日本廃品打楽器協会会長の山口ともさんと再会してきた。
ともさんには、ラジオにご出演いただいたり、プラネタリウムの効果音楽をお願いしたりした。だが、10年あまりのご無沙汰であった。
そのともさんが、篠笛神楽笛奏者の秋吉沙羅さんとコラボするというので出かけた。久しぶりだったが、会った瞬間、ご無沙汰感はすぐ吹き込んだ。
ともさんは、まさに「音を楽しむ人」「音を楽しめる人」。
廃品を楽器にしてしまう達人。ガラクタに命を吹き込む打楽器奏者。
トロ箱、お菓子箱、木片、金属片、パイプ、バケツ、針金ハンガー、
豆、砂利、プラスチック、布の切れ端…なんでもござれだ。
廃品をリサイクルして楽器を作り、楽しみながら地球環境を考えるヒントにもなり、まさにSDGsな音楽だ。
沙羅さんとの「即興」を交えた演奏の数々、心底楽しめた。
沙羅さんは、ともさんとは、いわば師弟関係のようなもの。上京してしばらく、ともさんの事務所に身を置き、音楽に対する感覚を学び影響を受けた。互いをわかり合い、信頼し合った上での合奏は、息ピッタリ。
今回の会場が、まさにリサイクル、リユースなところ。
築150年、江戸時代の蔵を改造した、カフェ&ギャラリー。
江戸から明治にかけての雷門周辺は、材木町と呼ばれ、隅田川を利用して、木材を運ぶ問屋が立ち並んでいた。
この土蔵は、幕末、川に面して材木店を構えていた三代目竹屋長四郎が建てたもの。土壁が厚さ30センチもある。
その厚みが、関東大震災と東京大空襲から守った。
戦後の都市開発にも巻き込まれず、頑張ってきたが、
いよいよ取り壊しという寸前、有志の芸術家や職人たちによって再生され、アーティストたちの表現の場として使われてきた。
だが、しかし。年内でカフェ&ギャラリーもクローズが決まったそうだ。
解体され、神代植物公園の中に移築されることが決まったらしい。
ギリギリセーフでこの空間で、音を楽しめてよかった。
(慶應四年八月 三代目竹屋長四郎の銘が)