京都の名店『和久傳』の大女将、桑村綾さんと2人だけで、
室町和久傳のカウンターに並んで食事をしてきた。
選び抜かれた素材を食し、大女将の含蓄ある話に耳を傾け、
至福の時を過ごした。
京都で開いているボクの講座に社員を派遣してくださっている御礼に伺ったのだが、逆に御馳走になってしまった。
「あなたは、いつも、いきいきわくわくしているところがいいわね」と
持ち上げてくださる。
「NHKでアナウンサーをしていた人が民放に行くと、違和感が大きい。
その点、あなたは民放にいかず独自の道を選んでいるからいいわ」と、、またまたいい気持ちにしてくださる。
実は、大女将とお目にかかるのは、この日が2回目。
人見知りといいながら、どれだけ人懐こいのだ。
「女将と呼ぶと、1回1000円の罰金をとる」と言われながら、
ついつい口にしてしまう。
だが、丹後から「イケズ」渦巻く京都に出てきて、一代で今日の和久傳を築き上げた人に、敬意をこめて「女将」としか言いようがない。
ご当人は
「何も知らないから出来たこと」
「ダメでもともとだから出来たこと」と、涼しい顔だが、よう言わはる。
24歳で、丹後の料亭旅館に嫁ぎ、42歳で一念発起、
老舗料亭が軒を並べる京都に打って出た。
いま後継者となった娘の祐子さんには、「近づいたら火傷する熱い人」と言われる。
老舗と一線を画すべく、丹後直送の新鮮な食材を取り寄せ、囲炉裏端で食べてもらう野趣あふれる工夫が受け入れられた。次々経営を拡大、その名が知られるようになった。
また「罰金!」と言われそうだが、傘寿も近いとは、まったく思えない。
肌艶はキレイ、立ち居振る舞いもしなやか、色気も漂う。
人の話も真剣に聞いてくれる。人の気をそらさない。
心底、素適な人だと思う。
後ろを振り返らず、いつも未来を見てわくわくしている。
(桑村綾さんと)
(すべての料理が完璧に美味しいが、
このご飯がたまらない)