最後に感情を爆発させた坂口貴信師の隅田川 | この辺りの見所の者

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黒門亭の終了時間を勘違いしてしまい、坂口貴信の會は、坂口貴信師の〈隅田川〉のみ観能。
▽能〈隅田川〉
シテ/坂口貴信
子方/谷本康介
ワキ/宝生欣哉、ワキツレ/御厨 誠吾
笛/松田弘之
小鼓/飯田 清一
大鼓/亀井 忠雄
地頭/観世清和

坂口貴信師の舞台は三人に会での〈野宮〉以来。
シテの狂女は錯乱するような狂女ではなく、魂が抜け落ちてしまい彷徨うような狂女。囃子も地謡も、それに沿っていたからのように内面に矯めがある空間と時間。狂女ノ越もそういう感じ。
船頭から亡くなった子どもが自分の子だと知っても、内面的な悲しみのまま。
南無阿弥陀仏と、そこでシテは感情を爆破させる。今までの抑えた空間は、このためだったのだろう。地謡も抑え気味でもアクセントの部分は強調していた。
子方の南無阿弥陀仏でのシテの歓びと悲しみの対比がしっかりしていた。
坂口貴信師の謡の感情的な部分も芯がある謡。濃厚な隅田川。
さすが、チカラのある能役者である。
2018年の観能納めに相応しい隅田川でした。