「坪倉さん!今日は劉(リュウ)さんと一緒にお願いします。」
夜のサヤマ運輸倉庫。
復帰していた原田さんが坪倉の所に派遣社員を連れて来た。
「はい、分かりました。」
「ヨロシクオネガイシマス。」
それは片言の日本語で挨拶をする女の子だった。
「留学生ですか?」
「ハイ。」
「すみません、名前何でしたっけ?」
「劉(リュウ)デス。」
「あ、坪倉といいます。劉さんは中国?」
「ハイ、中国デス。」
「日本語上手いですね。」
「イイエ、スコシダケ・・・。」
「大学生?」
「ハイ。」
サヤマ運輸の他の倉庫で何回かやった事があるらしく、仕事覚えが良くテキパキと動いている劉さんだった。
そこに原田さんが通ると、坪倉が話しかけた。
「あ、原田さん!いつ復帰したんですか?」
「一昨日からです。」
「今度は派遣じゃないんですか?」
「はい、坪倉さんと同じ直バイトで、社員の山本さんの代わりに夜勤の責任者にさせられちゃいました。」
「やはり何処かに就職して正社員にはならなかったんですね。」
「ええ、今更他に行ったり就職するのも面倒で・・・。」
まだ若いし人柄もいいのに、何とも言えない勿体ない気がする坪倉だった。
やはり正社員の価値に魅力を感じなくなっているのか、働き盛りな年代の多くがこんな状態では益々少子化に拍車がかかってしまうと、坪倉は目の前の現実を改めて痛切に受け止めるのだった。
休憩時間。
「劉さんは何年生ですか?」
坪倉が劉さんに話しかけた。
「3ネンセイデス。」
「卒業したらどんな仕事をしたいですか?」
「ワタシ、セイユウにナリタイ。」
「え?声優?アニメとかの?」
「ハイ!ニホンのアニメガダイスキデス!」
「そうなの?じゃあ卒業しても中国に帰らないんですか?」
「ハイ、ニホンにイタイデス。」
北朝鮮、韓国に次いで中国も反日国なのに、それに矛盾した行動が現実にある。
観光客や劉さんのように留学生として来日する者は後を絶たない。
コンビニに行けば、劉さんのような留学生も多く見かけるし、在日韓国人も学校では反日教育だが社会に出ればそんな事を感じない程いい人が多い。
政治の世界だけが対立していて、国民同士は全くと言っていいほど互いに友好的なのが現実だ。
劉さんのように日本を好きになってくれている留学生も多いし、卒業後は日本の企業に就職して正社員を希望する者も少なくない。
コロナが落ち着きインバンドも戻りつつある今、日本の新たな未来を模索している坪倉義郎だった。
〜つづく〜
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