光る君へ第14回あらすじ&感想前編 | NobunagAのブログ

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光る君へ

第14話「星落ちてなお」前編




永祚二(990)年。


倫子との久々の面会を終え

帰ろうとしたまひろは

帰宅してきた道長と

出くわしてしまう。


思わず見つめあう二人。


「北の方様のところに

以前より出入りしておる

前蔵人式部丞藤原為時の

娘にございます」


道長は共の者からそれを聞くと

足早に通り過ぎた。


まひろもそそくさと

後にする。



奥の部屋から


「父上のお帰りでございますよ」


「お早いお帰りだこと」


家族の会話が聴こえてきて

まひろの胸は痛む…



「ほら彰子、父上よ」


「父上」


「言えた〜!偉い偉い」


と倫子は喜ぶ。


「殿も褒めてやってくださいませ」


道長は平静を装ってはいたが

心は茫然自失である…


「ん?」


「いかがされましたの?」


「そうか…よかったな」


あまりに的外れな返答に

冷たい空気が流れる…


「あちらで遊んでおいで」


倫子は彰子を部屋から出すと

心配そうに道長を見つめる。


「お着替え、お手伝いいたします」


と立ち上がるが道長は


「よい」


拒むと庭の前に立ち


「ああ、よい風だ」


とくつろぐが普段と違う

道長の様子に倫子は

取り残されてしまった…



一方のまひろも浮かない顔で

佇んでいる。


いとはまひろが旧知の

左大臣家に雇ってもらえると

思い込んでいたらしい。


「断られたのですか?何故に…」


「気に入られなかったのやも…」


まさか道長の家だから

気乗りがしなかった、

とも言えない。


「されどあちらからの

お話でございましたよね」


確かにまひろを気にして

声をかけてくれたのは

倫子のほうなのだ。


「女房としては使いにくいの

ではないかしら…」


「だったら何のための

お話だったんでございましょう、

失礼な…」


そもそも倫子が悪いのではなく

せっかくの話を蹴ったのは

まひろのほうなのだ…


「許しておくれ、いと。

いとの願いに応えられず…」


まひろは理由を隠さずに

伝えるわけにもいかず、

ただいとに謝るしかなかった。



兼家は息子ら3人を前にしている。


「今日は気分がよいので

お前たちを呼んだ。

出家いたす」


一同、表情を固くする。


引退する、ということでもあるし

兼家自身が死期が近いことを悟り

死に備えるという意味でもある。


「望みどおり関白になったが

明日それを辞し髪を下ろす。

わしの跡は…」


道兼が期待のこもった目で

兼家を見るが


「道隆、お前が継げ」


と命じた。


「はっ…仰せかしこまりまして

ございます」


長幼の順を考えれば

当然でもあるし道隆自身、

それを意識してきたことだ。


しかし道兼は納得が

いかなかった。


「父上は正気を失っておられる。

父上の今日あるは私の働きが

あってこそ。

何故、兄上に!」


「黙れ。正気を失っておるのは

お前の方じゃ。

お前のような人殺しに

一族の長が務まると思うのか!」


道兼は言葉を失う。


初めて聞く話に道隆は困惑した。


「人殺し…」


全てを知っていた道長は

苦い顔で黙るしかない。


「大それた望みを抱くなぞ

許し難し。下がれ」


道兼は激昂して立ち上がる。


「父上こそ帝の父の円融院に

毒を盛り、花山院の女御様と

その子を呪詛しそのあげく

あやめ奉った張本人ではないか!」


薄々と…は気づいてはいたものの

こうして全てをはっきりと

告げられると、やはり

道隆は驚きを隠せず道長を見た。


道長はただ黙る。


兼家は気遣うように


「道隆は何も知らずともよい。

お前は真っさらな道を行け」


と言った。


「はっ」


己の知らぬところで、

父は家のためにこそ

手を汚してもきたのだろう。


