ハミングバードvol.2 | R.Gallagherの世界一面白いブログ!!

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ドトールに着くと、幸いにも喫煙席に余裕が有った。その店舗は少くとも土曜日の夕方は比較的に空いているのだ。
「何が飲みたい?」と二人でメニューを眺めながら、僕は彼女に確認をした。
「アイス・ココアです……」
「すみません、アイス・ココアの一番大きいのとアイス・コーヒーの一番大きいのを下さい」と、僕は店員に頼んでさっさと会計を済ませた。

席に着くと、意外に続きの話題に困った。確認事項は全て済ませてしまった様な、そんな気がした。

メビウスのロングを一本、箱から取り出すと、口に咥えてライターで火を点けた。
「ごめん、何から話そうか?」
「音楽の話がいいです」と、彼女は微笑みながら即答した。
「ああ、了解った。園田さんがTwitterでフォローしてる相手を見たんだけどさ、結局誰が一番好きなの?山崎あおいとか?」
「フィオナ・アップルです」と、再度彼女は即答した。
「フィオナ・アップル?何で?」
「田中さんがブログで書いてたリストでCD-Rに焼いたら、凄く良くて」
「成る程ね」と僕は応えたが、「君はフィオナ・アップルが好きな俺の事が本当に大好きなんだね?」とまでは、流石に続けられなかった。
「田中さんは昔、ライヴにも行ったんですよね?どうでした?」
「うーん、音楽が最高なのは当然として、まるで人魚が歌ってるみたいだった」
「人魚?」と不思議そうに彼女は僕の顔を見上げた。
「髪型とかオーラとかヴィジュアル全体が、当時のフィオナ・アップルは何処か人魚っぽかったんだよね」と応えながらも、それが充分には伝わらないであろう事は理解っていたからもどかしかった。
「何となく理解ります」と、彼女は多分、無理に微笑みながら応えてくれた。
「あ、それから鬼束ちひろさんのリストも最高でした」と、彼女は思い出した様に付け足した。
「チェックしてくれたんだ、有り難う」と僕は応えた。「オアシスは?」
「『タイム・フライズ』のDVDは買って観ました。格好良かったです」
「上出来だ」と僕は思った。「有り難う」
「田中さんは、今日は何をしてたんですか?」
「ナイツのラジオを聴いて昼飯を食べた後は、ずっと星野源の“SUN”を聴いてた」
「Twitterで、紅白を観てアルバムを買った事は呟かれていましたけど、少し意外ですね。すっかり星野源のファンになっちゃったって感じですか?」
「星野源?いいんじゃない?マルチタレントって感じで。実際、“SUN”だけは、俺も好きだし」と、皮肉と嫉妬を織り交ぜながら僕は応えた。彼のファンの方には本当に申し訳無い言い方たが、それが本音なのだから仕方が無かった。
「同い歳ですよね?やっぱりライバル意識とか持っちゃうんですか?」
「俺は本当にやりたい事はもっと絞られてるから」
「本当にやりたい事?」
「音楽だけだよ」
「ブログは?」
「俺がこれ以上にミュージシャンとしてスキル・アップする為には、音楽に専念出来る生活を送る為の纏まった時間と金が必要だ。でも、その為に取り敢えず有名になるためにブログとか携帯小説とかを書くだけなら、会社員として暮らしながらも暇な時にタダで出来る。俺がSNSを使っている理由はそれだけだよ。なかなか成果は出てないけどね」と言葉を選びながら僕が応えると、彼女は少しだけ残念そうな表情になった。「ただ、これだけは言える。ブログは所謂小説よりも更に可能性の大きな表現形式なんだ。夏目漱石の『倫敦塔』って知ってる?」
「すみません、名前だけしか」
「あのテクストの中には、単なる現代小説だけじゃなくて幻想小説とか歴史小説とか紀行文とか落語とか色々なジャンルの文学の要素が詰まってるんだけど、ブログだったらその小説は勿論だけど、歌詞とか批評とか日記とかもっと多種多様な事を展開出来るし、写真や動画を載せられる場合だって有る。だから世間的にはもうブログは落ち目みたいになってるけど、その未来は実は明るいと俺は思ってる。兎に角さ、携帯一本で自分の世界が変わるって、もっとみんなが気付くべきなんだよ」
SNSはプロのミュージシャンになる為の余興と語っておきながら、ブログの可能性や魅力を熱弁している自分の矛盾に僕は少し恥ずかしくなった。
「ネットで実名で怖くはないんですか?」
「怖くなんかないよ。むしろSNSが普及したお陰で、有名人だけがものを言える時代は終わったんだ。便利な話だよ」と応えた後に、「君も実名じゃん?」と訊ねる余裕は、既に無かった。
「石橋杏奈さんと畑下由佳さんと岩本乃蒼さんと笹崎里菜さんと一生一緒にミュンヘンで暮らしたいって言ういつものアレ、本気なんですか?」
「本気って言うかさ」と応えると、続ける言葉に僕は詰まった。「まあ、男の夢だよね、アレは」
「『職場で密かに想っている人』は?」
「その娘に関しては……」と応えると、またも僕は返事に困った。
「関しては?」
「もう、チャンスは貰えないんだろうなと思うと気持ちが折れてしまったからさ。それに……」
「それに?」
「その娘の血液型がO型かどうかも判らないからさ」
「成る程」と応えると、彼女は全てを理解した様子だった。「因みに私はO型ですよ」と微笑みながら彼女は続けた。
「そうなんだ」と、平静を装って僕は応えた。「でもさ、本当はもう、恥ずかしい境地なんだよね」
「何がですか?」
「YouTubeの閲覧数もTwitterのフォロワーも少な過ぎて……」
「大丈夫ですよ」
「何で?」
「みんな私みたいに隠れて見てるから」
「そうなの?」
「みんな怖いんですよ、田中さんに認めて貰えないのが。例えば田中さんの事をフォローしても、フォローバックされなかったら、自分はくだらない人間なのかなって。少くとも、私はだから、フォローはしないで隠れて見てました。」
「俺はガラケーだからTwitterが重くて最低限のアカウントしかフォロー出来ないだけなんだ」
「それは理解ってます」
「でも、フォローバックをしていなくても、感謝をしている人はいるよ?」
「誰ですか?」
「やっぱり角田龍平さんとの絡みでフォローをしてくれている人や、最初から見放さずにフォローを外さずにいてくれる人は特にかな」
「角田さんて、ラジオの人ですよね?」
「うん。それは聴いてないの?」
「すみません、やっぱり普段は学校とかサークルの付き合いとかバイトで忙しくて……」
「まあ、聴けたら聴いてみて」と僕は応えた。「サークルって言えばさ、楽器は何か練習してるの?」
「一応、ギターは持ってるんですけど、なかなか巧くなれなくて……」
「俺もそうだった」と僕は苦笑いをした。「大丈夫だよ、持ってる事に、意味が有るから。弾きたい時に弾くだけでも、思いが強ければ曲は書けるよ」
「そうなんですか?」と、希望で両瞳を輝かせながら、急にテンションを上げて彼女が訊いた。
「少くとも、俺はそうだった」と僕が応えると、「安心しました」と彼女は微笑った。
そして、閉店の音楽が流れ始めた。
「ごめん、もうこんな時間だ。そろそろ帰りたい?」
「いいえ、まだ全然帰りたくないです」と応えると、恥ずかしそうに彼女が訊ねた。「実は私、地元が千葉で、今は独りで下高井戸に住んでるんですけど、良かったらサイゼリヤに行きませんか?下高井戸の。田中さんもその方が近いですよね」
「え、そうなの?何かごめん、渋谷まで来て貰っちゃって」
「いえいえ、それはお互い様です。私の学校の近くだから渋谷にしたんですよね?」
「うん」と応えながら、サイゼリヤを提案した彼女の気遣いに僕は感心した。確かに外食ではサイゼリヤが一番好きな事を、過去にネットに書いた筈だ。それで二人で駅に向かった。
(続く)


