どうする家康第41回あらすじ&感想後編 | NobunagAのブログ

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どうする家康

第41話「逆襲の三成」後編





六月十五日。


あの直江状を読んだ家康は

ついに決意を固めた。


「私が会津に向かいまする」


「相分かった、

求め通り黄金二万両、

兵糧二万石を授ける」


茶々の返事により、

秀頼から家康に討伐令が

くだされる。


「頼りにしておるぞ」


まだ幼い秀頼に


「ありがとうございまする」


と、家康は頭を下げた。




六月十七日、伏見城。


会津への遠征のため、

着々と準備が進んでいる。


「父上、お待ちしておりました」


次男、結城秀康が出迎える。


「秀康、そなたには大いに

働いてもらうぞ」


家康とお万の子、秀康。


秀吉の養子となり武将として

立派に育てあげてもらい

頼れる若武者になっている。


「お任せあれ」


家康は病のために

遠慮しているのか、

廊下に座っている

大谷吉継に気づいた。


「大谷刑部、参陣いたしました」


が、調子が良くないのか

槍を支えに立とうとする。


家康は気遣って


「よい、身体の具合は?」


と聞いてやった。


「お陰様で…内府殿、

私は出陣の折に

治部の三男坊を我が陣に

加えたく思いますが、

如何でございましょう」


大谷吉継はそう提案した。


「それは結構なこと、

わしはな、このいくさが

終わったら治部には

政務に戻ってほしいと

思うておる」


これも家康の本心だろう。


可能ならば…それができれば。


「それはようございます!

治部は日ノ本に欠かせぬ男、

その旨も治部に伝えまする!」


嬉しそうに立ち上がる吉継に


「頼む」


と、優しく家康は肩を叩いた。



「来たぞ、徳川勢だ!」


と、声がする。


続々と家臣たちが集結していた。


「あれは本多忠勝殿!」


周囲がざわめく。


平八郎の名はもはや各地に

轟いていた。


面頬をつけ漆黒の鎧に

身を包んだ平八郎は、

槍を突いてみせた。


「あれが蜻蛉切か!」


と、歓声が上がった。


止まった蜻蛉が真っ二つになった、

と逸話のある自慢の槍である。


続いて平八郎と同い年の

盟友でもある榊原康政、

小平太が入ってきた。


続いて井伊直政…


あの若かった虎松も、

今は立派な武人となって

井伊の赤鬼と恐れられている。


その恐ろしさとは裏腹に


「美しいのう」


との声も上がった。


次に鳥居元忠がやってくる。


四天王のような伝説は

持っていないとはいえ、

家康の幼なじみでもあり

長年、支えた功臣の一人だ。


最後に現れたのは


「ふう〜…」


「誰だ。ありゃ…」


「渡辺守綱様じゃあ!」


と叫んだ守綱は

槍を担ぐようにして

入ってくるのだった…。



久々に四天王はじめ、

多くの徳川家臣たちが

一堂に顔を合わせることになった。


「また、こうして

お前たちと戦場へ出る日が

来ようとはな」


「俺はこの時をずっと

待っておりました」


と、平八郎が答える。


「我らの殿がついに

天下を取るときがきましたな」


小平太もそう述べた。


五大老の一人、

上杉景勝を討てばもはや

ほとんどの大名は家康に

ひれ伏すはずだ。


直政も意気込んでいる。


「最後の大暴れといきましょう!