道隆は素直に頷いた。


「道兼はこれからも

我が家の汚れ仕事を担って

兄を支えてまいれ。

それが嫌なら身分を捨て

どこへでも流れてゆくがよい」


自業自得、ではあるのだ。


道長は道兼を見た。


道兼は怒りに震えながら


「この老いぼれが…。

とっとと死ね!」


と叫ぶと荒々しく去っていった。


兼家はそれを無視するように


「以上である」


と話を締めたが、

さすがに辛い内容だったのだろう。


よろめく兼家を


「あっ」


と、道隆と道長は支えた。


「よい。

道隆、道長、今より父はないものと

思って生きよ」


兼家はそう告げると、

歌いながら去っていく。


ふと気になった道長が

屋敷の隅に目をやると

道兼が哀しそうに

佇んでいた。


これ以来、道兼は

参内しなくなった。


兄…ではあるが、

まひろの母を殺した男。


かける言葉もなく、

道長は肩を落とす

道兼の背中を見つめていた。



為時の家では、いとが

珍しく深刻な顔をして

為時の部屋を訪れている。


「いとにございます」


「入れ」


相変わらず為時は、

書に目を通している。


「殿様、おいとまを

頂きとうございます」


予想もしなかった言葉に

為時は顔を上げた。


「本当にお世話になりました。

何のお役にも立てず…」


「ま…待て。

いきなりいかがいたしたのじゃ」


「私、食べなくても

太ってしまう体でございますので

何と言うか、居場所がないというか…」


いとは涙声で告げる。


「いや今更何を申すか」


「されど、土御門殿での

姫様のお仕事も決まらず

私の仕立物の注文も

途絶えがちで…

もう私がおいとまを頂くしか

あるまいと…」


「行く当てなぞないであろう」


元々、家が困窮してしまったのは

為時が政治的な判断を誤り

仕事を失ってしまったことに

原因はある。


為時は労るように

いとの隣に座り直した。


「惟規の乳母となって

この家に来たのは

お前が夫と生まれたばかりの子を

はやり病で亡くした直後であった。

ゆえにお前は惟規を我が子のように

慈しんでくれた」


思い出すように為時は語った。


「この家はお前の家である」


いとはあまりの優しい言葉に

顔を上げる。


為時ははにかみながら


「ここにおれ」


と言ってやった。


いとの泣き声が響いた。



兼家は妾の寧子のところを

訪れていたが体調は優れず

床に臥している。


「道綱、道綱、道綱。

聞こえますか?」


こんなときにも息子のことを

売り込もうとする寧子を


「母上、もうおやめください」


道綱は止めようとする。


「道隆様に道綱のことを

お忘れなくとおっしゃって

おいてくださいませね。

道綱」


「お加減のお悪い時に

そんなことを申されるのは…」


自分のために母がしてくれている、

とはいえ道綱は呆れたように

再度、止める…


と、兼家が目を開けた。


「あっ、お気づきになられた。

殿様」


寧子は手を握る。


兼家は口を開く…


「嘆きつつひとり寝る夜の

明くる間はいかに久しき

ものとかは知る」


寧子の作った歌だ。


「殿…」


「今の歌、何?」


と道綱は尋ねた。


「私の蜻蛉日記よ」


「あれはよかったのう…」


兼家は兼家なりに、

寧子の寂しさに思いを馳せ

ちゃんと愛していたのだ。


寧子は愛する男の手に

頬ずりした。


「輝かしき日々であった」


懐かしむように兼家は言った。



明子は兼家を呪詛している。



夜がふけてきた…


安倍晴明は夜空を見上げていた。


「今宵、星は落ちる。

次なる者も長くはあるまい」



兼家はふらふらと、

庭へと歩みだしている。


空を見上げると、

美しい三日月が目に映り、

兼家はほほ笑む…


が、月は真っ赤に染まり

兼家は己の業を受け止めるように

険しい顔でそれを選んだ。



兼家の扇を前に明子は

真夜中まで呪詛を続けていた。


