光る君へ第8回あらすじ&感想後編 | NobunagAのブログ

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光る君へ第8話

「招かれざる者」後編




目を覚まさない父の間で

道長は問いかける。


「父上は我々をどこに

導こうとしておられるのですか。

我らの行く先はどこなので

ございましょう」


兼家は目を閉じたままだ。


「生き延びてその答えを

教えてください」




侍女たちが兼家に

布団をかけると


「それでは寒かろう」


と道隆がさらに掛け物を

増やすよう指示している。


落ち着かない様子の道隆。


さすがの詮子も哀れを感じたか

大嫌いなはずの父の手を握った。



夜になり道兼も兼家の前に

座り手を取る。


すると…なんと驚くことに

兼家は目を見開いた。



翌日。


書庫の整理をしている

為時の前に


「ご苦労である」


と道兼が姿を現した。


道兼は為時にとっても

妻の仇…道兼自身は

それを知らないにしても

為時からすれば気まずい。


だが、状況が状況だ。


「右大臣様はいかがおわしますか」


と為時は尋ねた。


「時折、正気づくが

ほとんど眠っておる。

見通しは暗い。

為時殿には長い間、

父が世話になったことは

聞いておる」


「めっそうもないことに

ございます。

お世話になりましたのは

私の方でございます」


為時は頭を下げた。


「お手伝いいたす。

蔵人所の仕事は

今日は終わったゆえ」


道兼は優しげに言う。


「ならばご看病に帰られませ…」


「父は…私の顔を見ると

嫌がるゆえいいのだ」


と、道兼は意外なことを言った。


道兼は為時を手伝い始める。


腕を伸ばすと袖がめくれて

無数の痣が為時の目に入った。


「いかがされたのですか?」


「父にやられた」


「え?」


「昨夜もいっとき正気づいて

その時に…」


時折、正気づくが…


と言っていたのはそのことだ。


「小さい時からかわいがられた

覚えはない」


これは本当ではあったろう。


道隆や道長に比べて、

道兼への扱いはあまり

良くはなかった。


それだけに道兼の言葉には

悲壮感がある。


「いつも殴られたり

蹴られたりしておった」


そこまでが本当かは

わからないが…


「兄も弟もかわいがられて

おったのに…。

病に倒れ生死の境をさまよいつつ

私を嫌っておる」


為時は気の毒になる。


「おつらいことでありますね」


道兼は為時を見る。


「どこへ行っても

私は嫌われる。

蔵人の務めとして

帝のおそばに上がっても

右大臣の子というだけで

遠ざけられる」


あの花山天皇であるから

それくらいはするだろう。


「邪魔をした」


寂しそうに帰る道兼。


為時はその背中を見つめた。




夕刻。


いとが為時の帰りを

いまか、いまかと待ちわびている。


「お帰りなさいませ」


慌てた様子のいとに


「うん。いかがした」


と尋ねる為時。


「それが…」


「誰か来ておるのか?

