中西さんの本を読み返していると、いわゆる「中西節」が聞こえてきそうだ。含羞を感じるあの温かい声が。
文章にも「中西調」がある。文章にも含羞がある。
含羞もあるが、信念もある。
その中西調から、きょうも「ことばつれづれ」。
鳥が飛ぶように、花に色があるように、人間には言葉がある。
だが、鳥は飛ぶことで無限の自由の中にいるのに、
人間は、言葉を使いあぐねている。
言葉は著しく便利で著しく不便なものだ。
言葉で言い尽くせないことがある。
言葉の便利さと不便さを、時折思い遣ることが大事だ。
その上で、可能な限り、言葉に色がついているようにしたい。
姿、形、色、匂いを具体的な比喩や形容で伝えたい。
それも使い古しになっていない、その人独自のもので。
相手の五感に詩的な感動を呼び起こすような話をしたい。
上手な話し方はない。
独りよがりにならない抑制の効いた「しみじみした物言い」を
心がけたい。
小さな事柄、日常茶飯事の中から見つける小さな詩のようなもの、
詩心にもとづいた物言い。
素直で柔軟できめ細やかな心遣い。
所詮、話しぶりは品性の所産なのだ。