雷の轟音とともにその扇が

床へと落ちる。


雨音が響く中で明子は

荒い息をつきながら

床に倒れふした。


その手は子を宿していた

大切な腹を押さえている…



翌朝。


兼家は人知れず庭に倒れ

事切れていた。


空は晴れ上がり始めている。


何かの予感がして、

朝早く兼家の部屋を

訪ねようとしていた道長は

庭に倒れている父に気づく。


「父上!」


道長は慌てて兼家のもとに

駆け寄るがもはや、

その手は冷たくなっていた。


この時代、亡くなった者に

触ることは「穢れ」として

恐ろしいことだとされていたが

道長は構わず地面に一人

横たわる父を抱えて

抱きしめてやった。


「父上…」


厳しい父であったが、

道長にはどこか優しかった兼家…


「父上。

父上!」


道長は涙をこらえるように

父を抱きしめ続けた。



数日後…


「兼家様、3日前に

身まかられたそうだ」


宣孝が為時にそれを

知らせに来ている。


兼家といえば為時の

任官を邪魔してきた相手…


いとは思わず喜びを見せる…


まひろは父を見たが、

為時はなんともいえぬ顔を

している。


「激しいご生涯であったのう…」


どこか懐かしむように

そうこぼした。


宣孝は


「知らせはもう一つある。

わしは筑前に下ることとなった」


と告げた。


「筑前守におなりなので

ございますか?」


「さきの筑前守が病で職を

辞したそうでにわかの赴任を

命じられた。

ハハハ…御嶽詣の御利益だ。

いよいよわしも国司になるぞ」


「おめでとうございます」


「さみしくなるのう」


為時が名残惜しそうに言う。


「そのような顔をするな。

わしも為時の一家を置いていくのは

忍びないと思っておったが

運よくさきの関白様が

身まかられてこれから

家運も上向くであろう。

ああ、よかった、よかった。

下向の支度もせねば

ならぬゆえ、これでな」


「お知らせありがとうございます」


「ああ」


宣孝は立ち上がる。


まひろは宣孝を見送りに出る。


一人残された為時は、

どこか浮かない顔で

座っている。


「殿様」


いとが嬉しそうに声をかけたが


「一人にしてくれ」


為時は暗い声で答えた。


そして袖で目頭を押さえる。



自分の任官を阻んできた

兼家が死んだというのに

為時の様子は喜んでいる

ようにも見えない。


「殿様のあれはうれし涙で

ございますよね?」


いとがまひろに尋ねた。


「分からないわ。

父上ご自身もお分かりに

なっていないかも」


「え?」


「うれしくても悲しくても

涙は出るし

うれしいか悲しいか

分からなくても涙は出るのよ」


かつて道長に抱かれたときと

同じことをまひろは言った…。


まひろ自身も兼家には

やり込められた立場だが、

兼家は道長の父親でもある。


なんともいえぬ表情で

佇んでいた。



「殿がお越しでございます」


兼家を呪詛したあと、

倒れた明子はお腹の子を

流してしまっていた。


道長の姿を見て起きようとすると


「そのままでよい」


と道長は優しく明子の肩を抱く。


「殿のお子を…

お許しくださいませ」


「生まれいでぬ宿命の子もおる。

そなたのせいではない。

ささ、休んでおれ」


道長は明子を寝かせてやった。


「喪に服しておいでの時にあえて

穢れの身をお見舞いくださるなんて…」


当時、死が穢れであるように

お腹の子を流した女性もまた

穢れの対象だったが、

道長はまったく気にしていない。


「しきたりなぞ気にするな。

ゆっくり養生いたせ」


道長は


「また参る」


と優しく声をかけると

去っていく。


明子は思わず道長の

背中を見つめた。


こんな優しい男の父親を

自分は呪い殺してしまったのだ…



明子の元から戻った道長を

倫子が迎えた。


「お帰りなさいませ」


「うん」


「明子様はいかがでしたか?

