ニューヨーク近郊にあるブルックヘイヴン国立研究所での超相対論的重イオン加速器(RHIC)を使った実験で、真空の密度は非常に高いことが示されました。
2004年の秋に報告された一連の実験では、4キロメートルの軌道を周回させた金の原子核のビームを衝突させたところ、正面衝突によって太陽の表面温度の3億倍もの高温が生じたのです。これによって、他の手段では真空の拘束から解放することができない数千個ものクオークが解放されました。だが、こうして散乱されたクオークはバラバラには運動しませんでした。ばらばらにするのに必要であると予想されたエネルギー(1億7000万エレクトロン・ボルト)の2倍のエネルギーを与えても、クオークの集団は相関関係を保っていたのです。
2,000~3,000個の水の分子を解放してやると、水の分子は一体としては流れず、個々の粒子は勝手な運動をはじめます。しかし真空の中では、粒子どうしは超高密度な真空・プラズマによって結びつけられ、一貫性をもった運動をします。そして、気体というよりも液体に近い性質をもつ真空・プラズマの流動性は水よりも10から20倍も高いのです(常温では気体のヘリウムは絶対温度4.2 K(ケルビン)にまで冷却されると800倍に増加した密度をもつ液体となり、2.17 Kで摩擦のない媒体である超流動体になります)。それは抵抗がないので、私たちはその存在に気づきません。
ブルックヘイブン研究所の実験から、超高密度であると同時に超流動性をもつ真空が宇宙の基礎をなす粒子を結びつけていることが明らかとなりました。
同研究所の副実験監督であるトーマス・カークは、「物理的な真空は、決して空虚ではない。それは複雑な構造をもっており、理論家も実験家も、それがどのようなものであるかを理解できるだけ十分に進歩しているのかどうか、私にはわからない」と語っています。
真空の構造に関しては、さらに解明しなければならないことが山のようにありますが、真空の中に含まれる粒子どうしのあいだにコヒーレンス(一貫性)を生み出しているのが真空そのものであることはすでに明らかであるように思われます。超高密度であると共に超流動体でもある量子真空は、「エネルギー」の海であるだけではなく、「情報」の海でもあると仮定することは、今や完全に理にかなったことなのです。
ごく少数の科学者たちは、自然界における情報の役割を再発見し、自然界のインフォーメーション・フィールド(情報場)は、量子真空ではないかと考えました。
その中のひとり、アーヴィン・ラズロ(ハンガリー出身のシステム工学者。元ニューヨーク州立大学教授)はそれをアカシック・フィールド(アカシックは前項のアーカーシャの形容詞形)と呼ぶことにしたのです。
量子真空は、まだ完全に解明されるには程遠いものの、現在盛んに論議されるようになった、宇宙空間を満たしている「エネルギーの海」なのです。