総理大臣・坪倉義郎【11.気薄な人間関係】 | SHOW-ROOM(やなだ しょういちの部屋)

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「最後のクール便を仕分けしてる時に監査の人間が数名来たんだが、彼らは現場の経験は無いのか?ドライバーの経験とか・・・。」


「ああ、新卒で入って内勤しか経験してない者が多いかな。それがどうかしたのか?」


「いや、理不尽な事を言うなって思ってね。」


「理不尽?」


「ああ・・・。」


「何がだ?!」


「うん、いや、俺は芝浦を担当させてもらってるんだが、芝浦は1丁目から4丁目まであるから、冷凍の荷物と冷蔵の荷物を仕分けるのに、最低でも冷凍庫4台に冷蔵庫4台の計8台は必要だよな。」


「ああ、それで?」


「それなのにほぼ毎日8台揃っていないから、1台の冷凍庫か冷蔵庫の中で冷蔵と冷凍の荷物を左右に分けて入れてるんだ。ドライバーがトラックに積むまでの僅かな時間だけだしな。」


「まあ、それは仕方ないな。」


「で、この前もそうして1丁目の冷蔵庫に冷凍の荷物も入れて仕分けしていたら監査の人間がそれを見て、溶けちゃうだろうって言ったんだ。」


「まあ言うだろうな。」


「おかしいだろ!冷凍庫の数が足りないのは会社の段取りが悪いからで、俺達バイトにはどうにも出来ない事だろ?冷凍庫が足りないから工夫してやってるのに、文句言ってくるなんて。」


「ま、まあ・・・そうだな。」


「冷蔵庫には入れてる訳だから、ドライバーが来てトラックに積み込むまでの僅かな時間に溶けるわけないだろ!監査って無理難題をバイトに与えに来るのか?」


「あぁ、お前の言う事は分かるよ。奴らマニュアル通りにしか出来ない頭でっかちだからな。まだドライバー経験者でもいれば、そんな理不尽な事は言わないと思うんだけど・・・悪かったな、余計な事を考えさせちゃって。」


「いや、お前だけでも分かってくれればいいさ。」


「その件についても早急に監査指導はするよ。そんな事、こっちにまで報告してくれる社員は今までいなかったからな。貴重な報告だ。」


「なんだ、みんなただ与えられた仕事を文句も言わずにこなしてるだけか。」


「ああ、本当はお前みたいな社員がいてくれたら会社としても伸びるんだろうけどな。」


「いやあ、そんな事ないさ。でも、サラリーマンって、やっぱり上には意見しづらいんだろうな。我々の政界も同じかもな。」


「上に意見言えるような奴はとっくに自分で何かやってるだろうし、政界なら総理大臣になってるよな。お前みたいに。」  


人には一生使われるタイプと、人を使うタイプがいる。


それは圧倒的に前者の方が多いのだが、その人達にもヤル気と情熱を注げられるような環境を与えてあげることが、実は最も大切なことであったりすると坪倉は思うのだが、今の日本においてそれは難しい現状であることに危機感を抱いていた。


労働意欲を掻き立てることに最も重要なことは収入面。


高い給料であれば当然ヤル気が湧くものだ。


それが今の日本には無い。


20年以上もベースアップしてないのだから。


また、学生時代にいくら学業が優秀でいい大学を卒業していても、社会に出てからも優秀な勤め人になっているとは限らない。


ただの頭でっかちのまま自分で考えて行動する事が出来なかったり、与えられた必要最低限の事だけしかやらない高学歴者も少なくない。


それは今の弱体化した日本の企業にも責任がある事で、昔に比べて社内に憧れる上司の存在が少なくなったからとも言える。


自分が希望する業務や部署に配属されなかったとしても、各部署に1人くらいは尊敬出来たり憧れる上司という者が昔は存在したし、この上司の為なら頑張ろうとか、この人に認められたいから真面目にやろうと、部下がついて行きたくなるような人間が上にいないのが現在の多くの企業に見られる現象だ。


役職者は自分の保身に精一杯だし、中間管理職は上の顔色ばかりを気にして部下の指導はおろか、自分の失敗を部下に押し付ける者も存在するのだから、下の者がついて行くはずがない。


要は社内の人間関係が気薄なのだ。


これは政治家と国民との関係にも言える。


毎度毎度いろいろ問題を起こしては上辺だけの謝罪をし中々議員辞職しなかったり、国民の意見を聞かないで暴走したりというのが今の日本の政治だ。


国民に信頼されていない日本の政治家達は、果たして心からこの国を良くしたいと思っているのだろうか。


そんな議員達のトップである坪倉義郎は、総理大臣としてどんな手腕を発揮してくれるのか。


国民が、この総理大臣の為なら、坪倉義郎が言うなら間違いない!と、そんな風に信頼される総理大臣であったなら、日本の将来に明るい未来が待ち受けているだろう。


〜つづく〜




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