あけましておめでとうございます!
このブログも、おかげさまで、7年連続、毎日更新出来ました。
今年もよろしくお願いします。
2020年、変化と胎動の年幕開け。
ボクは、これまでと変わらず、いやこれまで以上に、
「嬉しいことばの種まき」をしていくつもりです。
自分の引き出しに入れる「ことば」が枯渇しないよう、
本を読んだり講演を聴いたりすることも意識していくつもりです。
毎年、年末年始は、時間がふんだんにあるので、読書三昧。
その中から、きょうは、門井慶喜さんの『定価のない本』を紹介する。
神田神保町の古書店街が舞台。
ボクも学生時代、卒論を書くのに、古書を求めて通い詰めたことがある。古びた匂いには、人を誘う不思議な魅力がある。
神田神保町といえば、江戸時代は旗本の屋敷が立ち並んでいた。明治時代は、多くの学校がひしめく学生街になり、大正12年の関東大震災を契機に「古書街」として発展してきた。
この小説は、平成26年1月1日、祖母と孫のかるたとりを見ていた祖父の回想から始まる。
昭和21年、戦後の復興のさなか、
一人の古書店主が崩れてきた古書の中で圧死する。あたかも商売道具に殺されたような皮肉な最期だった。
その男・芳松と古くから付き合いがあった琴岡庄治は、現場で不可解なことを見つける。
行方をくらました被害者の妻、注文帖に残された謎の名前、GHQの横暴…晩年の徳富蘇峰や、若き日の太宰治も登場する中で、戦後日本の闇に潜む陰謀が炙り出されていく。
長編ミステリーとして、もちろん面白く読めるが、これは崩れゆく「日本文化」への警鐘を鳴らす本でもあると感じた。
戦後、敗戦によって、生活苦にあえいだ人たちが、貴重な古典籍を手放したことにより、価値が暴落したことがある。門井さんは、主人公の庄治に「日本人が日本文化を嫌いになったんだ」と言わしめている。
そこに乗じて、GHQによる「日本文化抹消作戦」が展開される。それを小説の中ではGHQ幹部に「ダスト・クリーナー計画」と呼ばせている。
日本の歴史や文化は「ダスト」だというのだ。
GHQ幹部は「嘘と偽りで塗り固めた科学精神のかけらもない国史はダストクリーナーで国外へ排出する」と息巻く。神話と直結させた天皇崇拝が軍拡や侵略や特攻に駆り立てた要因だと決めつける。歴史による自己陶酔こそが日本人の精神力の根源だと断定する。ゆえに神風を恐ろしいと正直に告白する。だから、日本から歴史を奪い、日本を更生させるのだという論法だ。
主人公の庄治と古書店主たちは、日本文化を守るため、敢然と立ちあがる…。
実際に日本人を骨抜きにする3S計画があった。スクリーン、スポーツ、セックスの3Sという大衆の欲望を駆り立てることで、政治への関心を逸らせ、大衆を操作する意向があったとされる。
変化と胎動の時代だからこそ、日本人が育んできたものを大切にし、活かしていくことを忘れてはならない。ひとことで言えば、すべてに「命」が宿ると考えた「思いやり」の精神だ。それは嬉しいことばを意識して使うことで伝えていきたい。その決意を新たにした元日だ。