まほろば唐松定期能〜何度目の観能復帰か? | この辺りの見所の者

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5月の七宝会以来の観能復帰。3か月ぶり。実家の湯沢市は雨降りだったんですが、まほろば唐松能楽殿は雨が上がっていた。観能復帰に唐松能楽殿近くにある唐松神社の神様が晴れにしてくれたのだろう。観能終了後に唐松神社に御礼の参拝。

心地よい風が吹いていた唐松能楽殿の見所。


▽能〈経政〉
シテ/粟谷明生
ワキ/森 常好
笛/一噌 隆之
小鼓/鵜澤洋太郎
大鼓/佃 良勝
地頭/金子敬一郎。地謡/内田成信、粟谷浩之、佐々木多門。
前列は社中。

ベテランが舞う経政は結構好きだったりする。今回の、まほろば唐松定期能公演に行くことにしたのは番組の魅力が大きいのは否定出来ない。
粟谷明生師の経政は丁寧に、かつ経政の若々しいふくよかさを感じる舞台。地頭の金子敬一郎師率いる地謡は厚みのあるもの。扇を青山の琵琶をに見立てる型も美しい。シテの周りは見所も含めて黒子になっていた。ワキは経政の姿を、ほぼ見ることは出来ないのだが、経政の個が舞台に映えわたり、経政からの視点が寄り浮き彫りに舞台空間として現れていた。粟谷明生師は型を丁寧に舞った経政かな。幽霊としてのふくらみも感じさせる。森 常好師が位をやや高めに設定し、粟谷明生師も平家の若き公達としての品を出していた舞台。

▽狂言〈舟ふな〉
シテ/石田幸雄
アド/中村修一

中村修一師が落ち着いていて安心して観れる。舟ふなという軽めの曲も石田幸雄師の矯めのある謡で緊張と緩和が見事に表現。

▽仕舞〈山姥キリ〉
シテ/友枝昭世
地頭/金子敬一郎、内田成信、佐々木多門。

友枝昭世師の山姥キリ。枯淡の境地、いやまだ枯れてはいない。以前感じた我の強さもない。型に忠実に舞っているだけだが、山廻りの四季の移り変わりは型の綺麗さではなく、型による舞台空間の質感の良さ。やはり当代の名人と言っても差し支えないだろう。水墨画の掛軸に、スッと入り込んだみたいな友枝昭世師の仕舞、山姥キリでした。




▽能〈巻絹〉
シテ/粟谷能夫
ツレ/佐藤 陽
ワキ/森 常好
アイ/中村修一
笛/一噌隆之
小鼓/鵜澤洋太郎
大鼓/佃 良勝
太鼓/小寺 真佐人
地頭/友枝昭世。地謡/金子敬一郎、内田成信、粟谷浩之。
前列は社中。

粟谷能夫師の巻絹は3月の粟谷能の会で観たばかり。年内に、再び巻絹を舞うということが気になった。3月の舞台に納得していなかったのだろうか?
自分的には、呼びかけから既に巫女というよりは既に憑依していたように見え、そのままの舞台だった様に感じた記憶がある。
今回の巻絹は、シテもツレもアイも笛も3月と同じ配役だ。
ツレの佐藤陽師は3月の舞台は強く大きく見せようとしていた様に感じたが、今回のツレは落ち着いていた。謡と立ち姿の締まったもの。地に足がついている。

シテの呼びかけは呂の効いた謡。粟谷能夫師は、立ち姿や謡は繊細なイメージを持っていたが、呼びかけから出てきたシテは、巫女の姿だ。ツレを助けようとする場面から少しずつ神が憑依しているように今回は感じた。3月と同じ能役者が舞っているようには見えない。個人的には、今回の巻絹の方がしっくり来た。地頭は友枝昭世師、前列が社中だが、地頭の骨組みに何とか肉付けしようとはしていた。粟谷能夫師の力強さのある巻絹。巫女姿はふくよかに見えた。面は増髪(十寸髪)かな?
舞台空間は濃厚で、強さを感じる巻絹。

附祝言は高砂キリ。

屋外の能舞台は良いねえ。天気も途中から日が射して来たし、たまには観能しないと感覚が錆びついてしまうので行って良かった。今回も観能感覚を変えてみたけど、まだまだ道は遠い。より脱力して観能出来るようになりたいね。

あっ、そういえば囃子方も気合い入っていたねえ。