長年詰め込まれていた施設の最上部、それはすぐにわかった。隔壁や天井の高さ、造りや電気設備まで同じだからだ。

 

 ただ一つ違うのは外部との出入りが自由で、寒さと山に備えた重装備をしている者、あるいは彼らが「我が家」と呼んだようにここに住んでいる者とが取引をしていたり情報交換をしている。

 

 

 もっとも、全員が住めるほど空間には空きがないため、技術を持った者が中心にシェルターの拡張や、各インフラの整備、食糧や水の生産設備の維持といった具合に役割をそれぞれ持っているという。


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※この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在する人物や団体とは一切関係がありません。

 

※この作品は2026年5月18日にnote.comに掲載したものの一部です。

 

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「一定間隔で小さな機械が入った箱があるんだがなんだろうな。」

 

 

 ただひたすら目的地へ歩いていくだけだから、雑談がはかどる。

 

 

 だが、”現代人”として記憶を持ち続ける僕には彼らが感じる疑問に対する答えをただ一人持ち合わせているようだ。

 

 

「…あれは非常電話ですね。」

 

 

「非常電話?」

 

 

 トンネルから抜けて確信したが、この元道路は大きな岩石が行く手に立ちはだかり、朽ち果ててはいるものの現役時代の名残を留めてはいる。

 

 

 そう、これはかつての高速道路だ。

 

 

 内陸に位置するこの山間を直線的に都市と都市を繋いでいる。

 

 

 北へ向かうことが出来れば、きっと向こう側の海へ抜けるはず。

 

 

「そんな役目を持ったかつての文明が造り上げた幹線道路ですね。」

 

 

 

「へえ。」

 

 

「記憶はないのにそんなことは詳しいんだな。」

 

 

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※この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在する人物や団体とは一切関係がありません。

 

※この作品は2026年5月11日にnote.comに掲載したものの一部です。

 

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「実は地下で目覚めて上がってきたばかりなんだ。」

 

 

 この主張が受け入れられるのか、そしてどういう反応が返ってくるかによって今後の僕の運命は決まるだろう。

 

 

 

 嘘はついていない。

 

 

 

 心臓の鼓動が早くなるのを隠すように何とか振る舞うが、集団は案の定少しざわつき始めた。

 

 

 やはり脱走者だとバレてしまったか。

 

 

「地下ってなんだい?このトンネルの地下ってことかい?」

 

 

 どうやら何も知らないといった反応で、であればどこから這い出てきたのか案内してくれないかと言われる。

 

 

 

 どこかに連れていかれる展開かと思いきや、意外な反応だ。

 

 

 僕はやってきた道を引き返して、トンネル横穴の機械室へと案内した。

 

 

 もちろんこの下へ長く通じるダクトから上がってきたのは本当だ。

 

 

 

「へぇ、こんなところがあるなんてね。」

 

 

「そろそろ日が傾いてきたから急がないと。」

 

 

「記憶喪失の兄ちゃんも一緒に来な。」

 

 

 

 来なってどこへ向かうのだろう。

 

 

 トンネルを抜けてそのまま一時間は歩くらしい。

 

 

 

 途中で行き倒れた人間の防寒着でよければ着ておけと受け取ると、僕はこの一団に加わりそのままついて行くことになった。

 

 

 

 記憶喪失、か。

 

 

 

 外は一面雪景色で、これは寒い。

 

 

「空気が乾燥しているから、マスクしとけ。」

 

 

 タートルネックのくたびれたセーターも受け取っていたから、その襟を目元まで伸ばしてフィルター代わりにする。

 

 

 山肌を風が駆け下りてくるが、周囲の木々に遮られて渦を巻いている。

 

 

 木の葉が渦に巻き込まれているように、雪ではない薄くてややくすんだ白い小さな物体が渦を巻いて舞っているのがわかる。

 

 

 これはと手を伸ばすと、塵のようだ。

 

 

 間近で見て見るとそれはビニールのようなもの、軽くてくすんだ白い粉のようなものだった。

 

 

「濡れてなきゃ燃やしてしまうんだがな。
マスクなしだとこいつらが肺に入るんだよ。」

 

 

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※この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在する人物や団体とは一切関係がありません。

 

※この作品は2026年5月5日にnote.comに掲載したものであり、その一部です。

 

 

 

 

 気候変動を人類が甘く見た結果でもあることが明らかになったのは、この通路を行き来する一団に保護されて知ることとなる。

 

 

 もちろん、大きな戦争を経てこんなことになったのは誰もが知っている話だと思っていたが、それだけではなかったらしい。

 

 

 外界から隔絶されたトンネルの中とは言え、あまりの軽装備でたった一人うろつく人間に彼らはたいそう驚いたようだ。

 

 

 こちらとしては、管理された日常から一人抜け出してきていて、まるで脱獄してきたかのような感覚で捕まったとばかり思っていた。

 

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※この物語はフィクションです。登場する人物や団体は実在する人物や団体とは一切関係がありません。

 

※この作品は2026年4月26日にnote.comに掲載したものです。

 

 

 

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