…彦殿、守綱殿…まだ動けますかの?」


四天王の彼らに比べ、

古くからの家臣は

家康同様にもう、

当時としては老境の域…


「ちょ、当たり前じゃ!」


「暴れたくてうずうずしとったわ!」


二人は笑っている。


「我ら徳川勢が集まったときの強さ、

見せてやりましょうぞ」


直政が声をかけると、

二人は「おう!」と答えた。


相変わらず仲の良さそうな

家臣達の様子に家康も

笑顔になるが、

家康にはひとつの懸念がある。


「彦…!」


と声をかける。


「はっ、なんでございましょう?」




家康は彦、鳥居元忠を一人、

別室に招いた。


「どうじゃ?あれとは

うまくやっとるのか?」


「あれ?」


「千代よ」


「あぁ…」


千代。


武田家臣、馬場信春の娘にして

若い頃から家康は千代に

惑わされ…


そしてその千代は、

瀬名にも接近は図ったが

その瀬名の思いに共鳴し

勝頼を見限ったのだが、

その後は武田の残党狩りに

追われ鳥居元忠に匿われた。


二人はいつしか恋仲になり、

家康は千代と元忠が

夫婦になるのを許した。


「怖いじゃろ?」


と、家康はからかう。


忍びでもあった千代は、

並の男ではかなわない。


「なぁに、しょせんはおなご、

言うことを聞かんかったら

バシッとひっぱたきゃ

言うことを聞きます」


と、昔の三河武士らしく

男らしく言う元忠だが…


「お前がひっぱたかれとるの

ではないか」


「…いや、わしが

ひっぱたいとるんでござる」


「どうかな…」


二人は笑った。


「で、話とは?」


「彦…。

この伏見、お主に任せたい」


家康は本題に入った。


「上方を留守にすれば

兵を挙げるものがおるかもしれん」


家康の懸念は元忠にもわかる。


「石田治部殿か…」


大谷吉継は石田三成の

三男坊を連れてくる、と

言っていた。


嘘ではあるまい。


家康とて何かをきっかけに

三成を政務に戻してやりたいとは

思っている。


が。


三成はそれをよしとしないだろう。


彼が立つならばこの瞬間だ。


「いや〜…無謀でござろう…」


元忠は答える。


常識的に考えれば、そうだ。


「治部は損得では動かぬ。

己の信念によって生きている。

負けるとわかっていても

立つかもしれぬ。

信念は人の心を動かすもの…

わしを恨む者たちが、

加わらんとも限らぬ…」


家康は自分が留守にすることの

危険性は充分、承知していた。


「万が一の折、要となるのは

この伏見…

留守を任せれるのは

最も信用できる者…」


家康は元忠を見つめる。


「逃げることは許されぬ…

必ず、必ず守り通せ!」


元忠は息を吐くと笑った。


「殿のお留守、つつしんで

お預かりいたします」


「すまん…」


家康は詫びた。


この留守の守りはいつも以上に

危険性が高い。


家康自身が三成をそこまで

追い詰めてきたのだし、

周りの反感を買うようなことは

やってきたことをよく

わかっている。


秀吉から天下を譲られた、

それを知っているのは

家康と、もうこの世にいない

秀吉だけなのだ。


この時期に京を留守にすれば、

高い確率で三成やそれに

従う者達が挙兵をする。


これを抑えることが、

元忠に課せられた任務であり

それこそ逃げることは許されない。


せめて、と家康は言いかけた。


「兵はそなたが望むぶんだけ…」


「いやあ、三千もいりゃあ

充分で!」


「少なすぎる」


家康は即答した。


元忠に死んでほしいわけ

ではないのだ。


「万が一…」


「一人でも多く連れて行きなされ」


上杉景勝討伐のほうが、

大変な大いくさになるはずだと

元忠は考えている。


なにせ120万石の大名、

家康と同じ大老である。


それこそ天下分け目の

合戦になるはずだろう。


元忠は笑った。


「なあに、伏見は秀吉が

こさえた堅牢な城、

そうたやすくは落ちはしませんわい!

…殿、わしゃ挙兵してえ奴は

すりゃあええと思うとります。

殿を困らせる奴はこのわしが

みんなねじ伏せてやります。

まぁ、わしは平八郎や

直政のように腕が立つわけでもねえし

小平太や正信のように

知恵が働くわけでもねえ」


そう、言いながらも元忠には

誇りがある。


「だが、殿への忠義の心は

誰にも負けん。

殿のためならこんな命、

いつでも投げ捨てますわ!

