの一部です。

 

 

「さて今年はどこまで寒くなるかな。」

 

 

 今でも外気はマイナス70度くらいだというのに、これ以上寒くなるのかと話を聞いていて気が遠くなってくる。

 

 

「ひどいときは150くらいはあるぞ。」

 

 

 ひええ。

 

 

 そんなときはどうするのだろう。

 

 

「北から嵐が強まってくると、逃れてくる人間がなだれ込んでくる。南西に500キロほど下るとまた別の大きなシェルターがあるから、できるだけ早めに人を移すんだ。」

 

 

 なぜ?と尋ねる。

 

 

「ここだけじゃとても収容しきれないからだ。」

 

🔽続きはこちら

 

 

※この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在する人物や団体とは一切関係がありません。

 

※この作品は2026年5月25日にnote.comに掲載したものの一部です。

 

 

 

🔽ワンタップ占い|うらなえる

https://uranal.com?f=a1