光る君へ第23回あらすじ&感想前編 | NobunagAのブログ

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光る君へ

第23話「雪のまうころ」前編




長徳二(996)年。


「話があって来た。

朱様は通事を殺していない」


流暢に日本語を話す周明が

一人の男を突き出した。


「証人だ。話せ」


「国府の偉いお人に

朱様が通事を殺したと言えと

脅かされました。

言わねば仕事を取り上げると」


「国府の偉い人とは

誰のことだ?」


為時が尋ねる。


男が押し黙ると


「何事でございますか!

このような卑しき者を

招き入れるとは」


源光雅が声を荒げて入ってきた。


「このお方でございます」


男が光雅を指さす…


「な…何のことだ!」


「人殺しを見たので訴え出たら

このお方が米をくれて

通事を殺したのは宋人の長だと言えと。

言わねば仕事を取り上げると

いいました」


「偽りを申すな。

国守様、このような者の

言うことをお聞きになっては…」


光雅は誤魔化そうとするが


「黙っておれ!」


珍しく為時は怒った。


「お前は通事を殺した者も

知っておるのか?」


男は頷いた。


「それは誰だ?」


周明が


「俺に言ったことをもう一度言え」


と促す。


「武生の商人、

早成でございます」



為時はその早成という

商人を呼び出し事情を

聞いていた。


「私は宋と商いをしたかっただけで

殺すつもりはなかったのです。

通事に砂金を渡して…

朱という男に取り次いでくれと

頼んだら…」



「これっぽっちで?」


三国若麻呂は為時の前とは

打って変わって冷たい声で

早成に向かってつぶやく。


「どれだけ出せばよい」


「砂金なら5袋」


「そのような…」


「嫌ならそれまでだ」


冷たく告げる三国。


「待ってくれ」


と早成は三国の袖をつかむ。


「離せ」


「いや待ってくれ」


「はな…」


2人はもみ合いとなり…


雪で足を滑らせた三国は

転んで頭を打ち付けてしまった。


「おい…おい!」


慌てて早成は声をかけたが

三国はすでに息をしていない。


そんな様子を男は見ていたのだ。



「まことでございます!」


早成は必死に為時に訴える。


その話が本当であるなら、

早成に殺意があったわけでもなく

どちらかといえば、

賄賂をせびっていた三国にも

責任は大きい。


自業自得、ということだ…


あの人の好い三国が、

そんなことをしていたことに

為時は寂しそうな顔になるが

事実なら受け入れるしかない。


「そなたもこの男と共に

宋と商いをして懐を

肥やそうとしておったのか」


男の証言を止めたがっていた

光雅に為時は問うが、

光雅は心外とばかりに


「懐を肥やす気はございませぬ!」


と言いきった。


「越前においでになったばかりの

国守様にはお分かりにならないので

ございます。

我らはこの1年、ずっと宋人を

見てまいりました。

彼らは膨大な数の財宝を

持ち込んでおり、

それを出し渋ることで

物欲のある公卿や朝廷をあおり

国同士の商いの道を

開かせようとたくらんでいると

私は思っております」


光雅の声には熱がこもっていた。


「そもそも宋人は日本を

格下に見ており、

我々のことなぞ取るに足らぬ

国の田舎役人だと侮って

松原客館でやりたい放題で

ございました」


「やりたい放題」


ちら、と為時は周明を見る。


「国守様は都から来られた

お役人ゆえ、

コロッと振る舞いを変えたのです」


光雅はあえて胸を張った。


「私が偽りの証言を頼んだのは

この機会に朱の力を奪わねば

したたかな宋に越前はおろか

朝廷も振り回され、

害を被ると思ったのでございます」


都合が悪くなったのか

周明は


「そんな話はいい」


と遮る。


「朱様は無実です。

早くお解き放ちを」


それは確かにそうで、

光雅の話が本当だとしても

そのことと、

無実の朱を捕まえていいかは

別問題ではあるのだ。


光雅は感情のやり場がない。


「介、その方の言うことは

分かった。

