光る君へ第11回あらすじ&感想前編 | NobunagAのブログ

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光る君へ

第11話「まどう心」前編



寛和二(986)年


「お帰りなさいませ」


トボトボと帰ってきた為時に

いとが声をかけた。


為時は返事もなく、

よろよろと歩きながら

縁側にへたり込んだ。


「父上…」


とまひろが駆け寄る。


「いかがされました?」


「終わりだ…」


為時は絶望な顔でつぶやく。


「若様!」


大学に通うために留守にしていた

惟規も噂を聞いて急いで

帰宅してきたのだった。


「帝がご退位されたって聞いたけど」


「えっ」


まひろが驚く。


「そうだ。

わしは式部丞の官を免ぜられ

蔵人の職も解かれた」


「何故、帝はにわかに

退位されたのですか?」


「分からぬ。

されど昨夜、何かが起きて

元慶寺でご出家。

右大臣様が新しい帝の

摂政になられた。

新しい帝は僅か7歳。

これからは摂政様の思いのままだ」


惟規が励まそうと


「式部丞には次の除目で

また任じられることも…」


声をかけるが為時は


「それはない。

兼家様はわしをお許しには

なるまい」


ときっぱり言った。


「この先の除目に望みは持てぬ」


為時は背中を向けた。


「それって…私はこれから

どうなるんです?」


父が帝の側近だったから

学に疎い惟規でもなんとか

大学でやっていけていたのだろう。


「父はもう何もしてやれぬ。

死ぬ気で学問に励め」


いとは声を失い、

惟規は情けない顔を浮かべる。


まひろも険しい顔で

寂しそうな父を

見守るしかなかった。




「まさかあの帝が出家

されるなんて…まだ19だぞ」


突然のこの騒ぎは道長の

友人たち若者の間で

噂になっていた。


亡き帝の妻忯子の兄である

斉信も驚きを隠せない。


「忯子様が亡くなられて

弱っておられたとは聞くが…」


と、公任。


「それでも若すぎるだろう、

世を捨てるには」


「まことに…」


行成も同意する。


「しかも真夜中に何をどうやったんだ」


公任は辺りを見回しながら

こっそり皆におしえた。


「あの日の明け方、

道長が帝が譲位されたことを

父に知らせるため

馬を駆って我が屋敷に参った」


公任の父が関白、頼忠である。


「俺は物陰から見ていただけだが

あの日の道長はいつになく

厳しい顔をしておった」


道長は仲間たちの中では

のんびり屋で当たり障りない

存在であったが…


「道長も一枚かんでるとなると

一家を挙げてのはかりごとだな。

やるもんだな〜」


と斉信は感心すらしている。


「褒めている場合か?」


公任がこれによって、

宮中での勢力図も変わることを

危惧する。


何事もなかったかのようにそこへ


「遅れたか?」


と道長が通りかかった。


「いや…」


「この前頼まれました

詩経を写してまいりました」


書の得意な行成が、

道長に詩経を渡す。


「おお、ありがたい」


道長は受け取った。


いつもと変わらない様子である。


斉信がからかうように


「それでどうやって

真夜中に帝を連れ出したのだ?」


と尋ねた。


「聞かない方がいいよ」


道長は関わらないほうがいい、

とばかりに答えた。


公任も察してか


「もう終わったことだ」


と止めた。


「席につきましょう」


と行成が促す。


「本日は王維について

論じたく存じます」


「承りました」


講義が始まるが…


行成はどこかいつもと

違う道長をまじまじと見た。


「ん?」


「お顔つきが…」


「顔がどうした?」


「いえ…」


まひろという女を知り…


帝の退位という離れ業を

やってのけた道長は

どこか大人びた顔になっていた。


本人はそれと知らずか

行成がくれた書を開くと

感心する。


「お〜。さすが見事な字だな」


「はあ…」




まひろは左大臣の娘である

倫子のもとを訪れている。


「まひろさん、どうなさったの?」


倫子はいつもと変わらぬ様子で

穏やかに尋ねた。


「突然、お伺いして

申し訳ございません」


「私は暇ですから

よろしいんですけど」


「今日はお願いがあって

参りました」


いつもと違うまひろの様子に

倫子も姿勢を正した。


「実はこの度のご退位により

式部丞の蔵人であった父が

官も職も失ってしまいました」


「まあ…」


倫子は気の毒そうにまひろを見る。


「父は裏表のない真面目な人柄で

学者としても右に出る者がいない

