「これって、ヒマラヤの水晶なんですけど、わかりますか?」
ラウンドビーズの水晶と思われるブレスレットを見せて、ある人がこう聞いてきました。
「すいません、わかりません・・・」
するとその人は
「なんでわからないんですか?ヒマラヤの水晶というのは、加工の技術がそこまで伴ってないから、まん丸のビーズじゃないんです。だからヒマラヤの水晶なんです!」
「はあ・・・・(・・;)」
その人は、前日にも御来店くださった方でした。
ある特価のブレスレットを買おうか悩んでいました。
簡単に石の意味を説明すると、そのブレスレットを買う意思を固めたらしく、私にこう切り出しました。
「このブレスレットを買ったら、この石、つけてくれますよね?」
「は・・・?( ゚ ▽ ゚ ;)」
そこにあったのは、ルチルクォーツのタンブル。
決してこれといって質の高いものではないけれど、確かに濁りはあるけれど、ルチルクォーツとしては人気のあるものです。
「すいません、つけることはできないです。これも売り物なので・・・」
そう答えると、その人はこう返してきました。
「でもこれは穴も空いてないし、使い方もわからないでしょ?そんなのつけてくれたっていいじゃないですか!」
「・・・・・」
なんだかよくわからない返しに、戸惑ってしまいます。
「じゃあこれ、どうやって使うんですか?使い方もわからないもの、売り物だと言えるんですか?」
タンブルなんて、使い方は人それぞれ。
どう使おうが、使わなかろうが、売りものであることに変わりはありません。
残りが1個だけだったのが、そう思わせる原因だったのでしょうか。
「すいません、それでもこの石は、お金を出して仕入れてきたものです。申し訳ありませんが、ただで譲るわけにはいきません」
結局その人は、何も買わずにお帰りになりました。
正直な話をすると、このタンブル、大した金額ではありません。
いくらルチルクォーツだといっても、これといって質がいいわけでもないし、小さいし。
ラスト1個だったこともあり、いつもお買い上げ下さる常連さんや、まとめてお買い上げいただいた方には、おまけで付けてあげることくらい、私たちだったら、比較的よくすることです。
ただ、残念なことにその方は、初めてのご来店な上に、購入予定の商品も、特価品のブレスレットでした。
それにおまけにタンブルをつけたら、こちらが赤字になってしまいます。
これで生計を立てている以上、そういうことはできません。
そこに腹を立てたのでしょうか?
翌日、朝一番に、ご来店されたのでした。
さてさて、ラウンドに加工されたヒマラヤ産の水晶ビーズ。
まん丸に加工されずに少々いびつな形になるのは、確かにある意味、ヒマラヤの特徴でもあります。
ヒマラヤ山脈というのは、中国とインドやネパールとの国境沿いにあります。
大変高い山脈で、毎年多くの死者が出るとかでないとか。
そこで産出される水晶は、その近辺の工場で加工されることが多いのですが、日本など先進国の加工とは違い、まだまだ技術が伴わず、凸凹した形状になることは、珍しくありません。
石を好きな方の間では、それがヒマラヤ産らしいと評判で、決して美しいとは言い難い形状のビーズを、皆さん喜んでくださいます。
でも、だからといって、いびつな形状の水晶を「ヒマラヤ産」だと特定するには、あまりにも根拠が少なすぎます。
この「いびつ」な形状になった理由は、あくまでも「工場での加工の稚拙さ」。
それが何処産のなんの石であれ、その工場で加工されればそうなります。
それを、イコールヒマラヤ水晶だとするのは、あまりにも軽率すぎるのです。
とはいえ、購入したお店が「ヒマラヤ産」というのであれば、おそらくヒマラヤ産の水晶なのでしょう。
ただ、残念なことに、私にはそれを特定する根拠も証明するものも、なにもないのです。
水晶を鑑別機関に出すという方法もあります。
しかし、残念ながら、それは産地を特定するには至りません。
鑑別は、あくまでも「水晶か水晶じゃないか」。
天然か人工かということはわかりますが、産地がどこかまではさすがにわからないものです。
「申し訳ありませんが、私にはそれがヒマラヤ水晶であると断言することはできませんし、証明することもできません。
ただ、お買い上げになったお店が、信用に値するお店であるのなら、それでいいのではないですか?