されどこの一件において…

朱に罪はない。

朱を解き放て」


本当は光雅とてわかっているのだ。


光雅は膝をついた。


「左大臣様もかねて

越前のことは越前で決めよと

仰せになった。

介らの意見は改めて

じっくりと聞く」


為時が立派だったのは、

頭ごなしに光雅を怒らずに

その話にも一定の理解を示したうえ、

それでも無実の罪で追い込んでは

ならない、と示したことだ。


光雅も感服したように


「ははっ!」


と返答した。


「その方、通事として

力を貸せ」


三国がいなくなった以上、

日本、宋の言葉両方を操る

周明が今の為時には必要だ。


「はっ」



釈放された朱を周明は

為時のもとへ連れてきた。


朱は宋語で礼を述べる。


【あなたのおかげで助かった。

深く感謝します】


朱は続けた。


【あなたを信じてまことのことを

話します。

私たちは越前を足掛かりにして

宋と日本の国同士の商いを

図るように命じられています。

果たさねば国には戻れない】


朱には朱の事情があるのだ。


【前の国守は話も聞いてくれなかった。

でもあなたは話を聞いてくれる】


「いや、まだ聞くとは言っていない」


外交に関わる問題であり、

過度な期待を抱かれても困る。


為時は慌てて立ち上がった。


【どうか、どうか力を貸してください。

あなたが頼りです】


朱と周明は頭を下げた。



為時は事の仔細を

光雅に伝えてやった。


「やはりそうでございましたか。

朱は宋の朝廷の命を受けた者に

ございましょう」


「その方の越前を思う真情も分かった。

されど無実の宋人を罪に陥れたことは

許されぬ。

こちらも筋を通さねば

宋人に立ち向かえぬゆえ」


為時は光雅を見直していた。


そのうえで、あくまでも

判断はくださねばならない。


「承知つかまつりました」


光雅もこの国守なら、

信頼できる、とばかりに

素直に頭を下げる。


「年内は国府に上がらず

謹慎せよ」


「ははっ」


妥当な処置であった。



「あなたは宋人なの?

日本人なの?」


まひろは日本語を話していた

周明を問いただしている。


「宋人だ」


「なぜこの国の言葉が上手なの?」


「生まれは対馬だ」


「日本人ではないの?」


「宋人だ」


と、やはり周明は即答する。


が、そのあと周明が

語ったのは壮絶な過去だった。


「12の時、おやじは口減らしのために

俺を海に捨てた。

海に浮かんでいる俺を

宋の船が拾った。

宋では牛や馬のように

働かされた。

ある日ここにいたら死ぬだけだと

思って逃げ出した。

薬師の家に転がり込んで

助けられ見習いにしてもらった」


だから薬師として、

朱に仕えていたのだ。


「賢かったのね」


「師は初めて出会った

いい人だった。

朱様もまたいい人だ」


周明なりに恩があり、

宋人として仕えているのだ。


「あなたは苦しい目に遭って

大変だったけど、

宋の国はこの国よりも

懐が深い国なのでは

ないかしら」


まひろは憧れを口にする。


「どうだろう」


周明は去ろうとするが


「もっと宋の話を聞かせてほしい」


まひろは頼み込む。


「松原客館には宋から

持ってきたいろいろな品が

あるそうだけど、

書物もあるの?どんな書物?

白楽天の珍しいものはある?」


必然、まひろの興味は

自分の趣味へと向く。


「書物のことは知らないが

陶磁器、香木、薬、

織物、酒に食べ物。

テンの毛皮もある」


「テンの毛皮…」


テン、という動物を

まひろは知らない。


周明は何か宋語で喋った。


「何?」


「俺を信じるなと言ったんだ」


「なぜ?」


「宋人は信じるなと

越前の役人が言っていたではないか」


「私はずっと宋の国に憧れていたの。

宋の国は身分が低い者でも

試験を受ければ官職を得られるの

でしょう?

そういう国にずっと

行ってみたいと思ってきたわ」


まひろの知識は書物の中のことだ。


だが、そんなまひろを見て

周明は


「宋の言葉を知りたいか?」


と尋ねた。


「え…?」


「ウオジャオ、ヂョウミン」


「私の名前は周明です?