【恒例附記】

僕がノエル・ギャラガーにスカウトをされて、
プロのシンガーソングライターになれた場合の作品の構想は以下の通りです。


ソロ名義一作目:『モノローグス』
サンクチュアリーの一作目:『The Greatest Hits』

DISC1

1.First Words
2.Morning Light
3.黒いカーディガン
4.振り返ったら悲しくなるから
5.空の下で
6.美しい花
7.輝くために
8.影も視えなくて
9.冷たい女
10.償い
11.命綱
12.空を見上げただけだった
13.どんなことにも
14.奪還
15.生きて行くこと
16.不確かな予感
17.命綱(ストリングス・ヴァージョン)

DISC2

1.愛して下さい
2.ペルソナ
3.Crazy Love Melody
4.死に損ない
5.レクイエム
6.真実?
7.No More Dream
8.奏でるべきもの
9.ランドスケープ
10.ソング・オブ・ヴェスパ
11.光が射して
12.日溜まり
13.未来
14.永遠
15.ずっとそばに
16.オプティミスティック


サンクチュアリーの二作目:『シュトゥルムドゥラング』

1.ディスクール.1
2.ディスクール.2
3.フライング・アウェイ
4.スタンディング・アローン
5.シュトゥルムドゥラング
6.ジークフリート
7.汚れた指
8.リフレイン
9.恋は止められない
10.君のせいじゃない
11.ボタン
12.イマジネーション
13.虚勢
14.激情


サンクチュアリーの三作目:『トゥモロー・モーニング、(アイル・ハヴ・ア・フィーリング)ロスト・フォーエヴァー』

1.ありがとう
2.流れの中に
3.君を想って
4.ピュア
5.オーヴァーグラウンド
6.ブラックホール
7.イヴェント・ホライズン
8.ユニヴァース
9.青の座椅子
10.朝顔
11.昼下がりの背徳
12.流れた星が凍った夜に


サンクチュアリーの四枚目:『完璧な幸せ』

以下、収録予定曲

ロックンロール・スター
情況
話していたい
何処にも行かない
少しずつ
残像
行かないで
贖罪
自由
世界の何処かに
晩餐
完璧な幸せ

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