ほどの学識がございます。

必ずや新しい帝のお役にも

立てると思いますので

なんとか左大臣様に…」


まひろの願いを察すると


「それは難しいわ」


いつもとは違う厳しい声で

倫子は遮った。


「だってそれ、

摂政様がお決めになったこと

でしょう?」


「はい。ですから左大臣様に…」


「摂政様のご決断はすなわち

帝のご決断。

左大臣とて覆すことは

できません」


まひろは黙り込んだ。


「ごめんなさいね、

お力になれなくて」


「では摂政様に直接お目にかかって…」


まひろは諦めない。


「おやめなさい」


再び倫子は強く制した。


「摂政様はあなたが

お会いできるような方では

ありません」


冷たい言い方のようだが、

事実を突き付けることが

まひろのためだと思ったのだろう。


珍しく倫子の声は

厳しかった。




それでも諦めないのが

まひろである…


「為時の娘?」


兼家が平惟仲に聞き返す。


「ええ。お目にかかれるまで

帰らぬと申し裏門に居座って

おりますが、

やはり追い返しましょうか」


兼家はしばし考えた。



やがてまひろは、

兼家との面会を許された。



ここがあの人の家…


つい、まひろは道長のことを

考えてしまう。


今から会うのは摂政、

とはいえあの道長の父なのだ。



「面を上げよ」


まひろは顔を上げて

兼家を、見た。


「賢いと評判の高い為時の娘とは

そなたのことか」


兼家は意外にもまひろを

褒めながら面談に応じた。


「お目にかかれて

恐悦至極に存じます」


まひろは深く頭を下げる。


「わしに何の用だ?」


まひろは兼家を見据える。


「父のことでお願いに上がりました。

摂政様の御ために父は長年

お尽くし申してまいりました。

不器用で至らぬところも

あったやもしれませぬが

不得手な間者も精いっぱい

務めておりました。

何故、何もかも取り上げ

られねばならぬので

ございましょうか」


兼家は黙って聴いている。


「どうか父に官職を

お与えくださいませ。

どうか…どうか…

お願い申し上げ奉ります」


兼家は立ち上がると、

まひろの側に歩み寄った。


「その方は誤解しておるのう」


まひろは顔を上げる。


兼家はまひろを覗き込み

言い聞かせるように言った。


「わしのもとを去ったのは

そなたの父の方であるぞ」


事実である。


「存じております。

摂政様が長い間、

ご苦労であったと

仰せくださったと…」


「そこまでわかっておって

どの面下げてここに参った」


兼家の声に怒気がはらんだ。


「そなたの父はわしの命は

聞けぬとはっきり申した。

わしは去りたいと申す者を

止めはせぬ。

されど一たび背いた者に

情けをかけることもせぬ」


これが兼家が人生で

貫いてきた哲学なのだろう。


「わしの目の黒いうちに

そなたの父が官職を得ることはない」


まひろは兼家の迫力に

黙るしかなかった。


「下がれ」


兼家は出ていった。


まひろには何も出来なかった。



ちょうど道長が

家に帰ってきた。


「お帰りなさいませ」


「父上は?」


「ただいまお客人で

ございます」


道長が顔を上げると、

暗い顔で歩く

まひろが目に入った。


道長は思わず身を隠す…



「父上。

お客人とはどなたですか?」


あえてまひろの名は出さず尋ねた。


「虫けらが迷い込んだだけじゃ」


詳しく告げずに去る父…


虫けら、などと言うくらいだから

よほどの何かあったのだろう。


道長は心配そうに、

まひろが帰った方を見つめた。



肩を落として帰宅するまひろ。


「姫様のお戻りです」


「宣孝様がお見えでございます」


いとが出迎えた。


「父上は?」


「殿様は高倉に…」



高倉の女房は、

食べることもやっとの様子で

為時は必死に看病している…



まひろは兼家のことを

宣孝に話した。


「摂政様に会いに行ったのか。

お前すごいな」


宣孝は呆れつつも、

感心したように驚いている。


「すげなく追い返されました」


「会えただけでも途方もないことで

あるぞ」


倫子も会うことすら出来ない、

と言っていたのだから

会ってもらえただけでも

奇跡のようなことだ…


「ひと言慰めを言うぐらいの

つもりで来たわしに比べて

お前はまことに肝が据わって

おるのう。

摂政様にじか談判するとは…」


為時がまひろが男ならば、

言うだけのことはある。


「私に何かできればと

思いましたが…

下女たちにもいとまを出して

私もどこかで働こうかと」


宣孝はすぐに言った。


