ホテルマンは3年で辞めました【36.衝撃を受けた事実】 | SHOW-ROOM(やなだ しょういちの部屋)

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 研修も半ば過ぎになった頃、歯ブラシやソープなどアメニティーのパッケージデザインを我々スタッフがデザインしたり、冷蔵庫に入れる缶コーヒーを3種類決めるのに幾つものそれをみんなで飲み比べて決めるという、1期生ならではの仕事は中々面白いものだった。


ホテルのオープンが近づき、実際にまだ工事が残っている建物に入って館内の設備や各フロアーの客室なども確認すると、これからこのホテルのフロントに立つのかと気持ちが高鳴るのを感じる。


そしてオープン1週間前からは、秋葉原の開業準備室ではなく完成されたホテルに毎朝出勤することになり、フロントカウンター内の備品の確認やエレベーター、有料チャンネル、電話機などの機械関係の操作確認も各担当者によって説明を受ける。


一方フロントマネージャーの佐竹さんは、系列会社から来てるコンピューターの担当者3名と共に、連日フロント業務のプログラミングを作成していた。


 オープン3日前、フロントスタッフ全員で試泊を行う事となり、研修を終えた夕方から佐竹マネージャーが知っているという居酒屋に連れて行ってもらい、一期生の記念すべき初の親睦会が行われたのだが、数分後に早くも酒に酔ったのか俺がマネージャーを泣かせてしまう事となる。


実はHホテルを辞めてからの1ヶ月余りの間、俺のヘアースタイルが徐々にデカくなり、学生時代を思わせるようなリーゼントに近い状態になってきた為、研修の半ば過ぎからマネージャーに髪型をちゃんと直すように度々言われていたのだった。


それでこの日の前日、仕事終わりに床屋に行きバッサリ散髪しての親睦会で、マネージャーが涙を流す事になるのだが、その訳を聞いた俺は衝撃を受けてしまう。


それはまず、俺が受けた採用試験は時期的にあと1人を決める為のもので、代表も支配人も他の人を採用しようとしていたのを、佐竹マネージャー1人が俺のことを熱心に推してくれたのだという。


代表も支配人も、俺の目つきが悪いという印象があり、サービス業ではどうだろうという意見だったらしい。


それをマネージャーが強く俺のことを推して採用に至っただけにこの日、俺がサッパリと散髪していた事に感動と安堵感で胸がいっぱいになったらしい。


俺としては当たり前のように普通に散髪して来ただけだったが、Hホテルから来たのに代表も支配人も俺の採用には反対していたという事実を知り、マネージャーの涙よりもそっちの方が衝撃を受けたのだった。


 試泊とはいえ、翌日も朝から研修がある為9時前には皆ホテルに戻り、女子3人は7Fのレディスフロアー、我々5人は10Fの和室に試泊する事となったが流石にすぐは寝る気にならず、日付けが変わっても修学旅行のようにはしゃいでいたのだが、数分後には別な意味で眠れなくなる事が起きたのだ。


〜つづく〜



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