UG情報に載っていた女性客が1週間滞在してチェックアウトした。
清掃業者の話によれば、部屋中が尋常じゃないくらいトイレットペーパーが散乱していたという。
それでも事件性は無いという事で特に警察に通報する事もなく、結果だけ新たなUG情報に載せ各ホテルに流し終了した。
フロントカウンターで藤田さんの顔をジッと見ていた。
「ん?な〜に?」
藤田さんが苦笑いしながら聞いてくる。
「藤田さんさあ、うなぎ犬に似てますね(笑)」
それを聞いていたあがる直前の田宮さんら日勤の女性陣が一斉に肩を震わせた。
「えー?うなぎ犬って、バカボンのだっけ?」
藤田さんがまんざらでもなさそうに聞いてきた。
「そう!ね、似てるよね(笑)」
俺が女性陣に同意を求めるも「知らな〜い笑)」と、みんなクスクス笑いながらあがって行った。
その日から、俺は藤田さんのことを「ウナちゃん!」と呼ぶようになり、それはすぐみんなにウケまくると、2日後にはマネージャーまでもがそう呼ぶようになっていて、ある日マネージャーがウナちゃんに怒っている時、「このーウナッ!」と怒鳴っていた時には笑ってしまった。
「瀬戸の奴すごい酔っ払ってたな。」
Hホテルに行ってから数日後、松田さんとナイト勤務。
「ああ、あの日は松田さんがナイトでしたっけ?」
「うん、俺とウナだったよ。」
「橋本さんと瀬戸が泊まった時に見ました?」
「ああ、ルームキー渡す時、橋本は普通だったけど瀬戸はもうベロベロだったよ(笑)」
「結構荒れてましたからね。」
「えっ?荒れた?何で?」
「彼氏と別れた事がショックだったみたいで。」
「そうなんだ。彼氏が浮気して別れたらしいな。」
「へえ。松田さんは奥さんにバレないんですか?」
「さあ、別にバレてもいいと思ってるよ(笑)」
翌朝、日勤が出勤して来ると、カウンター奥に立っていた俺のところに瀬戸が歩み寄って来た。
「この間はごちそうさまでした。」
「あ、いいよいいよ別に(笑)翌日休みの日で良かったな(笑)」
「はい(笑)なんかここに帰って来たのも覚えてないんですけど、すみませんでした。」
「来週、俺が日勤の時に良かったら2人で飲みに行かない?」
あの日、あの瞬間の、橋本さんと目が合った一瞬の事が気になっていたが、やはり元彼の子供を堕したという事実がその時の俺にはまだ重く、そんな思いを振り払うように瀬戸を誘ってしまったのだった。
〜つづく〜
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