ホテルマンは3年で辞めました【9.将来は真っ暗】 | SHOW-ROOM(やなだ しょういちの部屋)

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 マネージャーはいつの間にか帰っていて、最後まで残っているのは、マネージャーのすぐ下にあたるアシスタントマネージャーの坂田さん、ヘッドウエイターの宇多川さん、キャプテンウエイター武田さん、ウエイターの稲垣さんと大野さん、そして俺の5人。


それにバーテンダー2人にその下のアシスタントバーテンダーと、新入社員で俺と同じ専門学校だという岸田の4人、計9人が今夜の面子だった。


他のホテルであれば、バーテンダー志望もウエイターをやるそうだが、Hホテルではホール側とバーテンダー側が完全に別れたビバレッジというセクションとなっていて、バーテンダー志望の者は数年アシスタントとしてそれの下積み業務をする。


それは朝から夕方までひたすらグレープフルーツやオレンジを手絞りして、ホテル内のレストランバー全てのフレッシュジュースを毎日1人で準備する。


あとは夜の勤務でバーに入り、先輩バーテンダーのアシスト業務にあたっている。


同期のバーテンダー志望は3人で、いずれも志望通りビバレッジ所属となっていた。


 深夜に仕事が終わると、奥の大きく広いソファー席に全員集まりお疲れの乾杯が始まった。


営業中は各テーブルにキャンドルが置かれているのだが、閉店後その2つを残し店内の照明を消して暗い店内での飲み会が毎晩あるのだ。


それを知った俺の心境は店内よりも暗くなった。


始発が出るまでまだ時間がある為に毎晩このような習慣が根付いたらしい。


「ヤナダは何志望なんだ?」


アシスタントマネージャーの坂田さんに聞かれる。


「フロント志望です!」


「えー?フロント?フロントなんて面白くないぞ。あんなの下足番と一緒だぞ。」


うっ、何てことを。


「でもバーに来たんなら、そっちに行くのは難しいぞ。」


「えっ?そうなんですか?」


「うん・・・今までFB(フード&ビバレッジ部門)からフロントサイドにトランスファーした奴は見たことないからな。」


またまた何ということを。


俺の将来は真っ暗になった。


そして翌日、早めに出勤すると職場入りする前に従業員食堂で思わぬ事件が起きたのだった。


〜つづく〜