熱しやすく、すぐさめやすい私が、ガンとプロポリスの仕事にも完全に飽きてしまったとき、2つの論文に出会いました。
1つは心理テストによるものですが がんを患っている人は精神的ならびに性的な面で喜びといった感情が欠落している (*1),
もう1つは、パーキンソン病の治療薬であるアポモルフィン(アポモルヒネ)を1錠飲むと、健常人ならびに患者さんでは、血中に1過性の成長ホルモンとコルチゾールの上昇がみられるが、ガンを患っている人ではそれが見られない。スキゾフレニア(統合失調症)を患っている人ではコルチゾールだけが上昇しない、といったものでした。ちなみにアルコール中毒(アル中)では、成長ホルモンは上昇しますが、コルチゾールは上がりません(*2)。
私は、とっさにドーパミンがガンの治癒には必要なのだ! という確信をもち、お話し会でA10神経のことなどお話しするようになりました。
一方で、日本にいた頃、私は職場 国立予防衛生研究所 ( 現・国立感染症研究所 )(私がアメリカに行く時と同時に規模を縮小し名前を変えました )の同じ部署の人間から言いようのない嫌がらせを受け、アルコールと向精神薬中毒になっていました。
気晴らしに出向いた国際がん学会で知り合った疫学専門家に統合失調症をはじめとする精神疾患罹患とガン化との関連を聞いてみたこともありましたが、そのような例はまだ知られていないという返事でした。1995年のことです。
でも、中枢性ドーパミン神経系の低もしくは過剰活動を伴うパーキンソン病や統合失調症などの重要な精神系疾患が多くの場合, 免疫異常を伴うことから、ドーパミンという神経伝達物質の免疫系における機能的重要性は指摘されてきたのです。
ドーパミンD2受容体の過剰活動が大きな原因とされる統合失調症患者では、一般人口と比べてがんの発生率が低いことが大規模コホート研究により明らかとなっています(*3)。
前述したアポモルフィン投与についてまずは触れてみましょう。
黒質(正確には黒質緻密部): A9 神経核
(黒いのは L-ドーパからつくられるメラニンを含むため)。
線条体はA9神経の投射を受けます。
腹側被蓋野(VTA): A10 神経核
A10ならびにA9神経はチロシンというアミノ酸からL-DOPA
を経てドーパミンをつくります。
パーキンソン病は黒質(A9神経核)のドーパミン減少が起因
となります。
しかし、ドーパミンは脳血管関門(BBB)を通過できない
ので、治療のためには、L-DOPAやその類似化合物が投与
されます。
アポモルフィン ( アポモルヒネ皮下注射製剤(販売名:アポカイン皮下注30mg )) はドーパミンD1およびD2受容体サブファミリーに対して幅広く作動性を有しており、パーキンソン病(PD)患者の線条体においてドーパミン受容体を介して間接経路出力および直接経路出力の両方を調節することにより、抗PD作用を示すと考えられる。霊長類の疾患モデル動物および進行期のPD患者において、皮下投与したアポモルヒネはレポドパと遜色ない強い薬効を示す。またアポモルヒネ製剤は、顕著な薬効、即効性および作用時間が比較的短いこと等から、既存のPD治療薬によりコントロールできないオフ状態に対するレスキュー治療薬として、欧米各地で長い臨床使用の実績がある。
本剤は内服に反応しない重篤なオフ状態に対する暗メットニーズを充たす新しいタイプの
PD治療薬であり、本邦においては2012年3月に「パーキンソン病におけるオフ症状の改善」を効能・効果として承認された、海外と同様に本邦においても、本剤が患者とその家族および介護者のQOLに貢献することが期待される。(*4)
*1 Messina G., Lissoni P., Bartolacelli E., Tancini G., Villa S.,
Gardani GS., Brivio F.
J Biol Regul Homeost Agents, 2003; 17(4): 322-6
2 Lissoni P., Messina G., Bartolacelli E., Massarenti LL.,
Trabattoni P., Meregalli P., Mergalli M., Gavazzenni C.,
Rovelli F., Tancini G., Gardani GS.
In Vitro, 2003 Nov-Dec; 17(6): 647-50
3 Barak Y., Achiron A.m Manndel M., Mirecki I., and
Aizenberg D.
Reduced cancer incidence among patients with
schizophrenia
Cancer 104: 2817-21 (2005)
4 山田浩司、宮内紀明、神田知之 日薬雑誌 141, 44-51
(2013)