ホテルマンは3年で辞めました【49.元銀行員】 | SHOW-ROOM(やなだ しょういちの部屋)

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 ホテルには、絶対に満室にしなければならない日がある。


それはバレンタインデー、クリスマスなどのイベントだけでなく、毎週末などの休日前だ。


そういう日はフロントマンとしての手腕が問われるもの。


普段からありがちなNO SHOW(予約にある客の連絡なしのキャンセル)の数を見込んで、何部屋がをオーバーブッキングさせておくのだが、23時前後とかに予想が狂って客が溢れてしまうと予想出来てしまった場合、早めに近隣のホテルに連絡して部屋をおさえていたりするし、それはお互いに普段から協力体制が整っている。


ホテルが開業してすぐバレンタインデーがやって来たのだが、その日は佐竹マネージャーもナイト勤務に入って川村さんとウナちゃんに満室にするテクニックを指導したという。


 そんなこんなでバタバタと2月が終わったある日、俺は瀬戸と2人で銀座のBARにいた。


驚いた事に彼女は元々銀行員だった。 


だが、連日の残業で帰りが遅くなったり手首にデカいシコリが出来て腱鞘炎にもなったとかで、3年で退職したという。


それでとりあえずホテルにバイトに来たと。


家族は冷設業を営む父親に専業主婦の母、そして7つ上の姉と13も年下の弟がいるのには驚いたが、初めて個人的な話をいろいろ聞いていたらすっかり遅くなってしまった。


瀬戸は埼玉で池袋まで行けたとしても、時間的にそこから先の終電に間に合うか微妙だった為、意外とスムーズに俺のアパートに来ることになる。


いや、スムーズなのはその前に「俺と付き合ってくれないか?」と、交際を申し込み、「私でいいんですか?」というような流れで2人は付き合うことになったからだろう。


今思えば時代だろうか、当時の俺はまだ学生時代から住んでいた風呂無しアパートに、よく瀬戸を連れて帰ったなあと思うのだった。


翌日の仕事は瀬戸が休みで俺がナイトだった為、気持ちも時間にも余裕があった。


部屋に着くと、彼女がかなり酔っている事に気づいたのでそのまますぐに寝かせると、翌朝は俺と付き合う事になった話を覚えているのか少し不安だったが、それは無駄な心配だったようでその日はもう互いに打ち解けていた。


 1週間後、俺は前から行ってみたかった浅草ビューホテルに彼女を誘った。


そして、2人は浅草の夜景を一緒に見る事となるのだが・・・。


〜つづく〜