「炎上する君」
西加奈子
コレの続きです

「舟の街」
主人公の「私」は、なにもかもにうちひしがれて
噂には聞いていた「舟の街」に行くことになった
言葉が通じないような
言葉なんてなくてもすべて伝わるような
不思議な「舟の街」で
奇妙だけれども穏やかな日々を過ごす「私」
すこしずつ心が癒されていくのであった

「舟の街」の人々の、
一見無意味不明に感じるが実は意味の通る不思議な言語は
筒井康隆の短編
「ヨッパ谷への降下」をなんとなく思いだしました
現実世界の思わぬところが異世界とつながっているのも。
私も、人生であのとき
「舟の街」に行けたら良かったのに!
って思い出があります
まあ、主人公と同じく
理由は失恋ですが
失恋はきっかけだけれども
その傷はどんどん深く浸蝕して化膿して
もはや自分が自分である意味がよくわからないような
負のループにはまって
生きてるだけで精一杯みたいな毎日
当然、現実の私は
「舟の街」には呼ばれませんでしたが
不思議と、苦し紛れに生きてる日常のそこここに
現実逃避できたり、いっとき慰められる瞬間がありました
たとえば、一日中ぼーっと座っていた川の土手や
心をひたすら無にして働いてる職場で、思いがけず優しくされたり
(相手は私の事情など知らないのでたまたま)
それらは私にとって
「舟の街」の断片だったのかもな
そんな
「舟の街」のかけらに少しずつ癒されて
私は私を少しずつ取り戻して行ったことを思い出しました。