マスクなしで負け!? | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

きょうは、本来なら書きたくないことを書く。

大好きな世界で、大変残念なことが起きたからだ。

 

昨日行われていた第81期将棋A級順位戦4回戦で永瀬拓矢王座対佐藤天彦九段戦で、「対局中にマスクを着用しない違反行為」により、佐藤九段が反則負けとなったのだ。

新型コロナウイルス対策として、日本将棋連盟では、2022年1月に「臨時対局規定」を設け、健康上やむを得ない場合以外、「対局中は、一時的な場合を除き、マスクを着用しなければならない」とし、違反した場合は立会人の判定により反則負けとすると定めている。  

対局の終盤を迎えた午後11時ごろ、佐藤九段は112手目を指した後にマスクを片耳に掛けて考え始め、マスクを外して対局を続けた。

30分ほどたったところで、対局相手の永瀬王座が「反則負けではないか」と指摘。会館内に立会人がいなかったため、連絡を受けた将棋連盟の鈴木大介常務理事が急きょ駆け付け、佐藤康光会長らと協議した結果、反則負けが決まった。  

鈴木常務理事から反則負けを告げられた佐藤九段は「以前は、マスク着用の注意を受けていたケースもあった。今回は注意も受けていない」と反論したが、判定は覆らなかった。規定には判定に不服の場合は「1週間以内に、常務会に提訴することができる」とあり、佐藤九段は提訴することも検討する意思を示した。

 

イエローカードを出さずに、いきなりのレッドカード。

将棋界のトップランナーが命を削るようにして対局するA級順位戦の勝敗を、こんな形で決着させることに強い疑問を感じる。

佐藤九段は、マスクをはずしていることを忘れるくらい集中して考えていたのだと思う。対局相手の永瀬王座もひとこと「マスクをつけていただけませんか」と言えなかったのだろうか。

反則負けに該当するような時間になる前に、例えば5分くらいたったところで連盟側が注意をすべきはなかったか。連盟の規則運用上の対応に問題があったと思う。

曖昧で厳格なルール設定もないのに、負けの裁定を下されてはたまたものではない。

反則負けとなり対局室を後にする

佐藤天彦九段(29日午前0時18分)

 

日本将棋連盟が2022年1月26日に定めた「臨時対局規定」

第1条 対局者は、対局中は、一時的な場合を除き、マスク(原則として不織布)を着用しなければならない。但し、健康上やむを得ない理由があり、かつ、予め届け出て、常務会の承認を得た場合は、この限りではない。  

第2条 対局者は、対局場所たる建物内においては、対局以外の場合においても、できるかぎりマスクを着用しなければならない。 

第3条 対局者が第1条の規定に反したときは、対局規定第3章第8条冒頭各号の違反行為に準じる反則負けとする。但し、この反則負けには、同条第1項及び第3項は適用しない。  

第4条 前条の反則負けの判定は立会人が行い、立会人がいない対局においては、対局規定第3章第9条第4項の順序に従い、立会人の任を代行するものが行う。この判定に不服がある対局者は、対局規定第3章第8条第6項に準じて、判定後1週間以内に、その内容を常務会に提訴することができる。