「婿を取れ。

有望な婿がおれば

何の心配もない」


それがこの時代の女の生き方の

ひとつでもあった。


「このようなありさまの家に

婿入りするお人ぞおります

でしょうか?」


「北の方にこだわらなければ

いくらでもおろう。

ほほう…そなたは博識であるし

話も面白い。

器量も…」


まひろがじっと見つめる。


「そう悪くない」


まひろはじっと見ている…


「誰でも喜んで妻にするであろう。

婿がおれば下女にいとまを

出すこともないし、

働きに出ずともよい。

為時殿は好きな書物でも

読んで暮らせばよい。

誰か心当たりはおらぬのか?」


「おりませぬ」


まさかじか談判に行った

兼家の息子、

道長と良い仲だとは言えない。


「それに私は妾になるのは…」


「わしにも幾人かの妾がおるし

身分の低い者もおるが、

どの女子も満遍なく

いつくしんでおる。

文句を言う者なぞおらぬぞ」


胸を張る宣孝を、

まひろは冷たい目で見る。


「男はそのくらいの度量は

皆、あるものだ」


まひろはまだ宣孝を見ていた。


「もっと男を信じろ、

まひろ。

身分の高い男より

富のある男がよいな。

若くてわしのような男は

おらぬかのう…」


ついには自分のことを

褒めだして笑う宣孝に、

まひろもつられて笑った。


「探してみるゆえ

心配するな」


まひろは首を横にふる。


「為時殿には会えなんだが

まひろとよい話ができた」


宣孝は昔から優しい。


「では帰るぞ、

ああ、ここでよい」


まひろが幼い頃から

宣孝はこうしていつも

何かあれば心配して

来てくれていた。


だが…


まひろはひそかに、

道長のことを想っている…



道長は弓の稽古をしているが…


(虫けらが迷い込んだだけじゃ)


父の言葉を思い出すと、

弓が乱れた。


珍しく的を外した道長に

百舌彦が驚く。


道長もつい、まひろを

思い出していた…



摂政となった兼家は

内裏の後宮内に

直廬という自らの

執務室を持った。


早速、臨時の除目を行った。



「一の座は摂政、

藤原兼家。

次いで太政大臣、

藤原頼忠。

左大臣、源雅信。

右大臣、藤原為光。

権大納言、藤原道隆。

参議、藤原道兼」



兼家は息子たちを露骨に

昇進させていった。


「来るご即位の日に向け

一同、大いに励むがよい」


筆頭に立つ兼家。


皆が平伏した。



幼い帝…懐仁はいまや

一条天皇と名乗っている。


帝はまだ子供らしく


「母上!」


と、詮子のところに

走り寄ってきた。


「お上、あなたはもう

帝でいらっしゃるのですよ。

走ったりしてはなりませぬ。

いつも悠然としておいでなさい」


「はい」


「お上はこれから

殿上人にも民にも敬われ

語り継がれるすばらしき

帝にならねばなりませぬ」


「はい」


「母が命を懸けてお支え

申しますゆえ、

お上もご覚悟をなさいませ」


「はい…」


帝の母である詮子は

国母となり皇太后の称号を

授与され兼家の亡き長女の

生んだ皇子で、

花山院と腹違いの弟の

居貞親王が東宮となった。



「あちらの若君方は

着々と偉くおなりのようで

ございますが、

道綱のことお忘れなきよう」


兼家は妾である

寧子のもとで酒を飲んでいる。


寧子はいつものごとく、

息子の道綱を売り込んでいた。


「忘れておったら

ここには来ぬわ」


「母上、俺も蔵人に

してもらってるから」


菓子を食いながら

道綱はいつものように

明るく言う。


「欲がないわね」


「高い位についても

役に立つ自信ないし」


道綱は笑った。


「男は座る地位で育つのです。

自信がないくらいの地位が

よいのです。

ねえ、殿様」


兼家は黙っている。


「母上、もうやめて」


あの夜の陰謀で、

道綱も上に昇るためには

危険が必要なことを

体感している。


「よいよい、毎度のことじゃ。

道綱、肩をもめ」


「はい!」


嬉しそうに立ち上がる道綱。


だが、そんなことは

大切な息子にさせる

仕事ではない、とばかりに


「肩なら私が。

どきなさい」


寧子は道綱を下がらせた。



夜が明ける…


僅か7歳の天皇が

即位する朝が来た。


一条天皇が準備を

進めている中、

花山院は数珠を持ち

よからぬ決意を固めていた…



天皇の即位式の時のみに

用いられる高御座を

確認しようと男が近づく。


道長は外庭で警固に

当たっていたが、

男の悲鳴を聴いて振り向いた。



「いかがした」


怯える男に尋ねる。


高御座の中に何かあるのか?