お店側も、仕入れルートを確保した上でそう言うのでしょうから、おそらくヒマラヤ産だと思いますよ。」
それでもその方は、納得いかない様子。
いったい私に、どうしろというのでしょうか。
たとえ原石の状態であったとしても、見るからにヒマラヤ産っぽかったとしても、鑑別機関では産地は特定されません。
ということは当然、私ごときが証明出来るはずがありません。
お店側がヒマラヤ産だと特定する理由は、仕入れルートや仕入先が、信用に値するものであるか、自らがヒマラヤに出向いて仕入れてきたか。
そしてその仕入れの時に、ヒマラヤ産ならではのやり取りがあったりするのです。
ブラジル産などと比べても、決して美しいとは言い難いヒマラヤ産水晶。
形もいびつだし、透明度も低い。
中にはインクルージョンびっしりで、別の石にさえ見えてしまうものも。
そして、そういうモノに限って高いんですよ!!
同じヒマラヤ産でも、鉱山によって金額も違います。
比較的透明度が高く、ブラジル産とも引けをとらない水晶は、ヒマラヤ産の中では比較的安価だったり。
逆に、インクルージョンだらけの水晶は、パワーが強いと評判で、びっくりするくらいの高値がついたり。
と思ったら、ガネーシュ・ヒマール産(ヒマラヤの中でも最も標高の高い産地)の水晶で、透明度が高いのは珍しいからと、妙に高値がつくことも。
品質と金額を比較してみても、割高感は拭えません。
でもそれは単にヒマラヤ産だからと言われれば、納得。
山に登るのだって、大変なことなのです。
お客様に説明する際も、結局、ヒマラヤ産だということを隠しては、金額の理由を説明できなかったりするのです。
でも、だからといって、市場に流通してしまったら、産地の特定なんてできないに等しいのです。
だからこそ、信用できるお店で、信用できる店員さんに話を聞いて、購入するかどうか、ちゃんと自分で考えて決断をしないといけません。
そして、そこまで信用したものを、そのへんの石屋の店員(私とか?)に「ヒマラヤ産なんですけど、本当ですか?」なんて、聞いてはいけないのです。
仕入れルートを知らない私が、そんなこと、わかるわけないのですから。
前日の私とのやり取りに納得がいかず、ご来店されたのは、火を見るよりも明らかでした。
一応、これでも譲歩したつもりなんですが、結果的にはさらなる怒りを買ってしまったようでした。
ラウンドビーズに加工された「カミナリ水晶」を見せられたときは、さすがに勘弁してほしいと思ったものです。
(「なんでわからないんですか?」なんて聞かれなくて、ホッとしています。そんなん、わかるかっちゅーの!)
ところで私は、どう答えたら、その人の怒りを諌めることができたのでしょうか。
ヒマラヤ産だと分かってもわからなくても、怒りは静まりそうにありません。
ただ、落ち着いて冷静に対処したので、その人の怒りを取り込まないで済んだのかもしれません。
それがかえって怒りを増幅させたのかもしれませんが、仕方がありません。
せっかく石が好きで、石のパワーをもらえるはずなのに、間違った方向に使っているような気がしました。
もったいない。
でもそれを言うと、きっとまた怒らせてしまうのでしょうね。
どうしても、相容れない人というのは、存在するものです。
自分とは別の世界で生きている人だと思うことにして、気にしないことにしています。
怒りというのは、せっかくのいい気を悪い気に変換してしまいます。
百害あって一利なし。
デメリットこそあれ、なんのメリットも見いだせません。
怒らせてしまったことに関しては、申し訳なく思いますが、考え方の違う人間が話をすれば、遅かれ早かれ、こういう事態は起きるものだと思っています。
そこに巻き込まれないようにするのも、大事なことだと思っています。
ん~まあ、冷たいのかもしれませんけどね。