新型コロナウイルスの流行によりあらゆる業種が危機に直面し、それが落ち着きつつある現在でもホテル業界ではある問題を抱えていた。
それは客質の低下だ。
ホテルはサービス業の最たるもの。
それが、宿泊業を支援するというGOTOキャンペーンや全国旅行支援割引などのせいで、それまでホテルをあまり使ったことがない人達やマナーの悪い客が増え、それらのキャンペーンのおかげでチェックイン業務が増えた事により1人あたりの対応時間が2倍以上かかっている。
その上、自分がワクチン接種証明書を忘れて来た為に割引が適用されないことを告げられるとキレる客をはじめ、訳のわからぬワガママを言ってはホテル従業員の手間と時間を取らせ業務妨害となっている客が増大した。
コロナが流行りはじめた頃、各ホテルは経営危機に直面して人員削減をしたところに、GOTOキャンペーンやら全国旅行支援割引が始まったのだから、ただでさえ人手が足りないのに、そのような悪質な招かれざる客が増えたことでホテルが急遽スタッフを募集しても、新人に仕事をしっかり教える暇が無いほどモンスター級のワガママな客の対応に追われてしまっていた。
そんな状況に陥った為、ベテランのホテルマン達は体力と精神力はボロボロになり、結果的にはホテル業界には見切りをつけて転職して行くスタッフも増加している。
野口前総理が残した宿泊業界を支援するはずの対策は、実は現場のホテルマン達を苦しめているだけのものに過ぎなかったのだ。
安く提供する事によって客足は戻っていたが、それまで築き上げて来たホテルのステータスは客質の低下により危うい状況に陥っている。
割引キャンペーンが終わり、宿泊料金を元に戻した後に果たして客足は戻るのか。
これからのホテル業界にはそういう不安が残っただけに、それは単なる政府の自己満足的なキャンペーンだったのではという声がホテルの現場からは聞こえてくる。
低料金で稼働率を満たしても、長年勤務していたベテランスタッフを失ってしまうのは本末転倒である。
もっと事前に現場の声も参考にして、綿密に準備をする期間を設けてから実施していれば、今回のように現場に余計な負担をかけることなく支援できたのでは・・・と、野口前総理が行った事だったが坪倉総理は深く反省すると共にホテル業界の将来にも目を向けているのだった。
ホテルで会食を終えた坪倉総理がロビーを歩いている時、フロントカウンターの前にはこれまで見たことのない程の長い行列が出来ていた。
〜つづく〜
📕俺の小説📕