第2期京都ことば磨き塾スタート | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

京都新聞文化センターでの「ことば磨き塾」が、

第2期を迎えた。

エントリー17名中、6名が留年組。

新しい参加者と、新たな気持ちでスタートした。

 

人間に許された「ことば」という道具。

だが、使いこなすのは大変だ。

無意識に「ことば」を使わず、意識して使ってみると、

見えてくるものがある。

「ことば磨き塾」の2時間は、ことばを主人公にして、

みんなで、ことばの丁寧な取り扱いを考える場だ。

 
第1回は、「〇〇ファースト」の自己紹介。
「息子ファースト」か「わんこファースト」にするか悩んだ末、
「わんこ」を選んだ女性。
若く見えたので、幼い子も可愛いが、ペットも可愛いというような
他愛のない話かと思った。
ところが、違った。いきなり泣き出した。
「チワワを飼いはじめ、いま5人になり、可愛くて可愛くて」。
5人と呼ぶあたり、人間と同じように溺愛していることがよくわかる。
それにしても泣かなくてもいいのにと思った。
ところが理由があった。
「子ども(高1の娘と中1の息子)が反抗期で、
どうしていいかわからず、自分が引きこもり、しんどい時期に、
どれほど犬に癒され救われたかわからない」というのだ。
感情豊かな人だ。泣くという感情もしまわずに出したほうがいい。
初対面の人の前で感情が出せてよかった。
また、出せる空気があったのだろう。
 
ところが、
その女性の隣の方に順番が回ったとき、もっと驚くことがあった。
「私は、話すことが苦手で・・・」と言いながら、「実は、いま話したのは娘なんです」と。一同どよめく。娘に付き添いを頼んだそうだ。
「共感ファースト」をテーマに「娘が大変な時期に、『そやけどな』と否定してきた。娘が診てもらっていた精神科の先生から『そうやね』と共感しているフリをするよう言われた。最近は、そのフリが板についてきた気がする」と締めくくった。
娘に感想を聞いた。
「本人は共感と言ってるけどまだまだです」と辛口。
でも、ここに一緒に来られてよかったね。
 
全盲の高橋和人さんも新たに参加してくれた。
ラジオビタミンにほぼ毎日メールが来ていたので、
もちろん名前は覚えている。
Twitterでも繋がっていたが、お会いするのは、この日初めて。
声が甲高く、よく女性に間違えられるらしい。
ラジオビタミンで電話で話したときも、第一声を聞いたボクが
「女性の方ですか?」と失礼なことを言ったらしい。
忘れてたけど、高橋さんゴメンナサイ。
彼は、「試みるファースト」というテーマで語った。
中途失明でくさっていた時期があった。
そんなとき盲学校の先生に「出来ひんことを理由にしてへんか」と言われた。それから何でも「試みる」ようになった。「試みるとは心を見ることにもなる」という。
パソコンを習熟し、プログラミングも勉強し、放送局にもメールし、世界を広げた。最近は囲碁も始めたそうだ。
ユーモアセンスもあり、この塾のムードメーカーになりそうだ。
 
短い時間に簡潔に「半生」を語る女性もいた。
40代後半で夫を亡くし、自営業を引き継ぎ、無我夢中でやってきた。
60代になり、一人息子にバトンを渡し、これからはゆっくり自分の時間を持とうと、ここにも来たという。語り尽くせぬ思いを簡潔に語られると、
その「半生」に聞き手は想いを馳せられる。
彼女は「感謝ファースト」と言った。
 
交替で職員を派遣している設計事務所から、今回来た男性。
「自主的に来たわけではないが、棚ぼたって感じ。ふだん聞けないような話が聞けてよかった」と率直な感想を聞かせてくれた。
まさにここは、人生勉強の場。
いろんな生き方考え方に共感し、感性を磨いていけば、
おのずと、ことばも磨かれる。