ウオジャオ、マヒロ?」


「お前こそ賢い」


周明は微笑んだ。


「シェシェ」


2人は笑った。



その日から時間を見つけては

周明はまひろに宋語を

教えてやることにした。


「ネイ、ワィ。

中、外」


「ネイ、ワィ」


「外は寒い。

ワィビィェン、ヘンラン」


「ワィビィェン、ヘンラン」


「ラン」


発音の違いを指摘する周明。


「ラン」


「ラン」


「ラン」


「ワィビィェン、ヘンラン」


「ワィビィェン、ヘンラン」




【私の父は越前の国守です】


宋語でまひろが喋る。


「ウォデェ゛ァフーチン、シー

ユェチィェンデェ゛ァ

グゥォショウ」


「ウォデェ゛ァフーチン、

シーユェ…」


「シー」


「シー」


「シー」


「シー」


「シーユェチィェンデェ゛ァ」


「シーユェチィェンデェ゛ァ」


「グゥォショウ」


「グゥォショウ」


「うん。まあいい。

私は国守の娘です。

ウォシー、グゥォショウデェ゛

ァニュェ゛ァー」


「ウォシー…ウォシー」


「シー」


「ウォシー、グゥォショウ…」


「グゥォショウデェ゛

ァニュェ゛ァー」


「グゥォショウデェ゛

ァニュェ゛ァー…」


「まひろは覚えが早い。賢い」


周明は感心する。


「俺も忘れていた日本の言葉を

かなり思い出した」


「私のおかげね」


「おかげではない。

俺の心のことだ」


「失礼しました。

失礼しました、は?」


「シーリーラ」


「シーリーラ?」


「シーリーラ」


「シーリーラ」


「うん」



【外は雪】


まひろはスラスラと宋語を

喋れるようになってきた。


火鉢に当たりながら、

宋語で雪が降っていることを

話す。


「風邪をひく。

デェ゛ァフォンハン」


「デェ゛ァフォンハン」


「うん」


「風邪をひいたらはりで治して」


周明はまひろの手を取った。


「指の間に刺すと熱が下がる…」


「えっ…こんなとこ痛そう」


まひろは気恥ずかしそうに

指をさすった。


「だから風邪は引くな」


「あっ、雪…」


外には雪が舞い始めていた。



まひろは筆をとる。


「ここにかく 日野の杉むら

うずむ雪

小しほの松に けふやまがえる」



まひろが書いていた紙に

雪がぽつりと落ちていたころ、

都の道長の手にも雪が

落ちてきていた。


道長は白く曇った空を見つめる。



帝は懐かしい紙を取り出して

行成に見せている。


「行成、これを覚えておるか?