上方は徳川一の忠臣、

この鳥居元忠がお守りします」


これが元忠の信念だった。


家康はその言葉に

じっと聴き入っている。


「あ〜…」


元忠は鼻をすすり始めた。


「ふう、殿にお仕えして

五十年…あの泣き虫の殿が…

よくぞここまで…」


感涙に咽ぶ元忠。


これでは今生の別れのようではないか…

家康は


「やめよ」


と止めた。


「そうですな」


元忠はそう言いつつ、

涙があふれる。


「わあ、めそめそすると

また千代にひっぱたかれる…」


「…やっぱり

ひっぱたかれとるんではないか」


二人は笑いあった。


「殿…宿願を遂げるときで

ございますぞ」


信長を討とうとして諦めたとき…


秀吉への臣従を決意したとき。


家康だけでなく、

家臣達も一度ではなく二度も、

その願いを諦めたのだ。


その機会がこうして、

また巡ってきている。


「いくさなき世を、

成し遂げてくださいませ」


元忠は瀬名の死にも、

立ち会っていたのだ。


あのとき成せなかった願いを、いま。


「彦…頼んだぞ」


家康は頼れる男に、

後悔なく後を託した。


彦なら守りきれるはず…


この強い信念の男ならば

治部の信念には負けないはず…。


だが、家康が思っていたよりも

より大きな炎が降りかかることを

このときの家康にはまだ、

読み切れていなかった…。



三成は佐和山の城で、

一人悩んでいた。



「私と家康殿は…

違う星を見ていたようで

ございますゆえ」


そう言いながらも目を閉じて

いつか、

二人で星を見ていた夜を

思い出す。


嶋左近がやってきた。


「殿…」


三成は、目を見開いた。



己が甲冑を見つめる。


いくさなき世には

必要なかったはずの、それを。



慶長五年六月十八日。


伏見を発した家康の

会津遠征軍は七月二日に

江戸城に入り、

息子である徳川秀忠、

東国に残っていた平岩親吉らの

軍勢と合流した。


二十一日、ついに会津に向け、

進軍を開始した。


その間に恐るべき事態が

進行しているとは知らず…



大谷吉継は家康との

約束通りに石田三成の

三男を迎えに来ていた。


「用意はできたか、三男坊」


茶を飲みながら足音に

声をかける。


が、そこに立っていたのは


「大一大万大吉」


の陣羽織を着込んだ、

親友、石田三成の姿だった。


「治部!?」


吉継はすぐに察した。


「やめておけ!!」


家康は三成がわかってくれれば、

本気で政務に戻してやろうと

考えているのだ。


勝ち目のないいくさを

挑むべきではない。


この吉継の判断は、

間違っていないはずなのだ。


だが、三成は首を横に振る。


「今しかない」


家康がこれだけの規模で

兵を引き連れて京、大坂を

留守にしてくれることは

もう二度とないだろう。


が、吉継はそれでも

友を止める。


「無理だ!

内府殿はお主を買っておる!

共にやりたいと申された!」


嘘ではないはずなのだ、それも…。


「徳川殿のことは

当代一の優れた大将だと

思うておる!」


三成はそう答えた。


それも嘘ではないのだ。


家康の実力など理解している。


「だが、信じてはおらん!

殿下の置目を次々と破り

北政所様を追い出して

西の丸を乗っ取り…

抗うものはとことん潰して

政を思いのままにしておる!」


三成は感情的だ。


吉継は家康を庇った。


「天下を鎮めるためであろう!」


「いや!全ては天下簒奪のためなり!

野放しにすればいずれ豊臣家が

滅ぼされるに相違ない!

それでいいのか!?」


と、三成は吉継に詰め寄った。


二人共に秀吉からその才を買われ、

若い頃から共に秀吉のもとで

武将として育ててもらったのだ。


「家康を取り除けば、

殿下のご遺言通りの政を成せる。

今度こそ、我が志をなしてみせる…」


三成は吉継の肩を掴んだ。


「刑部…!!

正しき道に戻そう!!」


それでも吉継は、

現実を見据えている。


「…我らだけの手勢で…

何が出来る?」


冷静になれ、とばかりに諭す。


「奉行衆と大老たちを

こちらにつければ…勝てる!」


それが難しいのではないか…


なぜ、そこまで断言できるのか…


吉継は訝しむ。


左近が刀を抜くと、

床にそれを突き刺し、

板を抜いた。


中に納められていたのは…


大量の金である。


「…!どこから出た…!」


わかるだろう?


