藝の圧〜林家染左の景清と露の眞の七段目 | この辺りの見所の者

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10月の仙台花座での東西交流会で観た林家染左師匠の景清と露の眞さんの七段目は、振り返ってみれば圧巻だった。稲葉千秋師匠の三味線もキレッキレ。

10月10日の11時の部はトリは露の眞さん。自分的に今まで露の眞さんの高座で素晴らしいと思ったのは去年の若手噺家グランプリでの蛸芝居。気合入れすぎて扇が高座の後ろに飛んでしまったりしましたが、それでも凄味を感じた高座でした。

10/10仙台花座トリは七段目。ハメモノ大活躍の噺ですが、眞さんの高座との呼吸が素晴らしいものであった。自分的に良い高座とは、情景が見えるかという事である。
落語家によって情景の描き方が同じ噺でも違っている。昔みた柳家小三治師匠の芝浜でも、人物像以外がシンプルな風景だったり、少し風景を足していったりと違ったりする。

眞さんの七段目は、歌舞伎仮名手本忠臣蔵七段目に出てくる茶屋の寸法くらいの空間に見える。二階での若旦那と定吉による七段目祇園一刀の場のやりとりでカメラワークがズームアップしていくように見えてくる。定吉が階段を転げ落ちる場面も、そんなに長くない階段が見えて来た。もちろん自分の脳内変換と言われればそれまでだけどね。階段を転げ落ちるとカメラワークはやや広がりを見せてくる。お軽と平右衛門も身体の線と密度の変化で演じ分けが出来ていた。

若旦那が芝居に夢中になり抜き身を振りかざしていく場面のハメモノの特に三味線の稲葉千秋師匠の速いパッセージのグルーヴが凄くて忘れられない。

自分も集中して観ていたのか、お見送りの時にリュックのジッパーを閉めてない事を眞さんに言われた。余韻で締めるのを忘れていたんだね。



そして、10月10日の2時の部。千秋楽だ。
トリは林家染左師匠。自分は10月9日のマルトク公演の阿弥陀池、10月10日11の部の植木屋娘と、ギヤが上がって来てるのを感じてはいたけど、2時の部トリでの染左師匠のあんなに力強い景清には驚愕した。
端正で飄々としている高座のイメージを持っていた染左師匠からは想像がつかない景清。定次郎の人物像は濃厚で清水寺の揚柳観世音が登場する時のハメモノと観世音が清水寺の奥の飛びから雲に乗って登場するさまの描写に鳥肌が立ってしまった。

今は無縁だけど神道をちょいかじった事ある身として、祭祀を観ていた時と精神がリンクしてしまったのだろう。本当に絵巻に描かれたいる神様が雲に乗って現れた錯覚に捉われてしまった。

景清の奥までというフルバージョンを知らなかったので、続きがあるのかと驚きながら観ていると定次郎は景清の眼を観世音から与えられると精神も景清が乗り移ったかのように大名行列に殴りこみをかける。その見得を切る場面も歌舞伎の見得そのもので染左師匠が力強く金剛力士像に見えた程の藝の圧の凄さ。

気力ギリギリで落語を観る事なんで暫し無かった。余裕が無かったよ。

仙台花座で観る上方落語は一味も二味も違うのかもしれないね。