阪神淡路大震災の時は、「おはよう日本」のスタジオにいた。
東日本大震災の時は、「ラジオビタミン」のスタジオにいた。
ことばの無力さも感じた。
ことばの素晴らしさも感じた。
不用意なことばを使ってはならないことは言うに及ばずだが、
用意したことばを使うことも、寄り添わないことが多い。
非常時に咄嗟の時に、放送現場のことばは、
よほど吟味されたものでないとならない。
新型コロナウイルス報道を巡り、ニュース番組のキャスターたちの
使うことばに注目が集まっている。
中でも、日本テレビ『news every.』の藤井貴彦アナウンサーが、
その存在感を高めている。
彼の使うことばが、時宜を得たものであり、視聴者の気持ちに寄り添ったものだからだ。
例えば…
「過去を変えることは出来ませんが、まだ2週間後の未来を変えることが出来ます」
「今、大切なのは、生活のために開けているお店への批判ではなく、お世話になってきたお店への応援ではないでしょうか。自粛要請の限界や矛盾を店主に押し付けないためにも、皆さんの温かい一言が必要です」
「発した言葉がその人を作ります。ささくれだった言葉で自分自身を汚さないように。心でコロナウィルスに負けてはいけません」
藤井アナウンサーの心のこもったメッセージは、Twitterでもトレンド入りするほどの反響を呼んでいる。「救われる」「心に響く」「ストレスが和らぐ」「気持ちが静まる」…と共感を呼んでいる。
かつて、『news every.』にコメンテーターとしてレギュラー出演していた鎌田實さんに、藤井評を聞いてみた。
「すごい!被災地に行ったときも、優しく寄り添うことばを咄嗟に言える人。きょうの藤井は何を言ってくれるのかいつも楽しみだった」と大絶賛。
情報は、「情けに報いる」と書く。
ボクの新人時代、ある方に教わった。
一人一人の喜怒哀楽に寄り添いながら、感情に報いることを、
ゆめゆめ忘れてはならない。