中宮がそなたの文字を気に入って…

朕と2人でよく見ておったゆえ

だいぶん傷んでおる」


「中宮様が…」


「中宮の好きな歌は

紀貫之の

夢路にも露やおくらむ

夜もすがら

かよへる袖のひちて乾かぬ、

である」


行成は寂しそうに聴いている。


「あのころはこのようなことになると

誰も思っておらなかった」


「お上と中宮様のお美しさを

私は生涯忘れませぬ」


「中宮は健やかに過ごしておるで

あろうか。

そろそろ子も生まれよう。

高階にひそかに行くことは

かなわぬであろうか」


帝はつい、本音を口にした。


「中宮様は出家なされまして

ございます」


行成は心を鬼にしてそう答える。


「そうではあるが…」



行成はそんなやりとりを

道長に報告した。


「帝のお心の痛みが

伝わってくるようで

苦しくなりました」


「頭を冷やせ」


道長はそう短く答える。


「は?」


「帝の術中にハマってはならぬ。

聡明な帝は行成の優しさを

見抜いておられる。

そして同情を買い、

利用しようとしておられる」


驚く行成。


「帝のおそば近くに仕える

蔵人頭はもっと冷静であって

もらいたい」


道長はあえて厳しい言葉で

そう伝えた。


「はっ。なんとも未熟でございました」


「頼んだぞ、行成」


「承知いたしました」


いつになく厳しい道長。


その言葉は本心なのか、

あえて帝に同情したくなる

自身のことも制しているのか…



夜。


枕を並べている倫子が

道長に話しかけた。


「義子様に続いてこの間、

元子様も入内されましたけれど

帝は義子様にも元子様にも

お会いにさえならないのですってね」


「そんなうわさがもう

聞こえているのか」


「中宮様をお忘れになれない

帝のお気持ちは分かりますけれど

入内された女御様が

お気の毒でございますわね」


「全くだ」


「殿が帝と女御様を

結び付けるべく

何か語らいの場でも

設けられたらよろしいのに」


「それは会を催すということか」


「ええ。あっそうですわ。

ここで催しません?」


楽しそうに倫子は起き上がった。


「え?」


「ここには女院様も

おられるのですもの。

帝もお出ましになりやすいでしょ。

それがいいわ。

万事お任せくださいませ」


にこにこ語る倫子に道長も


「頼もしいのう」


と感心する。


「フフフ…はい。

まずは入内されたばかりの

元子様からにいたしましょう。

お二人鉢合わせはまずい

ですものね。フフフフフ…」


倫子はこれで夫の役にも立てる、

と嬉しそうに笑った。



当日。


女御となっている元子の父である

藤原顕光が道長に挨拶する。


「こたびのお計らい、

お礼の言葉とてござりませぬ」


「帝と女御様がお楽しみ

いただければ何より」


「娘は琴が得意でございますので

帝とお手合わせできることを

喜んでおりました。

まことに…まことに左大臣殿と

女院様のご親切、

痛み入りたてまつ…」


なにせせっかく入内したのに

帝が会ってもくれていない、

では親としても娘が

不憫である。


大げさに礼を述べる顕光に


「どうぞこちらへ」


「あっ」


道長はさっさと案内した。



帝の笛に合わせて、

元子が琴を爪弾いている。


道長も倫子もそれに

聴き入っていたが…


帝の笛が止まってしまった…


定子とのことを思い出して

しまったのだ。



「帝の中宮への思いは

熱病のようね。

私は夫であった帝に

めでられたことがないゆえ

あんなに激しく求め合う

2人の気持ちが全く分からないの」


詮子は道長に正直に尋ねた。


「お前には分かる?

分からないわよね」


恋に疎そうな弟を見て

詮子は早々に諦めたが…


「私にも妻が2人おりますが…。

心は違う女を求めております」


倫子に聴こえないように

こっそりと詮子に告げた。


詮子はハッとする。


「己ではどうすることもできません」


道長は困ったように腕を組む。


「やっぱり!誰かいると思っていたのよね」


「まあされどもう終わった話に

ございます」


「下々の女子でしょ。捨てたの?」


若き日に聞いたことがある

かつての話を持ち出す詮子。


「捨てられました」


「えっ!」


詮子は思わず声を抑える。


「道長を捨てるって

どんな女なの?」


道長は立場的にもそうだが

詮子からしたら自慢の

優しい弟でもある。


「よい女でございました」


「まあ…」


そんなこれまで知らなかった

弟の一面に詮子は目を輝かせた。


「どんなふうによいの?

夫をつなぎ止められなかった

私にはない輝きがその人にはあるのね。

中宮も帝を引き付け、

さんざん振り回しているけれど

私にはない。

何なの?」


それは詮子にとって、

心からの疑問なのだ。


「それって一体何なの?」


それが恋…なのだが


「今宵は帝が元子様を

お召しになられるよう

祈りましょう」


道長はごまかして去ろうとする。


「あっ…その女のことは

倫子と明子は知っているの?

倫子も明子も利口だから

気付いているかもしれないわね」


恐ろしいことを言う姉だ。


「では」


「何よ!自分から言い出しておいて。

もっと聞かせなさいよ!」


道長は去ってしまった。



その話題の中宮、定子は

ききょう…清少納言の書いた

文を読んでいる。


「鶏のひなが足が長い感じで

白くかわいらしくて

着物を短く着たような格好をして

ぴよぴよとにぎやかに鳴いて

人の後ろや先に立って

ついて歩くのも愛らしい。

また親がともに連れ立って

走るのもみなかわいらしい」


定子は


「姿が見えるようね。

さすがである」


と褒めた。


「お恥ずかしゅうございます」


「そなたが御簾の下から

差し入れてくれる

日々のこの楽しみがなければ

私はこの子と共に死んでいたであろう」


ききょうは言葉に詰まる。


「少納言」


「はい」


紙を置いた定子は腹を押さえる。


「ああ…」


慌てて立ち上がるききょう。


「はい」


「ありがとう」


そばに座ったききょうに

定子は微笑みかけた。


「この子がここまで育ったのは

そなたのおかげである」


ききょうは


「もったいないお言葉…」


と頭を下げた。


「そなたを見いだした母上にも

礼を言わねばならぬな」


「内裏の登華殿に

お母上様に呼ばれて

初めて参りました日

亡き関白様はじめ皆様が

あまりにもキラキラと

輝いておられて

目がくらむほどにございました」


大げさに言うききょうに

定子は笑う。


「懐かしいのう…」


「はい」


「あのころがそなたの心の中で

生き生きと残っているのであれば

私もうれしい」


だからこそ、書いたのだ。


そう感じてほしいから。


「しっかりと残っております。

しっかりと」


定子は微笑んだ。



翌日、定子は姫皇子を産んだ。


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三国若麻呂殺人事件。


犯人は早成です…!!


と、言われても為時や

まひろのみならず

多くの視聴者も誰!?と

思ったはずなのだが…


いや、なにせ俺などは

源光雅があやしい…!!


