「真壁家の相続」
朱野帰子
祖父の麟太郎が急死したと母から連絡を受けた

悲しみに浸る間もなく真壁家に襲来したのは
遺産問題…

そして、「麟太郎の隠し子」を名乗る怪しい植田という男

仲のいい親戚づきあいをしているとばっかり思っていた一族の姿がどんどん変わって行く…!




朱野帰子の作品をいくつか読んだことがありますが、

作品のたびにイメージが違うなーと思います


対岸の家事

くらやみガールズトーク




この作品は「遺産問題」がテーマ

真壁家の人間は遺産争いの見本市のような人々があつまっています



相続権はあるが行方知れずの者

相続権は無いが故人を献身的に介護した者

独身の者

事実婚の者



そしてもちろん、

遺産問題となれば目の色を変えて主張してきたりガツガツする人も出てきます



故人の財産を単純に分けるでは終われないんですね



同じ兄妹だったとしても

やれ、そっちは生前たくさん援助してもらってたとか

やれ、そっちこそ大学まで出してもらっただとか



遡れば遡るほど綺麗事では済まない



でもこれって、珍しい話ではないのかも



みんなが生きていて、関係が続いていて
具体的な金銭が目に見えない状態なら

自分以外の兄妹が親から受けた恩恵も「お互い様」と受け止められてた
それはそれでウソじゃない気持ちだろう


でもその親が死んで、具体的に財産が提示されたら
目の色が変わるのはなんだか分かる


親はもう死んだわけだし、ここからは過去に遡るしかないわけですよガーン


アンタはあのお金出してもらったくせにとか、オマエこそこれをしてもらってたとか
恨みや不公平感のほうが発掘されやすい
地獄絵図ですねゲロー



「気持ち」や「思い出」は「お金」に換算しようがないのに
なんかそういう無茶をするような悲しさがあるよね


てな感じで遺産争いアルアルネタがたくさんあって
ふんふんと興味深く読みましたが


なんだか詰め込みすぎ?というか


真壁家に現れる、植田という男がいるんですが
彼の過去や正体に謎を残しつつ
正解を求めて迷う、りんのナビゲーターとなる存在なんですけど


真壁家の遺産争いあるある+植田の過去と正体
というのは若干トピックが多めというか


ちゃんとどちらも決着がつくんですけど
薄くなったというか
特に植田のエピソードは少しもったいないというような気になりました


かといって、どんな部分を省いてどの部分を拡げればいいかはよくわからないんですけどね…
真壁家の人間をもう少し減らすとか?


遺産相続アルアルになるほどと思う時間が長くて
いまいちエモーショナルになりそびれました