料理研究家の坂本廣子さんが亡くなった(6月28日)。享年71。
実は、つい最近まで知らなかった。
新聞整理をしていて、死亡記事を見つけ驚いた。
坂本さんは、NHK教育テレビで人気を博した「ひとりでできるもん!」の監修をした。主宰する料理教室でも幼い子に包丁を持たせ、体験を通じて自立する力を育む「台所育児」を実践した。
阪神淡路大震災で被災した経験をもとに、災害時のサバイバル料理のを紹介し、防災教育にもつとめた。
ボクは、公私ともに親しくしていただいた。
NHK大阪時代、ラジオセンター時代、何度も番組でご一緒した。
新刊が出ると、毎回送っていただいた。
毎年、イカナゴのくぎ煮も届けていただいた。
京都の和食屋さんも紹介してもらい、食事をともにしたこともある。
明るくおおらかな人だった。
坂本さんは、自分の死を覚悟し、会葬御礼を自分で書いていた。
イカナゴのくぎ煮に、いつも添えられていた懐かしい筆跡だ。
筆使いにいささかの乱れもない。
会葬御礼を自分で認めた人を、ボクはこれまで知らない。
その中に「・・・もう少しとも思いましたが、しっかりと後継が出来たので、是非、最終章までご指導くださいませ」とある。
後継は、姿形がそっくりの長女の佳奈さん。まさに台所育児の見本。
2歳から包丁を持ち、年長組の時には、家族の夕食を作っていた。
阪神淡路大震災では、書籍の下敷きになり仮死状態になるが、母の心肺蘇生で九死に一生を得た。
母に救ってもらった命。このたび、さらに母の命のバトンを受け継ぎ、
母の想いを体現していくことになる。
会葬御礼は、こう結ばれている。
「『ひとりでできるもん!』で日本の食育の基礎が出来、あと「うちごはんプロジェクト』で日本を変える食育が完成します。その日を楽しみに、ちょっとお先にお別れです。本当に有難うございました」
(坂本さん直筆の会葬御礼)
(故・坂本廣子さん)