コロナウィルスが教えていること⑫~キャスターのことば | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

阪神淡路大震災の時は、「おはよう日本」のスタジオにいた。

東日本大震災の時は、「ラジオビタミン」のスタジオにいた。

ことばの無力さも感じた。

ことばの素晴らしさも感じた。

不用意なことばを使ってはならないことは言うに及ばずだが、

用意したことばを使うことも、寄り添わないことが多い。

非常時に咄嗟の時に、放送現場のことばは、

よほど吟味されたものでないとならない。

 

新型コロナウイルス報道を巡り、ニュース番組のキャスターたちの

使うことばに注目が集まっている。

中でも、日本テレビ『news every.』の藤井貴彦アナウンサーが、

その存在感を高めている。

彼の使うことばが、時宜を得たものであり、視聴者の気持ちに寄り添ったものだからだ。

例えば…

「過去を変えることは出来ませんが、まだ2週間後の未来を変えることが出来ます」

「今、大切なのは、生活のために開けているお店への批判ではなく、お世話になってきたお店への応援ではないでしょうか。自粛要請の限界や矛盾を店主に押し付けないためにも、皆さんの温かい一言が必要です」

「発した言葉がその人を作ります。ささくれだった言葉で自分自身を汚さないように。心でコロナウィルスに負けてはいけません」

藤井アナウンサーの心のこもったメッセージは、Twitterでもトレンド入りするほどの反響を呼んでいる。「救われる」「心に響く」「ストレスが和らぐ」「気持ちが静まる」…と共感を呼んでいる。

かつて、『news every.』にコメンテーターとしてレギュラー出演していた鎌田實さんに、藤井評を聞いてみた。

「すごい!被災地に行ったときも、優しく寄り添うことばを咄嗟に言える人。きょうの藤井は何を言ってくれるのかいつも楽しみだった」と大絶賛。

 

情報は、「情けに報いる」と書く。

ボクの新人時代、ある方に教わった。

一人一人の喜怒哀楽に寄り添いながら、感情に報いることを、

ゆめゆめ忘れてはならない。