自社株の相続、特に、オーナー社長が持っている株式の相続は、本当に悩ましい問題です。
オーナー社長の方からすると「わしの目の黒いうちは、株式だけは手放したくない。」という思いも強いのだと思います。
後継者(次期社長)に贈与しておくという方法もありますが、生前に株式の名義を変えてしまうことには、オーナー社長の抵抗は強いでしょう。
そこで、遺言を活用されているオーナー社長は多いと思います。
「自己株信託」の活用も検討しておくべきです。「自己株信託」には次のようなメリットがあります。
(1)高収益が続くことが見込まれるので、後継者(次期社長)に生前贈与したいが、後継者相続人(次期社長)へ経営を任せてしまうことには、オーナー社長の不安があるケース→「議決権行使の指図権を留保する」ことでオーナー社長が経営に関与できる
(2)後継者相続人(次期社長)と非後継者相続人との相続争いを避けたいケース→「信託受益権という経済的価値を平等に分ける」ことで相続争いのリスクをかなり軽減できる
(3)オーナー社長が自分が死んだ後の妻の生活に不安があるので、妻が生きている間は配当金は妻に受領させたいケース→「受益権を連続して定める」ことで実現が可能です
しかし、何も対策を講じないままで、相続が発生してしまうと、大変です。
最三小判平成26年2月25日裁判所時報1598号2頁 ■
は、直接には、「共同相続された委託者指図型投資信託の受益権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない」ことを判断した判例です。
しかし、その理由中で
「株式は、株主たる資格において会社に対して有する法律上の地位を意味し、株主は、株主たる地位に基づいて、剰余金の配当を受ける権利(会社法105条1項1号)、……などのいわゆる自益権と、株主総会における議決権(同項3号)などのいわゆる共益権とを有するのであって〔最高裁昭和42年(オ)第1466号、同45年7月15日大法廷判決・民集24巻7号804頁参照〕、このような株式に含まれる権利の内容及び性質に照らせば、共同相続された株式は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである〔最高裁昭和42年(オ)第867号、同45年1月22日第一小法廷判決・民集24巻1号1頁等参照〕。」
とあらためて示しています。
ということは、株式の所有者が死亡し、複数の相続人がこれを承継した場合は、その株式は、共同相続人の準共有となります(民法898条)。
準共有となった株式の権利行使はどうすべきかは、次回で。