しっかりお慰めしてあげなければ

いけませんわね」


さすが嫡妻だけあり、

倫子は落ち着いている。


「でも明子様はお若いから

これからお子はいくらでも

できましょう。

私もせいぜい気張らねば」



関白、藤原兼家の喪に服して

都はしばらく静まり返っていたが…。



道兼は女たちを招いて


「世の中は夢か現か現とも」


自暴自棄になっている。


そこへ妻の繁子がやってきた。


「何だ?」


「おいとまを頂戴いたします。

尊子も連れてまいります」


と繁子は淡々と述べた。


「関白の妻でなければ

気に入らぬか」


「そうではございませぬ。

好いた殿御が出来ました。

お父上の喪にも服さぬような

あなたのお顔はもう見たくも

ございませぬ」


道兼はため息をつく。


「ならば尊子は置いてゆけ」


「尊子は先に家から出しました」


繁子は笑顔で答えた。


「私と参りたいと申しましたので。

皆様、お邪魔いたしました」


繁子は去っていく。


道兼は止めることもできない。


娘のことを道具のように

考えてきたのは自分自身だ…



夜になり呆然としている

道兼の屋敷は荒れ果て、

鼠が歩き回っていた…



斉信と碁を打ちながら

公任はため息をついている。


「我が父も見る目が

なかったな…

次は必ず道兼様だと

申したのに」


「お前に誘われて

道兼様についたりしなくてよかった」


「これからは道隆様に

真剣に取り入らねば」


書を読んでいた行成は


「実の父上の喪にも服さぬ

道兼様はあまりでございます」


と言うが自嘲気味に斉信は


「こうして群れておる我らも

似たようなものだが」


とこぼす。


「なるほど我らも不謹慎ではあるが

まだまともな方だ。

道兼様は正気ではない」


公任の言葉を受け行成は


「普通に考えれば

定子様を入内させた道隆様が

跡目を継がれるのが順当で

なるようになったと

いうことでございましょう」


と当然のように述べた。


考えれば、その通りなのだ。


なぜ公任はわざわざ道兼の

機嫌を取っていたのかと

反省するしかなかった。



摂政となった道隆の

初めての公卿会議が行われた。


御簾の向こうに帝が座る。


「蔵人頭、参れ!」


帝の声を受け現れた者の姿に

道長は目を見張った。


他の者達も同様に困惑する。


道隆はまだ17歳の息子、

伊周を一足飛びに蔵人頭に

任命した。


摂政となったとはいえ、

いきなりの息子贔屓に

道長も、そして実資も

怪訝な顔を向ける。



「お美しい」


「漢詩も和歌も笛も弓も

誰にも負けない腕前

なんですってよ」


「17歳で?」


「出来過ぎ〜」


容姿の美しさもあり、

若くして抜擢された

伊周は宮中の女たちの間でも

評判になっていた。


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とりあえず…のっけから

道長はダメダメである…


まひろと再会できた動揺で

可愛い娘が父上、と

言えたのにまったく

聞いておらず


「そうか、よかったな」


はひどすぎるし、

その後も急に庭に出て


「よい風だ」


などと言い始める。


怪しすぎて倫子でなくとも

不審に思うだろう。


まぁ、倫子はあまり

追及しないから救われては

いるのだけれど。



兼家が後継者に指名したのは

道隆であった。


順当とは言えるのだが、

道長のことは特別に

可愛がってきたようにも

思えただけに、

それでも嫡男に跡を託す、

というのはさすが

長幼の序を乱さぬ

冷静な選択ともいえる。


道兼は本来ならば

継ぐ立場ではないのに

勝手に期待を

膨らませていたのだが…


幼い頃から兼家はどこか

道兼に対しては使い捨てのように

見てきていたし…


ましてあの殺人のことを

知ってからは完全に道具として

利用してきた。


我が子なのに哀れ、

とも思うわけだが…


「穢れ」であったり呪い、

というものが本当にあるなら

こういうことではないだろうか、

とも感じる描かれ方だ。


道兼自身はまひろの母を

殺したことなどはもう

なかったことにしてきたのかも

しれない。


が、それはこうして確実に

道兼の将来を閉ざす

原因となってしまった。


一度穢れてしまった道兼は

真っさらにはなれない、

ということだ。


だからこそ兼家は、

道隆や道長には可能な限り

手を汚させぬようにと

気遣ってきたのだろう。


穢れの概念そのものは

迷信じみているのだが

当時は信じられていた。


現実的に表現するならば

恨まれることをすれば

己に返ってくるということであり、

だからこそ昔の人は

誰かの死や呪いを