とそのままストレートに

何の深みもない想像をしていたw



この話で重要なのは

誰が犯人か、

なのではない。


そのようなことを招いて

しまったのは、

三国本人が小さな悪事に

手を染めてしまっていたこと。


三国だって宋に渡って

苦労して今の立場になった、

これは嘘ではなかったろう。


でもだからこそ、

その立場を悪用しようとしてしまい、

殺された、というよりは

もみ合いになった末に事故死して

しまったということだ。


その事実を知った源光雅もまた、

これまで必死に努力をして

越前という国を守っていた。


であればこそこれを利用し

朱が犯罪を犯したように

話をでっち上げてまで

彼を捕らえてしまった。


無論、国を守りたいからと言って

無実の人を捕まえていい、

などということは当時でも

許されない行いだった。


光雅からしてみたら、

大きな正義の前には

朱一人が犠牲になるのは

やむを得ない、

と思ったのだろうが

為時はそのような無法は

許されない、と

はっきり判断した。


が、為時が立派だったのは

光雅の行動を決して頭ごなしに

怒ったりしなかったことだ。


おそらくは光雅がいきなり

為時に賄賂を送ろうとしたのも

あくまでこの国を守るため、

これまでの国守のように

懐だけを肥やして帰ってください、

現場のことは自分たちのような

よくわかっている者が、

ちゃんとやりますから…


という、真面目な気持ちから

やったことだったのだろう。


少なくとも光雅という人は

私心で人を陥れたり、

国守を軽く見るような

そんな男ではない。


むしろ真剣にこの国を

考えてくれる相手だった。


であればこそ為時は

適切な裁きは下したうえで

年内の出仕は禁じたが

それからは仲間として

やっていこう、という

意志を示してあげた。


国守としても完璧な振る舞いだろう。


光雅も為時という人は、

これまでの国守とは違うのだ、

頼れる上司がようやく来たのだ、

と感服したことだろう。


非常に良いやりとりだった。



倫子は道長が他に好きな女がいる、

ということに気付いてはいても

今回も道長のことをフォロー

してあげようと、

帝が定子以外の女御にも

興味をいだいてくれるようにと

帝を招いての会を提案している。


よく出来た妻だなと改めて思う。


道長のほうがあっちへ

ふらふらと落ち着かない奴なのに

倫子はしっかりと構え、

左大臣の妻として

ふさわしい女であるようにと

振る舞っている。


もっとも帝の定子への

愛があまりにも

恋したばかりの若者のように

深すぎて…


笛を吹いただけで

定子を思いだしてしまうようでは…。


他の女御も哀れではあるのだが。



詮子がこれまでどうして

中宮の定子をそんなに

敵視するのか不思議だったのだが

そうやって帝の心を掴んで

離さないという事実…


それこそが詮子から見たら

理解不能で怖いものであったのだ。


だからこそ詮子は、

帝は定子に騙されているとか

利用されている、

と邪推してしまってきた。


が、2人はそんな関係なのではない。


ただ、恋をしている。


行成に対して


「同情を誘う帝の手に乗るな」


と注意した道長ではあったが

本当は帝の気持ちなど

痛いほどわかっていたのだ。


だから道長はまひろのことを

姉にほのめかした。


詮子も道長の前では

一人の姉なのでうれしそうに

聞いていて良いやりとりだが…


詮子の言うように、

倫子も明子も聡明だから

気付いているかもしれない…!


というのは鈍感な道長には

誤算だったろう。


そもそもこの姉に話したら

いつバラされるかわからないのにw



定子とききょうのやりとりは

本当に美しくて、

見入ってしまう。


まるで目の前に、

枕草子の中宮定子と

清少納言がいるようだ。


この2人の配役は

あまりにも的確で

素晴らしいと思う。


清少納言が描く世界が

美しいのは、

定子を喜ばせたいから。


あの頃がキラキラ輝いていた、

お前がそう思ってくれているなら

私も嬉しい…


本作の枕草子への解釈が

ここに集約されている。


この子がここまで育ったのは

お前がいてくれたから。


清少納言の忠義心も

素晴らしいのだが、

なんというかそれ以上に

君臣を超えた友情すら

感じさせる2人のやりとり。


史実、事実などというのは

1000年も前のことであり

本当にこうだったかは

わからない。


けれども、


「こうであってほしい」


「もしこうだったら素敵だ」


そんな世界を脚本家と、

役者とがいきいきと

描き出している。