顔が青いぞ」


いとの口から出たのは

驚くべき名前だ。


「藤原道兼様が…

お酒もお持ちになり

為時殿と飲みたいと

仰せになって」


都合の悪いことに、

まひろまで帰って来てしまう。


「お戻りでございます!」


「お前はいま少し外におれ。乙丸」


慌ててまひろを家に

入れないようにする為時。


が…


「為時殿」


為時の帰宅に気がついた

道兼が出てきてしまった。


「これは失礼をいたしました」


まひろに気付いた道兼は


「ご息女か?」


と尋ねる。


まひろは頭を上げたが…


気づいてしまった。


そこにいたのはあの、

ミチカネ…道兼だということに。


為時はまひろを見つめる。


道兼は当然、幼い頃の

まひろしか知らない。


まひろは慌てて部屋へと

走っていった。


母の遺してくれた

琵琶が目に入る。



道兼は上機嫌で飲んでいる。


「ああ…そうか。

息子は間もなく大学か。

大変じゃな」


「は…」


「為時殿の息子なら

聡明であろうから

心配は要らぬか」


まさか惟規があんな感じとは

誰もおもわない。


「いえいえ、それがさっぱり」


道兼がさらに為時に

酒を勧める。


「あ…私はもう…」


道兼は少し寂しそうに


「つまらぬな。

せっかく訪ねてまいったのに」


とつぶやく。


道兼からすれば、

まさか自分がこの男の

妻を殺してしまった

過去があるとまでは知らない。


正直な感想ではあった。


為時がふと顔をあげると

なぜかまひろがこちらに向かって

歩いてくるのが見えた。


まひろは母の琵琶を手に、

部屋までやってきた。


改めて頭を下げるまひろ。


「このようなことしか

できませぬが…

お耳汚しに…」


まひろは琵琶を弾き始めた。


母への想いをこめた

その音色は…


道兼の心を強く打っていた。


道兼は泣きそうな顔になりながら

その音に魅せられていた。


「はあ…見事ではないか。

体中に響き渡った。

琵琶は誰に習ったのだ?」


「母に習いました」


「母御はいかがされた?」


為時の顔が固まる。


「母は…」


まひろは口を開きながら、

道兼の刃が母を貫いた

瞬間を思い出す。


「7年前に身まかりました」


「それは気の毒であったな、

ご病気か?」


何も知らない道兼は、

尋ねる。


あなたに殺されました。


そう言いたいのをこらえ


「はい」


と、返事をするとまひろは


「失礼いたしました」


頭を下げて部屋を出た。


このとき初めてまひろも、

父がどんな思いで

母の死を隠したのかを

身をもって理解したことだろう…


もう少し話したかったのか道兼は


「麗しいが無愛想じゃな」


と苦笑する。


「申し訳ございません」


「おい、そなたもどうじゃ」


道兼は隠れて見ていた

いとにも声をかけた。


「お捨て置きくださいませ」


「楽しく飲もうと思うたが…ハハ、

真面目な家じゃ」


笑いながら酒をあおる道兼。


悪意はないのだ。


それどころかこの瞬間だけ

切り取れば普通の優しい

青年にすら見える。


為時は戸惑った。



まひろは道長のことを

思い出していた。


「一族の罪をわびる。

許してくれ」


「兄はそのようなことを

する人ではないと言わないの?」


「俺は…まひろの言うことを信じる」


実際に見た道兼は、

そこまでの悪人には

まひろにも、見えなかった。


それでもまひろを信じる、

と言った道長…



「よいか?」


と、為時がやってきた。


「はい」


「帰ったぞ」


「そうですか」


「すまなかった」


為時は娘に頭を下げた。


「なぜおわびなされるのですか?」


「よく辛抱してくれた」


「私は道兼を許すことはありません。

されどあの男に自分の気持ちを

振り回されるのはもう嫌なのです。

それだけにございます」


為時は黙って頷いた。



翌日。


内裏では道兼が

蔵人の仕事として、

花山天皇のもとを

訪れていたが…


「お前は右大臣の子ではないか。

近づくな」


「早う去れ」


帝も義懐もあからさまに

道兼を邪険に扱っている。


「は…」


だが、帝の側に仕えている

為時は道兼の境遇を

聞いてしまっている。


優しい為時には放っておく

ことはできなかった…


「恐れながら藤原道兼様は

右大臣様のお子ながら

右大臣様には疎まれておいでです」


「あいつは父とうまく

いっていないのか?」


「打ち据えられた傷さえあります」


帝は興味を覚え


「面白いのう、義懐、呼び戻せ」


と命じた。


「お上、それは…」


「よいから呼び戻せ」



改めて道兼は腕の痣を見せた。


確認するように帝が

顔をしかめながら痣を触る。


「う…」


と痛そうに道兼は顔をしかめた。


「病に倒れてもお前を殴るのか。

地獄に落ちるな、右大臣は」


帝は高らかに笑った。



兼家はいまだ眠っている。



まひろは月を眺めている。


同じ頃、道長も同じ月を見ていた。


が、そんな気持ちを

打ち壊すように


「上だ!」


という殺気立った声が響く。


「分かれたぞ!追え!」


盗賊が入ったのだ。


道長にはわかった。


直秀だ…


直秀はいち早く屋根へと

飛び移ろうとしていたが

何人かが捕まってしまう。


「助けろ〜」


という声に直秀は、

無視することはできなかった。


何人か打ち倒した直秀だが

多勢に無勢である。


「盗賊を取り押さえましてございます」


道長はよく知る男…


直秀の顔を確認する。


何をやっているのだ…


あれほど伝えたはずなのに…


お前を捕まえたくなんて

なかったのに…


道長は怒りともどかしさと、

悲しみに満ちた表情で

直秀を見下ろしていた。


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少女マンガチックな前半に比べて、

後半はいきなりのまひろvs道兼、

という恐ろしい展開であった。


道兼が非常に分かりづらいのは

おそらく腕の痣などは

さすがに兼家の仕込みであろうこと。


(それはそうだろう、

いくらなんでも昏睡状態の

兼家が夜中であっても起きて

道兼をビシバシ叩き出したら

他の誰かは気づくw)