恐れたのかもしれない。


こうした表現について、

このドラマは秀逸だと思う。



それにしても兼家が

道隆を後継者にしたのは

道長に語っていたように


「家のために政ができる者」


が道隆であるから、

ということでもあると思う。


その「家」というのは

道兼や道長も含めた


「藤原家」


なのではなく


「中関白家」


すなわち道隆の家族、

道隆が作り上げた家

を意味するのだが…


だがドラマでは描かれて

いないだけで、

過去には兼家自身もそれを

行ってきた身なのだ。


兄と争いながら


「兼家の家」


を守って築き上げたのが

今の立場だった。


だから兄弟といえども

道隆が上にたてば道隆は

道隆の家族をこそ優遇するし

道長にとっては将来、

それは立ちはだかる壁になる。


しかし兼家は道長の中に

熱い心があることも

よく知っていた。


今の時点での後継者は道隆…


が、やがては道長がそれを

超えるかもしれない、

という思いもどこかには

あったのかもしれない。


だからこそ道長には

遺言のように言葉を

しっかりと残している。



蜻蛉日記の一節を

諳んじた兼家はおそらく

寧子の書いたそれを

胸を痛めながら読んだ

青春時代があったのだろう。


老獪な兼家とて、

若い頃はきっと今の道長が

そうであるように

恋をしながら必死に生きた。


妾である寧子に

寂しい思いをさせている、

という気持ちは常に

どこかにあっただろうし

だからこそ寧子が書いた歌を

しっかりと覚えていた。


兼家なりの愛情がわかる

良いシーンだった。



明子が呪詛などせずとも

兼家は死んだのだろうし

そもそも呪いで死んだ、

とまでは言い切れない。


月が赤くなるのは

あくまで演出だろう。


綺麗な三日月を見て

微笑みすら浮かべていた兼家が

赤い月を見て険しい顔になるのは

まさに兼家の生涯そのもの…


人を蹴落としながら

歩んできたのだから

笑いながらは死ねない、

ということかと思う。


明子が流産してしまったのは

子もいるのにやめておけ、

という兄の忠告を無視して

無理して何時間も呪詛を

行っていたから、とも

解釈できる。


とはいえ呪詛して

兼家を殺すようなことを

してしまったから、

代償として子供を失った、

とも言えるだろう。


このあたりはどちらとも

捉えることができる。


先ほども述べたように

呪わば穴二つのように

オカルト的に

受け止めることもできれば

単に無理して呪詛など

行ったせいで体調を崩した…


つまり現実的に起こり得ること、

とも解釈できる描き方が上手い。



ともあれ、明子は

念願の兼家の死を成し遂げた、

とはいえるのだが…


兼家のことは憎んでいたが

道長を嫌っていたわけではない。


お腹の子は可愛かったはずだ。


それを失ったことは

明子にとっては、

辛いことだろう。


そんな明子に対しての

道長の優しい様子は

単なるダメ男ではない、

ということもわかって

少し安心ではある。



兼家の遺体も抱きしめていたし

子供を流した明子の肩も

優しく抱いている道長には

およそ「穢れ」というものに

対しての恐れがまったくない。


これは高御座の生首を

なかったことにしたときにも

感じられたことだ。


道長は直秀の死を経験して

死ぬことは決して

穢れることではないのだと

現実的に理解している、

ともいえるだろう。


死ぬ、ということは

悲しいし寂しいことではあるが

それは土に還るだけであり

それ以上でも以下でもない…


本質を見極める力がある、

と評されていた道長だけに

そうした答えにたどり着いていても

おかしなことではないと思う。


明子は…兼家を呪詛して

殺してしまった、などと

道長には伝えないとは思うが

仮に伝えたとしても、


「呪詛などは関係ない、

そなたがそれをしても

しなくても父上の命は

消える寸前だったのだ」


と答えるのが道長かな、

とは感じる。



さて、摂政を継いだ道隆は

いきなり自分の息子である

伊周を17歳で蔵人頭に任命した。


帝である一条天皇は、

妻の定子を気に入っているし

その定子の兄である

伊周を登用することは

自然ではあるだろうが、

当然これは摂政である

道隆の意向に相違ない。


道隆は若い頃から冷静で

若者たちの心を掴むように

根回しすらするタイプだったのに

ここにきて父、兼家顔負けの

剛腕をいきなり発揮した。


が、これこそが


「家を守る」


ための道隆の政であり、

兼家という星が落ちてもなお、

道隆という若い星となって

輝き始めた、といえるだろう。


まさに


「星落ちてなお」


というタイトル通りである…