中西龍のことばつれづれ③~話しぶりは品性の所産  | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

中西さんの本を読み返していると、いわゆる「中西節」が聞こえてきそうだ。含羞を感じるあの温かい声が。 

文章にも「中西調」がある。文章にも含羞がある。

含羞もあるが、信念もある。

その中西調から、きょうも「ことばつれづれ」。

 

鳥が飛ぶように、花に色があるように、人間には言葉がある。

だが、鳥は飛ぶことで無限の自由の中にいるのに、

人間は、言葉を使いあぐねている。

言葉は著しく便利で著しく不便なものだ。

言葉で言い尽くせないことがある。

言葉の便利さと不便さを、時折思い遣ることが大事だ。

その上で、可能な限り、言葉に色がついているようにしたい。

姿、形、色、匂いを具体的な比喩や形容で伝えたい。

それも使い古しになっていない、その人独自のもので。

相手の五感に詩的な感動を呼び起こすような話をしたい。

 

上手な話し方はない。

独りよがりにならない抑制の効いた「しみじみした物言い」を

心がけたい。

小さな事柄、日常茶飯事の中から見つける小さな詩のようなもの、

詩心にもとづいた物言い。

素直で柔軟できめ細やかな心遣い。

所詮、話しぶりは品性の所産なのだ。