やはり新郎は、オレンジだった。
過日、映画監督、古新舜さんの結婚披露宴に出席してきた。
同じテーブルの大久保寛司さんは、新郎新婦と旧知の仲で、
祝辞も述べていた。
その大久保さんが、「村上さんは、どういう関係で呼ばれたの?」
と聞いてきたが、ボクもよくわからない。
新郎と会うのは、きょうが3回目。1回目は名刺交換だけ。
2回目に食事をして、その席で披露宴に来てほしいと言われた。
2人とも感性で動くからとしか言いようがない。
この日も、新郎の感性がいかんなく発揮された披露宴だった。
新郎は「高砂」の席に落ち着いて座ってはいなかった。
会場を移動しながら、
サービス精神旺盛で、大いに気配りを発揮していた。
いかに、みんなを楽しませ、自分も楽しむかに全力をあげていた。
新郎は泣いたり笑ったり忙しい。要は、感動屋感激屋なのだ。
そんな新郎が好きで放っておけない仲間たちが集う場だった。
披露宴は、いきなり、即興演劇から始まった。
即興(インプロ)コメディは、長い歴史を持っている。
古代文明における初期のルーツから、人気のあるエンターテイメントの形への進化まで、即興(インプロ)は絶えず進化してきた。
古新さんは、即興コメディの監督もしている。
即興演劇や即興コメディの基本精神は、Yes, And。
「相手のアイデアを否定せず一旦まるっと受け入れて、アイデアで返す手法」だ。
ブレーン・ストーミングをはじめとするアイデア出しにおいて、より前向きで建設的な関係性を作るとともに、アイデアを広げたり、深めたりするのにとても有効な方法と言われる。
Yes Andを説明するには、その反対のYes Butについて考えると分かりやすい。Yes Butとは文字通り、肯定しているようで否定するやり方のことだ。
「日曜日、どこか行きませんか?」「いいですね。でも、給料日前だからちょっと」といった会話だ。日本企業のオフィスではほとんど、Yes Butが充満している。Yes Butの功罪は、自由闊達なアイデア発想を遮断してしまう。
一方、Yes Andはその逆だ。
「日曜日、どこか行きませんか?」「いいですね。では、給料日前なので、たった3000円でどれだけ充実の日曜日を過ごせるかに挑戦しませんか?」「いいですね。では、使うだけではなくて稼ぐことも挑戦しませんか?」「いいですね。では」と言った具合に、お互いのアイデアが重なりあい、時に発展していく。
Yes, And は、相手のアイデアや意見や感情を一度まるっと受け取り同調し、自分のアイデアや感情を一度脇に置いておき、相手にインスパイアされたアイデアや感情を付け加えて返すコミュニケーション手法。
Yes(肯定) は、仲間を受け入れ、チームへの貢献度を高める。
Yes は心理的安全性と言ってもいいかもしれない。
インプロの舞台上では、年齢、性別、能力、性格などに関係なく、プレイヤー全員が平等。
安心安全な空間を作り平等な場で、仲間やその言動を100%そのまま受け入れる。そこには、あらかじめ生じた評価や判断、失敗を非難されることはない。
And(付け足し、貢献)は、価値のある仕事やアイデアでチームに貢献するためにある。
And は、仲間の内なる能力を引き出すと言ってもいい。
それは、Yes だけで仲間に全てを押し付けることではなく、仲間の仕事を受け入れ、自らの貢献を積み重ね、仲間の前に現れる困難全てに対し一緒にサポートし、次のステージへと昇華させるものだ。
古新さん自身が、Yes, Andの人なのだ。
これから、新婦の希美(のぞみ)さんと、Yes, Andの精神で、
どんな物語を紡いでいくのだろうか。
新郎・古新舜さん 新婦・小島希美さん
シンガーソングライター 樋口了一さんの祝辞。
古新監督に口説かれ「いま、ダンズをするのは誰だ?」で主演。
大久保寛司さんの名スピーチ
即興演劇 来場者が思いつくままに書いたことばカードを
引き当てながら、そのことばを即興のセリフにしていく。
会場は、ニューオータニのトゥールダルジャン。
名物の鴨料理。この日食べた鴨は、NO.290185。