とばかりに三成は答えない。


「まさか…大坂…!?」


ということは、

吉継が思っている以上に

事態は深刻であり、

そしてこの生真面目で

真っ直ぐな友は、

その思いを大坂の茶々に

利用されているのではないか…


三成は吉継が飲みかけの茶を

手に取った。


「あ…!」


自分が病であることを

気にしている吉継は、

三成の行動に驚く。


そんなことをして、

感染でもしたら…


が、三成は構わずそれを

一気に飲み干す。


「うつして治る病なら…

私にうつせ!!」


これが三成の友情でもあり、

吉継への信頼でもあり…


たとえ天下を取ったとて、

自分は病で死んでもかまわない、

己のために家康を討つのではない、

という覚悟を物語っていた…。


吉継はそれ以上、

彼を止めることは出来なかった。




七月十七日。


家康の知らぬところで

大坂には毛利の軍勢まで

集まってきている。



大坂城の留守を預かる

阿茶局がすぐに対応する。


「どこの軍勢か?」


さすがに武田家の流れを汲む

阿茶は落ち着き払っている。


「毛利殿の手勢と思われます」


「宇喜多殿、小西殿の手勢も

こちらに向かっておると…」


さすがにその報告に、

阿茶の足は止まる。


家康が想定していたのは、

せいぜい石田三成と、

その周辺程度のはず。


「毛利に宇喜多、小西…?

女房衆を出来るだけ逃がせ…急げ!」


しかし、敵の手は早かった。


もうすでに大坂城内は

抑えられていたのだ。


数人の武装した兵が

辺りを囲む。


阿茶は懐剣を引き抜き、

近臣たちも刀を抜いた。


しかし…余りにも多勢に無勢である…。




この状況にはさすがに

伏見の元忠も焦りを感じていた。


「毛利の軍勢が大坂に入った!?

