ものごとをありのままに見れないー3 | 松野哲也の「がんは誰が治すのか」

松野哲也の「がんは誰が治すのか」

治癒のしくみと 脳の働き

 

 

 

 

 動物の網膜には、光受容に特化した細胞である視細胞が存在し、光情報を神経シグナルに変換します。

 

 

 上図の下端をご覧ください。

 

 脊椎動物の視細胞は桿体(R:rod cell )と錐体 (C: cone cell) がある。桿体は円柱状(桿菌がそうであるように)の外節をもち、暗いところで薄明視を担っている。一方、錐体は円錐形(アイスクリームのコーン)の外節をもち、明るいところで明所視を司っています。

 

 網膜に入射した光は、神経細胞層を透過して視細胞にに到達し、外節にある光受容タンパク質(視物質)に吸収されます。

 桿体の視物質はロドプシンと呼ばれる赤いタンパク質(「rhodopsin] はギリシャ語の「バラ」(ロド)」を語源とする)です。ロドプシン分子はC末端部(ペプチド結合しているアミノ酸のCOOH部分)を細胞質側に向けて埋め込まれ、多数の円盤膜が光の入射方向に垂直に積み重なることによって、桿体に入射した光を効率よく吸収できるようになっている。

 錐体の外節も膜が積み重なった構造をもっているが、これは形質膜からひだ状に伸びたものです。錐体視物質は波長感受性の異なるいくつかのグループがあり、複数の種類の錐体をもっていれば、色覚が可能になります。

 

 

 脊椎動物の視物質は、分子系統的に5つのサブグループに分けることができ、そのうちの4つが錐体視物質、1つが桿体視物質(ロドプシン)である。

 ロドプシングループは、錐体視物質が4つのグループに分化した後、緑グループから分化しており、色覚の獲得よりも薄明視の獲得の方が後であったことを示唆している。ロドプシンの吸収極大波長は500nm付近にあり、地表での太陽光の極大とほぼ一致している。

 

 

 

  地表での太陽光の強度分布とヒト、マウス、ニワトリがもっている視物質の吸収スペクトル

  (それぞれのグループを便宜上、色分けしました)

  Lグループ:赤、M1グループ:緑、M2グループ:青、Sグループ:紫、ロドプシン:灰

  (L:波長がlong; M: medium; S: short )

 

 

 ヒトの色覚は、赤、緑、青の3色性色覚であり(4色性もまれにある)、デジタルカメラやパソコンのディスプレイで使われるRGBもこれに基づいている。しかし分子系統的にみると、ヒトの3つの錐体視物質のうち1つは紫グループ、2つは赤グループである。ヒトの青視物質を「紫」ではなく「青」と呼ぶのは単に習慣によるが、ヒトの緑視物質は赤グループの視物質である。これは、誕生したころの哺乳類は夜行性であったために緑グループと青グループの遺伝子を失ったが(図のマウス)、その後、昼行性に進化したときに、色弁別の必要性から赤視物質の変異で緑視物質を獲得したためであると考えられている。一方、ニワトリなどは全てのグループの錐体視物質をもっています。

 視物質の他にもロドプシンに類似した光受容タンパク質の遺伝子が多数同定されており、オプシン類と呼ばれる大きなタンパク質ファミリーを形成している。

 岩波生物学辞典によれば、ロドプシンは2つに大別されて、桿体に存在するのがスコトプシン(scotopsin), 錐体に存在するのがフォトプシン(photopsin) で、Wikipedia に従えば、前者はロドプシン、後者はフォトプシンとなります。

いずれにしても ロドプシン、フォトプシン=レチナール(ビタミンAアルデヒドの11シス型異性体)が オプシン(アミノ酸残基が異なる)に結合したものです。