「神様のケーキを頬ばるまで」
彩瀬まる
それぞれいろいろな苦悩を抱えながらも
それを顔に出さずに日々働いている人たちの短編集
第一話
「泥雪」
ひとりでマッサージ屋を経営するシングルマザーの女性
彼女の中学生の息子は、日に日に元夫に似てきていた

気づけば、この作者の作品をいくつも読んでいました
暗いような、静かなような、淋しいような
だけどどこか明るくて暖かいような印象
この作品も
普段は「表の顔」を保っているけれど
本当は、誰にも話せない苦悩や孤独を抱えていて
それは一朝一夕に解決できないことだけれど
それでも少しずつ歩きだしていく人々が描かれる
第一話はシングルマザーの女性
中学生の息子が、別れたモラハラ夫に似てくるという
重いが、ありえなくもない地獄
である
それに加え、経営するマッサージ店には
我が身を痛めつけるような恋愛(不倫+加虐性のある男…)をしている女性客がやってくる
息子のことも、女性客のことも
彼女がすぐになんとかできる問題ではない
彼女自身も弱く、愚かなところもあり
流されるままに今の場所にたどり着いた
それでも自分を保っていられるのは
自分の店があるからだろうか?と思った
居場所が人を強くする
しがみつくことでなんとか存在できる
彼女は直接的に、
女性客の悪縁を断ち切ることはできないし
息子を更生することはできない
だけども
女性客を想ってマッサージをすること、話を聞くこと
息子に温かい食べ物を食べさせたいと思うこと
そして、彼女自身の想いを少しずつ伝えること
それらが少しずつ、廻り廻って相手に伝わり
良い方へ変わっていきそうなラストだと感じた