どういうことじゃ!」


毛利家といえば、

いま家康が対陣しようと

している上杉家と同様に、

大老を務める大名家だ。


この動きはさすがに

通常の謀反というような

規模ではない。


「他にもいくつもの大名家の軍勢が

大坂へ集まっている様子。

恐ろしいことが起きておりますぞ…!」


と、妻となっている千代が

届けられた報告の書状を

元忠に渡した。


「仔細を集めよ、いくさの用意をせい!」


元忠は命じる。


「急げ!!」


と、千代は兵らに号令した。


さすがにあの信玄、勝頼を

陰で支えていた女忍びだけあり

城主となっている元忠が落ち着いて

思案できるように振る舞っている。


元忠はもう一度書状を見ると、

苦い表情になる。


三成らの軍勢ならば、

伏見は守りきれると

約束をした…しかし、

この規模の軍勢は…。



大坂城には諸将を引き連れるように

石田三成が茶々、秀頼に

拝謁している。


「無用のいくさを起こし

天下を簒奪せんがための

不行状の数々、

許し難し」


「これ以上見逃すことは

許せませぬゆえ

我ら一同、決意した次第」


徳善院玄以も、

三成に続いて述べた。


大老、奉行のほとんどが

三成に味方している。


増田長盛が続けた。


「諸国の大名、武将、

ことごとく我らのもとに

集うものと存じまする!」


長束長家が


「総大将は毛利輝元殿に

務めていただきまする」


と告げる。


「この毛利輝元、

秀頼様の世を安泰なものとするため

徳川家康を打ち払う所存でございます」


毛利輝元が自信を持って述べると

茶々はほくそ笑んだ。


同じ大老である宇喜多秀家も


「我ら一丸となれば

太閤殿下へのご恩を忘れた

不忠義者、敵ではございませぬ!」


と、堂々と述べる。


三成との友情のため、

やむなく参加した大谷吉継は

じっとそれを聴いていた。


「杯を!」


と茶々が命じる。


「逆賊、徳川家康を成敗致す!」


三成が声をあげると

皆が「おう!」と答えて

盃を飲み干すとそれを

叩き割った。


これはもう二度と、

同じ酒を飲まないという

覚悟の儀式である。


最後に茶々もそれを口に運ぶと、

家康への怒りをぶつけるように

床に叩きつけた。



下野小山の家康本陣は

大きな混乱に見舞われている。


「福島殿の元に届けよ、急げ!」


小平太が号令する声が聴こえる中、

秀忠が慌てて家康本陣へと

駆けつけた。


「何事でございます?父上…」


「早馬がこれを…」


と、平岩親吉が書状を渡す。


秀忠は顔色を変えた。


「三成が兵を挙げた…

なんと無謀なことを!」


しかし小平太はさらに

最悪の知らせを伝える。


「殿、三成だけでは

ござらぬようで…

大老の毛利輝元も…」


「えっ…」


秀忠は言葉を失う。


「となると宇喜多秀家も…

それどころかすでに多くの大名を…

引き入れとるじゃろうな」


本多正信が現実を見据える。


「わしは逆臣に仕立てられたか…」


家康は事態を把握した。


ここまでやるとは…


「そもそも上杉と謀っとったの

かもしれん…

我らは罠にはまったんじゃ

ないのか…!」


平八郎が疑念を口にする。


「いや…ついこないだまで

このような動きは認められなかったが…

わずかひと月足らずの間に

何かが起きた…」


直政が考えこむ。


「大坂の阿茶様…

伏見の彦殿はどうなる…?」


当然の心配を平岩親吉が

口にする。


誰もが答えられない…

答えはわかっているからだ…。


「父上!」


と、秀康もやってきた。


「大坂より書状でございます」


家康は手に取る。


「…茶々様からじゃ…

治部が勝手なことをして

怖くてたまらないから…」


家康はニヤリとする…


「なんとかしてほしい、と…

ハハハハハ…!!」


家康はなぜか笑い出した。


「とんでもない大いくさに、

なっちまいそうですな」


正信がここまでされたか、と

呆れたように言う。


「ハハハハ…ッ!」


家康は一人で笑っている。


こんな殿は見たことがない。


ただただ、狂ったように

乾いた笑いを続ける家康を

秀忠も家臣達も、

恐ろしそうに見た…。



三成はまず、狙いを定めるように

伏見に駒を置く。



家康は笑いを止めると、

宙を睨んだ。


その先にあるものは、

石田三成…ではなく、

おそらく茶々の顔であろう。



関ヶ原開戦まで、

あと五十三日…。




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家康が鳥居元忠、彦に

伏見城の守りを任せたのは

史実通りの流れである。


が、これまでの作品では

鳥居元忠に対していわゆる


「捨て石になってくれ」


というニュアンスで残していく、

場面として描かれることが

多かった。


それも感動的ではあるのだが、

本作はそこまで明確に


「ここを死に場所にしてくれ」


という感じではなく、

家康が想定していたのは

おそらくは石田三成と、

それに味方しうる奉行衆が

数人程度だったのかもしれない。


となるとおそらくは、

1万人程度の軍勢か?


