福島に行って、そのまま帰るわけにはいかない。
天ぷら「ひら井」に寄らずばなるまいて。
ひら井に、初めて行ったのは8年前。
以来、福島に行くたび立ち寄るようにしている。
このたびも寄ってきた。
秋は食材が豊富だ。
店主の平井真一朗さんは、
その素材のいちばんいいところを際立たせる。
「こんなふうに調理してほしい」と、
まるで、素材の声が聞こえているようだ。
たとえば、シャインマスカット。
そのまま食べても甘いが、4分待って食べると、さらに甘くなる。
試行錯誤の末、4分がいちばん甘いという結論になり、
4分タイマーの砂時計を購入してきた。
たとえば銀杏。
3つ串刺しにしてあるが、串も研究の末、パスタを使っている。
たとえば栗にカボチャ。
蒸したものを揚げるからホクホク感がある。
素材をいとおしむように、丁寧な仕事をしているから、
もはや天ぷらの域を超え、
むしろ「ひら井」というジャンルになっている。
「こんなにふうにして食べてもらえて、ぼくたち満足」
天ぷらの囁きが、聴こえてくるようだ。
桑折町の銀杏 パスタの串で刺して
金山町のかぼちゃ 蒸した上で
茨城産のクリ 蒸した上で
シャインマスカット
川俣の軍鶏ささみを大葉でくるんで
(店主 平井信一郎さん)