が、兄や弟ばかりがかわいがられて…


という感情そのものは

決して嘘などではない。


だからこそその思いは、

正直であるがゆえに

為時の心に届いてしまうのだ。


おそらく道兼本人は

まさか自分が殺した相手が

為時の妻であり、

まひろの母だとまでは

知らないはずだ。


兼家は為時が優しいことは

よくわかっており、

為時は優しいからこそ

花山天皇に肩入れしてしまい

兼家から離れた。


そんな優しい為時をもう一度

利用するためには、

剛腕で強い自分などよりも

心の弱さを持っている息子、

道兼への同情を誘うほうが

効果的だと考えたのだろう。


一応、史実から考えると

このあと道兼は花山天皇の

お気に入りになっていき

帝が退位するきっかけとなる。


もちろんドラマのような

流れはフィクションなのだが

この兼家が倒れる、からの

一連の流れを全て兼家の

計略であったとするなら

兼家も恐ろしいのだが…


そんなストーリーを考えつく

大石静さんの頭が恐ろしいw


そこにまひろと道兼との

因縁まで織り込んでいるから

ますます目が離せないのだ。


すごいドラマとなっている。



まひろが道兼に対して

怒りをぶつけなかったのは

大人になった証拠でもあるし

ここ最近はずっと、

父への理解も深めていたが

改めてまひろは父がどんな

気持ちで道兼への怒りを

封じ込めたのかを

理解しただろう。



しかもその道兼という人が、

表面上ではあるにせよ

そこまでの悪人という感じの

人間ではない、

というところがまた非常に

難しいところだ。


道長は確かに道兼から

いつも暴力を振るわれていたから

道兼なら殺人もやりかねない、

とは理解してくれたものの…


道兼が心から悪人なのかどうか、

そこは今のところわからない。


もちろん殺人そのものが、

現代でも当時でも大罪なのだが

道兼がなぜそこまで、

若い頃から荒れていたのかは

まだわからない。


それほど虐待をされていた、

とは思えないのだがもしかしたら

本当なのかもしれないし、

少なくとも兄弟の中で一番、

父から目をかけてもらえなかった、

これは事実なのだろう。


道兼という人にもなんらかの

救いがあってほしい、

と俺などは思ってしまう。


それにはやはりまひろ、

そして道長から許されること、

が必要になるだろう。



最後に直秀が捕まって

しまったときの、

道長の顔も印象的であった。


道長は直秀のことなど

捕まえたくなかったからこそ

かなりわかりやすく、

俺は見破ってるぞと

伝えておいたのに。


が、直秀からしてみたら

都を去る前に一仕事、

というのは仲間との手前

仕方なかったのかもしれない。


それに権力に逆らうことが

彼の生き方だったから、

見破られようが挑む、

というのは仕方のないこと

だったのかもしれない。


この時代は「死刑」という

制度そのものはあったのだが

死の穢れを忌避して

実際には帝の恩赦により

島流し、くらいが

普通だったようだ。


いきなり死刑には

ならないだろうが、

はからずも「遠い国へ」

本来とは違う形で

流されていく、という

感じになるのか…


が、まひろの人生も

都だけでは終わらないから

いずれ再会もあるだろうし

もしかしたら刀伊の入寇あたりで

直秀がなんらかの活躍をする、

もあり得る。


オリジナルキャラなだけに

色々な将来はまだあるはずなので

あまり悲観的にならず

見守りたい。



それにしてもやはり、

道兼というキャラは、良い。


最初はなんて横暴で

ひどい兄貴だと思ったのだが…


もしかしたら父への怒りを

一番抱えているのは、

この道兼ではないだろうか?


まひろは道兼を許さない、

と言っていたものの…


そのまひろの弾く琵琶の音色に

涙が出そうなほどに

胸を打たれていた姿は

決して嘘ではないのだと思う。


本当は感受性も豊かで、

だからこそ自分の感情が

なかなか抑えられず

時にひどいこともしてしまう。


人間としてはとても未熟だが、

そこが人間らしいというか…


決して善人ではないが、

目が離せないキャラである。