仙人の打つ蕎麦 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

不思議な場所へ行ってきた。

その名は、「水眠亭」。

川のほとりに眠るように建っていたから名付けられた。

 

宮大工の女将、市川千里さんから、「万華鏡を作る仙人の打つ蕎麦を食べに行きましょう」と誘いが来た。蕎麦好きのボクとしては、二つ返事で応じた。事前情報はそれだけ。

伊勢原駅で待ち合わせ、女将の運転する車で、仙人のいる場所に向かった。どこをどう通ったかは覚えていない。車で1時間ほど。緑濃い山中にその場所はあった。

失礼ながら、外観は、掘っ立て小屋。だが中に一歩足を踏み入れると

そこはワンダーランド。

 

主人の名は、山崎史朗さん。

1949年生まれ。長崎県西海市崎戸町出身。
万華鏡はおろか、ジュエリーデザイン、グラフィックデザイン、彫金
俳句、ウッドベース、蕎麦打ち、茶道、根付け…彼の世界は無限だ。、

もちろん、この家の内装や設えは、すべて彼の手作りだ。


30年前から、神奈川県丹沢山麓の清流(串川)沿いにある

およそ170年前、江戸末期の農家を改造して住んでいる。、
日本の伝統文化と西欧の文化を融合した空間を造り上げた。
「水眠亭」と名付けられたその場所で
彫金工房・ライブスペース、茶室、ギャラリー…
次々に自由空間を増殖させてきた。

サックスの坂田明さん、舞踊の田中泯さん、ピアノの谷川賢作さん…

ここにアーティストを招きライブも時折開いてきた。

ジャズのアナログレコードは5000枚収集。

亭内には、絶え間なく、ジャズの調べが心地よく流れる。

 

大きな窓の外には四季折々の川の風景が望める。

雨の日も風の日も、毎朝、彼は川原に出て瞑想している。
河鹿カエルが鳴き、カワセミが訪れ蛍が飛び交う清流を眺めながら。

 

そうして、目的の彼の打った蕎麦。

自家製のつゆを準備する。
無心に蕎麦を打つ。
釜茹でして冷水で締める。
水眠亭のうまい水は、石臼引きの蕎麦と程良く調和する。
うまいのなんの。

ボクの食べた蕎麦の中で、格別の1位に躍り出た。
 

天は、彼に「何物」も与えた。

器用な手先から、次から次に夢が具現化する。

自分のしたいことをしたいようにする人生を歩んできた。

史朗さんの詠んだ句で締めくくる。

水亭の夢ひとすぢのいのちかな

 

仙人 山崎史朗さん

外観は掘っ立て小屋

だが室内は別世界

史朗宗匠

万華鏡

自在鉤

パイプ

茶杓

自慢の蕎麦切り包丁 把手は鹿の角

鴨肉も絶品

若竹の素焼き

打ち立ての蕎麦

オールスターキャスト