「ル・クロ」のオーナーシェフは、薩摩隼人だ。
「常に何かを自分に問いかけ、何かに挑戦しつづける男」だ。
自分の可能性を自分で封じ込めないよう、目配りして人材育成している。だから、飲食業界では珍しく、スタッフの離職率は低く、復職率は高い。
黒岩さんは、幼い頃、コンプレックスの塊だった。ぜんそく持ちで身体は弱く、成績は落第寸前、家庭にもいろいろあった。
だからコンプレックスをもった人の気持ちがわかる。
だから、コンプレックスは力になるといえる。
劣等感を持った人間には、成長の余地が無限に残されていると言い切れるのだ。コンプレックスは成長する最大のエネルギーになる。採用面接で、どんなコンプレックスがあるか確認している。そして、個々人のコンプレックス解消の環境を用意するよう心がけている。自分の潜在能力を自分で気づけるようサポートしていく。
店名には、黒岩の「クロ」を入れたくて、いろいろ調べるうちに、フランス語で畑を意味する「ル・クロ」ということばに出会った。「何もない更地を、自分の力で耕して畑の育てていこう」という思いを込めて、店名に決めた。組織は畑、社員は種。種が育つ畑にしていかねばならない。
経営者と社員、社員同士に溝や壁を作らないよう心がけている。
毎日、朝と夜のミーティングに時間をかける。
個の問題を全体の問題とするためだ。他人事にせず、同じ過ちを繰り返さないため、具体的方策をみんなで考える。反省や課題指摘だけで終わらない前向きなミーティングだ。経営者からの「やらされ仕事」はない。
仕事の段取り時間を明記する「明日の仕事表」も作成している。
経営指標や役員給与も公開し、透明性を高めている。同時にそれは士気を上げることにも繋がる。
「おはよう」の握手、「おつかれの握手」、「ありがとう」の握手、黒岩さんは、ことあるごとに握手を欠かさない。握手は気持ちを切り替えるスイッチになる。と同時に、体調や精神状態を推し量ることも出来る。
サービスマンとして、最も大切なこと。それは、いついかなるときも笑顔でいること。仕事に集中熱中している「真顔」もいいが、客の存在を忘れてはならない。お客さまの満足が第一。笑顔の待機をして、笑顔こそ真顔だと考えるべきだと、黒岩さんは、断言する。
お客さまの喜びが自分の喜びとなることが、この仕事の醍醐味。
それが味わえるから、仕事を辞める人が少ないのだろう。