道長は近づいた。




その頃、花山院は

一心不乱に読経をしていた。


呪いをこめて。



道長は高御座の階段を

一歩一歩上がってみる。


「ん?」


そこにあったのは


「はっ!」


誰かの生首である。


さすがに道長も息を飲んだが…


布に包むと


「鴨川に捨ててまいれ」


と命じた。


「このこと、一切他言ならぬ。

外に伝われば命はないものと思え」


珍しく道長は、

そんな恐ろしいことを

口にした。


「立て。装束を始めよ」


高御座の前で固まっている

準備の者たちに命じる。


だが…


「もも…もはや

こ…ここは穢れております。

お許しを」


皆、怯えている。


道長は再び高御座に入った。


首が置かれていた場所を

己の袖で拭いとった。


「穢れてなぞおらぬ」


道長は淡々と言った。


あの日…道長は素手で穴を掘り、

直秀ら散楽の者達を

自ら埋葬した。


穢れ、の呪いなどは

道長に何の影響も

もたらしていないことに

気づいている。



首のことは知らされぬまま、

その高御座において

何事もなかったかのように

即位式は執り行われた。



花山院は呪いを込めて、

読経を続けていたが

数珠が散らばる。


「ああ…ああ…!」


失意の花山院は

播磨国書写山の圓教寺に

旅立っていった。



花山院の落とした数珠は、

なぜか偶然にも北斗七星を

床に形づくっていた。



夜。


兼家は道長と酒を

酌み交わしていた。


「高御座が死で穢れてしまったことが

知れ渡ればご即位の式は

取りやめになっていたであろう。

見事な機転であった、道長」


兼家は道長の判断を褒めた。


「誰の仕業か突き止めなくて

よろしいのですか?」


「誰の仕業かは分かっておる。

もうよい。

新しい帝は即位された。

それが全てだ」


兼家は空を見上げた。


道長も同じく夜空を仰ぎ見る。


星が瞬いている…



即位式の当日、

道長は五位の蔵人となった。


_____________________


出勤したら天皇が変わっていて、

いきなり自分はクビ!


これはさすがに為時は

気の毒すぎるだろう…


兼家一家のクーデターは

見事に成功したわけだが

現代ならとんでもないことだ。


為時やまひろを心配して

訪ねてきてくれる宣孝は

まだまだ気の良いおじさん、

といったポジションなのだが…


まさかまひろに婿取りを

勧めているこの宣孝が、

史実では将来の夫になるのだから

この先の展開はとても気になる。


年齢も離れているし、

お互いに異性として

意識しているような

様子もない…


まひろが幼い頃から、

宣孝は何人か妾を

持っていてまひろも


「今宵はどなたのところへ?」


なんて大人びたことを

聞いていたくらいの関係で、

この2人が恋愛に落ちる、

夫婦になるというのは

今の時点では想像すら

しづらいのだが…


ネットの考察だと、

道長の子を身ごもったまひろを

宣孝が事情を察して

自分の妻にする、

みたいなことも書かれており

確かに


「気の良いおじさん」


としてはそれはアリかも

しれない。


まひろの子供が、

道長の血を引いている

という設定になるのも

面白い発想だとは思う…


が、さすがにファンタジーが

過ぎるか?


