愛知県長久手市の吉田一平市長は、
「わけのわからんこと」を言うのが好きだ。
「たつせがある」「わずらわしい町を作る」「行政は何もやらない」「遠回りすればするほどいい」「うまくいかないことがあるほどいい」…。こういう発言は、ともすれば批判の標的となる。
だが、吉田さんは、批判や批評は織り込み済みで、
あえて波紋を投げかけているように思う。
一平さんとは、長いつきあいだ。30年あまりになる。
彼が理事長をつとめていた「愛知たいようの杜」を訪ねて以来。
たいようの杜の広大な敷地の中では、お年寄りも子どもも動物も、自然の中で時間を気にせず過ごす。そこには「赤の他人」というような冷たい関係はない。互いが互いを思いやるやさしさがある。だが、整然とせず混沌としているから、簡単にわけのわかる施設ではない。何かがいつも変化している。誰にも「たつせ」がある。
彼は、8年前、長久手市長(当時は長久手町長)になった。「たいようの杜」で試みていることを町作りに生かそうとしたのだ。
長久手市は、日本中が抱える「高齢化」「人口減少」「大災害」という課題に縁がない。人口は増え続け、若年層が多く、大きな災害にも見舞われていない。だが、吉田さんは2050年を見据えている。そう遠くもない将来、長久手にも3課題はのしかかるに違いない。その時になってあわてなくてもいいように、行政任せでなく、地域住民が互いに知恵を出し合い、一人一人にたつせがある町作りをと、一平さんは訴えているのだ。
一平さんに招かれて講演と対談をしてきた(6日)。
ボクは、わからないことはいいことだと言った。
簡単にわかってしまうより、考えることの方が大切だ。
〇とか×とか決めつけず、事実と真実を見極めるためにも、
時間をかけて考えて知恵を絞り出したらいい。
一平さんの口癖は「よろしくたのむわ~」「すまんな~」「わるいな~」。
そう言われて絆された人の何と多いことか。
ボクもその一人だ。
トレードマークのオレンジベストには、
「まちづくり まずは笑顔でこんにちは」と書かれている。
一平さんと食べた「水蕎麦」の美味しかったこと!