柳田邦男さんは、NHKの大先輩。
敏腕記者として活躍していたが、NHKを早く辞め、
ジャーナリストとして健筆を奮っている。
絵本にも造詣が深く、ボクの担当していたラジオ番組で
定期的にオススメ絵本を紹介してもらっていた。
穏やかな語り口で絵本を朗読されると、思わず引きこまれた。
社会部出身の記者なのに、怒りをあらわにすることもなかった。
その柳田さんが怒っている。憂えている。
月1回、毎日新聞に連載している「柳田邦男の深呼吸」で、
核心をはぐらかす虚構の言語と銘打ち、
民主主義の落日を指摘している。
戦後の歴代政権の中で、
安倍政権ほど欺瞞的な言葉の乱発はなかったと嘆いている。
NHK記者として、ノンフェクション作家として、
ことば選びには慎重を期してきたから、よけいに感じるのだろう。
戦時中、「全滅」を「玉砕」と美化されたり、
「敗退」を「転進」とごまかされたり、権力側の虚構の言語による世論操作には敏感になっているからだろう。
ここからは、柳田さんの思いにムラカミの思いをミックスして伝える。
いまの政府には「誠意あることば」がない。
「相手を慮ることば」がない。
これは追及する野党や質問する記者にも言える。
「売り言葉に買い言葉」であってはならない。
先日の菅官房長官記者会見で、東京新聞の女性記者が
丁寧な言葉で粘り強く問いを重ねていた。
「当たらない、必要ない、それはない、問題ない」の常套句を連発する菅さんも、いささかたじろいでみえた。
感情的にならず、品性を忘れずに向き合うことは大切だ。
それにしてもだ。
閣僚の言葉の質の低下は目に余る。
不用意発言、失言、問題発言ではなく、思わずポロリの本音発言ではないだろうかと考えたくなることばが続く。
核心をつく質問に対して、きちんと答えずはぐらかす。
人格を否定するようなことばを公的な場で口にする。
公的な場で特定個人を人格攻撃するなんて、ただごとではない。
攻撃される側は、権力者と対等に議論出来る立場にないからだ。
「印象操作」をしているのは、権力者側ではなかろうか。
連載タイトルのように、もっと深呼吸して、相手の立場を考えて、
ゆっくり吟味してことばを選ぶべきだ。
温厚篤実な柳田邦男さんを、ここまで怒らせてはならない。