というのもある。


もちろんフィクションなので

架空の設定が駄目なわけじゃないし

去年の望月千代が、

馬場信春の娘、というのは

ドラマの設定であったが

それはそれで盛り上がれる

要素にはなっていた。



兼家が摂政になったことで

内裏の順位が色々と

変わっているのだが

藤原頼忠は関白よりも

ひとつ下の太政大臣へ。


ただしこれは、

関白というのが帝を補佐する

という役割のため、

今回の帝は幼すぎるゆえに

祖父にあたる兼家が

摂政に就いているので

関白の座がなくなった、

ともいえるから単純な

降格とも言えないとは思う。


左大臣はこれまでと同じく

源雅信。


兼家は雅信の娘の倫子を

道長の妻にしたいので、

わざわざ源の力を削ぐ

必要もないので妥当だろう。


結局、頼忠、兼家、雅信は

3人いることでバランスを

保っているのかもしれない。


新しい右大臣は藤原為光。


為光は前の帝である

花山院に愛された忯子の父であり、

実は兼家の弟でもある。


この時代は弟といえど、

すでに自分の勢力を

築いているので、

ライバルにもあたるのだが…


道長の友人でもある

藤原斉信は為光の息子なので

彼らは従兄弟、ということだ。


大納言が道隆、

参議が道兼というのは

完全なる身内贔屓であり

それは周りもわかっているが

止めようもない、

ということだろう。


こうして兼家は内裏での

強大な権力を手に入れた。



さらにはオマケ的にだが、

妾の子である道綱も

蔵人にしてもらったし、

道長も高御座の穢れを

秘密裏に処理したことで

蔵人となった。


蔵人というのは宮中の

雑事から事務全般を行うのだが

そのトップである

蔵人頭は藤原実資が外され、

兼家になっているので…


道長は毎日、嫌いな兄貴の顔を

見ることになるのは

やりづらいかもしれないがw



道長が高御座に置かれた

首を淡々と処理できたのは

明らかに直秀の死の影響は

あるだろう。


この時代は現代とはまったく

違っていて、

死というものは「穢れ」

恐ろしいものとして

扱われていた。


「伝染する」ともされていたし、

事実、医療の発達していない時代

疫病にかかった遺体から

病が広まるようなことは

よくあったのだろうし

それが「呪い」のようなものとして

恐れられたのは、

当然かもしれない。


だが、そういう迷信的な意味での


「穢れ」


などというのものは、

ないのではないか?


と道長は割り切っている

感じがする。


これは未来人の感覚であり

当時はありえない!


という意見もわかるのだが

道長は昔から


「本質を捉える力に優れている」


と父に評されており、

兼家も高御座の首を

道長がなかったことにした件を

大いに褒めている。


大切なことは


「帝が即位する」


ということだけであって、

死の穢れ、などはなかったことに

すればいい、犯人もどうでもいい。


実に合理的であり、

兼家と道長はやはり似ている。


が、兼家は以前、

罪悪感に襲われて

寧子に忯子や先の帝に

呪われている、怖いと

泣きついていたから

道長ほどは強くはないの

かもしれない。


兼家は剛腕で道長とは

違うタイプに見えるが、

実際は若い頃は道長と

よく似ていたのでは?


とも感じる。


だからこそ道長のことは

格別に可愛がっているし

ぼーっとしがちでやる気も

あまり見せないのに、

道長のことを高く評価してきた。


生首を捨てさせて


「他言したら命はないものと思え」


と命じた時の道長は、

まるで兼家のようだったし

後の最高権力者になる男、

という迫力を感じさせるものがあり

こうした道長の二面性というか、

秘めている強さのようなものは

兼家譲りなのだと思わされる。



さて、まひろであるが…


とにかく倫子さまが


「あなたに会えるような

相手ではない」


と厳しく制するシーンが

予告で流れていたので

まさか道長をめぐっての

恋のバトルが勃発!?


そんな意地の悪い倫子さまは

あまり見たくない…と

心配していたのだが、

全然、違ってた…


父のことを摂政である兼家に

直訴しようとするまひろに

危険なことだからやめなさい、

と厳しく止めていただけ。


倫子さまのキャラは

今のところ非常に良い。


しかしそれでも凸るのは

主人公あるある、なので…


まひろは兼家に怒られて

撃沈となる。


が、これはさすがに

まひろよりも兼家のほうが

正しいような気もする…


ドライな考え方だとは思うが

一度裏切った人は、

また裏切る可能性がある。


兼家自身が自分の立場を

嫌なことでもなんでもして

必死に手に入れてきたのだから

自分がのし上がりたいなら

食らいつくべきなのだ。


が、優しい為時は

自ら下りてしまった。


つまり兼家が言う通り


「わしのもとを去ったのは

そなたの父のほう」


というのは事実なのだ。


もしも為時がお金にも困っていて、

将来、出世したいのならば

温情に流されずに

兼家についているべきだった。


が、為時はその機会を

自分から放棄した…


さすがにこの状況で

父をなんとかしてくれ、と

娘からお願いされても

何を言っているのだ!と

怒るのも無理はないだろう…



それにしてもさすがに


「虫けら」


は言い過ぎではあるだろうし、

道兼もまひろの母を

虫けら扱いしたことで

道長からぶん殴られているので

道長は兼家に対しても


「兄と同じ」


と感じたかもしれず、

そこだけは不用意な発言で

あったのかもしれない。


そもそもその虫けらみたいな女と、

自分が一番可愛がっている

息子の道長がデキてる、とは

誰も思わないだろう。


考えてみれば知らない

親父の立場も哀れではあるw