3000は厳しいけれども

通常、城攻めは3倍以上の

軍勢が必要になる。


なので彦が粘ってくれれば

その数でも退けられるだろう。


家康が可能ならば、

三成とはもう一度やり直したいと

考えていたのも

大谷吉継とのやりとりを見ると

決して嘘とも言えない。


つまり三成は立つ確率は

高いものの、

何も動かない可能性もある。


そういう中での伏見の守りを

彦に託しただけであって、

死んでくれという意味ではない、

というのはこのドラマの

家康らしい采配だろう。


実際のところ、

本作では刑部も必死に

止めていたように

三成が動けたのは

大坂の後ろ盾があったから…


それさえなければ、

三成も勝算は立てられなかったはず。


このあたりは本作は

あくまで茶々がラスボスなので

言うなれば三成は、

その真っ直ぐさを茶々に

利用されてしまったようなもので、

家康の怒りは決して

三成に向かうわけではなく…


むしろ、三成の性格上は

勝てないとわかっていても

立ち上がるかもしれない、

それに対して自分の代わりに

最も信頼する彦が、

それを受け止めてやってくれ、

くらいのことだったのだとしたら

あまりにもこの流れは、

三成にとっても、家康にとっても

残酷である。


そして、間に挟まれてしまった

大谷吉継も。


この大谷刑部は本当に

かっこいいので史実でも

とても人気があるのだが、

本作においても今回の

振る舞いで非常に

人気が出たと思う。


三成のことを本気で

心配しているからこそ、

なんとか家康との仲を

戻してやろうとしているし、

三成の決起を止めようとしている。


が、大坂の後ろ盾を得た

三成はそれを聞かないし、

事実、三成につく者達は

非常に多かったのだから

勝てる可能性はあった。


そんな三成は病のことを

いつも気にしていた刑部が、

飲みかけだったお茶を

一気に飲み干してやる。


このエピソードはもともと、

皆で茶会をしていたときに

ハンセン病で顔が膿んでいた

刑部の顔から落ちた膿が、

お茶の中に入ってしまい

皆が気味悪がってしまった…


それを見た三成は、

親友である彼を励ますために

率先してそのお茶を飲んだ、

という話からきている。


こういうところを見ると、

三成もまた本当に、

好きな相手に対してはとても

優しいところがあるのだが…


本作はその話をこうして、

うまくここに持ってきた。


通説で語られていることを

どうやって活かすのか、

これがドラマの面白さである。


三成からしてみれば、

うつして治るならうつせ、

と思っている。


まだ医学が現代のように

発達してはいないから、

病気はうつせば治るもの、

と考えていても無理はない。


自分に病がうつってくれれば

それでいいのだ、と。


自分は家康さえ倒せば、

病で死んでもいい、

そのあとは病が治った刑部が

うまくやってくれ、ということ。


さすがにここまで厚い友情を

見せられると、

優しい刑部からすれば

もう断れないだろう。


それにしても、

本当に今回の刑部はもっとも

可哀想な立場に置かれて

しまっていると思う…。


三成はやりたくてやるのだから

ある意味では仕方ないのだが、

刑部は家康のことも、

三成のことも考えているから

それを止めているのに…。



こうなってしまったのは、

少なくとも本作においては

茶々のせいである。


こういう状況下に置きながらも

しれーっと


「三成が勝手なことして

怖いから早く助けてくださーい♪」


という手紙を家康に送ってくる…


あの乾いた笑いを家康が

上げ続けるシーンは

圧巻のひとこと。


これまで家康が怒るときは、

子供みたいにわめいたり

あるいは信長への怒りを

溜め込んでいたときのように

むっつりと黙り込んでいた…


今回のようにひたすら

笑い続ける、というのは

家臣達も見たことがないし

我々、視聴者からみても

あの怒り方は恐ろしいくらいだった。


茶々のあの手紙は

かつて家康が市のことを

助けに行かなかったことへの

あてつけである…


「あれあれ?今回も助けて

くれないなんてことは

ないですよね?

母上そっくりの私が

困ってるんだから!」


ということ。


でも、家康があそこまで

笑うほど怒り、そして

呆れてもいるのは

そういう個人的な復讐のため

石田三成という、

自分が認めていた男すらも

利用してきたことだろう。


家康はあくまでも、

三成が決起することには

怒ってなどいないだろう。


そもそも三成には合議制でやれ、

そして自分には天下を取れ、

などと秀吉が二枚舌のような

ことをやってくれたから

こうなっただけである。


三成はその被害者ともいえるし、

そんな三成の怒りを受け止めてやる、

それが男にとして、

天下人になる者としての

家康の責任だったはず。


「嫌われなされ」


ということだ。


だが、その裏に茶々の陰謀が

潜んでいるというのは

もう笑うしかないだろう…


全てのことに水を差された、

そういうことだろう。



さて、関ヶ原の合戦そのものが


「上杉(というか直江兼続)

と石田三成による

最初からの陰謀」


というストーリーの作品も

多いのだが、

本作はそこは否定している。


平八郎が


「最初から仕組まれていたのでは?」


と疑問を口にしていたが、


「その動きはなかった、

このひと月の間に何かがあった」


と、直政が言っている。


その


「何か」


というのが大坂の暗躍、

ということ。


関ヶ原の原因というのは

色々言われてもいるが、

その作品ごとに特色があって

良いと思う。


ただし、少なくとも

三成の動きに対して

玄以、長束、増田らの

奉行クラスどころか

毛利輝元や宇喜多秀家が

加勢していて、

家康がピンチだったのは

確かだろう。


そもそも上杉景勝という、

大老の一人との対決に出向いており

前田家は徳川に屈していると

いっても、

他の大老が全員敵になるのだから…


ただし婚姻を結んでいる

加藤清正、福島正則、

黒田長政といった

豊臣家の中でも武勇に

優れた者達が家康遠征軍に

参加しているのは、

幸いだったろう。



非常に面白くなってきた。


関ヶ原の流れそのものは

ある程度把握していても、

やはり本作らしい

描き方が随所にあって

目が離せない。


さしあたって来週は…


おそらく彦の最期なのだが…


千代は生き残ってほしいなぁ。


でも、普通のおなごとして

生きると決めた以上は

最後は夫と最後を共にするのも

ひとつの幸せだろうか…


おそらくはかなりの敵兵は

討ってくれると思うのだが…。