ホテルマンは3年で辞めました【8.憂鬱の始まり】 | SHOW-ROOM(やなだ しょういちの部屋)

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(配属先 セントジョージバー)


ば、バー?


えっ?


BAR?


この辞令によって、入社日にいちばん不幸な新入社員となった。


新入社員がフィットネスはやはり無理だったとしても、フロント志望の俺がハウスキーピングでもなく、バーとは。


Hホテル内には3つのバーがあり、セントジョージバーはメインバーとなりロビーにあるのだが・・・。


フィットネスの社員達から、そこは最悪のセクションだと聞いたことがあった。


その時は興味無かったし、フロント志望の俺には関係ないと思って適当に聞いていたのだが、人間関係が最悪という言葉だけ頭に残っていた。


あまりのショックで、いつどうやって制服をもらってそこに行ったのかさえ覚えていない。


覚えているのは、制服のズボンが少し長かったので、それを見た丸山というマネージャーが「足を伸ばせ!」と、マジなのか冗談なのか分からない事を言ってきたのだけ記憶にあった。


そこのBARは18時Openの2時closeだが、昼はランチビュッフェもやっていて、女子社員3人に男子社員が1人、あとは配膳会というウエイター専門の派遣社員が数人で昼間の営業をしている。


このバーに配属された新入社員は3人で、1人は女子で専門学校でクラスメイトだった高橋美紀だった。


初日は俺1人だけが夜の勤務となり、丸山マネージャーから「今夜は何もしなくていいから、とにかく全体の動きを見てろ」と。


 オープンすると俺はホール中央に立ち、マネージャーの言う通りに全体を見ていた。


するとすぐに先輩の1人が近づいて来るなり、「おい、トレイ持て!トレイ!」と、いきなりイカつい顔つきで怒鳴ってきた。


「はい!あ、はじめまして!ヤナダと申します」と、挨拶をするもガンをとばして行ってしまった。   

 

次々と先輩ウエイターが入って来ると、その都度挨拶をしていった。


しばらくすると、白いスーツ姿の女性達がぞろぞろと入って来る。


この人達は何だ?と、不思議に思っていると、さっき挨拶を交わした3年先輩の大野さんが「ヤナダだっけ?あそこ帰ったからテーブルかたしてくれる?」


「あ、はい!」


何だよ、マネージャーから何もしなくていいって言われたのに伝わってないのかよ!


そう思いながら、全く興味の持てないウエイターの仕事をただ操り人形のようにこなしていった。


 憂鬱な初日が2時のcloseと共に終わった。


だが、翌日のランチビュッフェに備えてナイフフォークなどのテーブルセットもするのだった。


全ての業務が終わったのが3時過ぎ。

 

それでやっと憂鬱な時間から解放されると思ったのだが、そこからまだ更なる地獄のような時間が始まるとは思いもしていなかった。




〜つづく〜