型破りな利休 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

 

型を会得した上での型破りな生き方を紹介する第四弾は、

茶人・千利休。

利休は、新しい美の価値観を作り上げた。

利休個人の美意識を世間の美意識に変えた。

「わび茶」という茶の湯文化を確立させた。

 

彼のいう「わび」とは、

「全部整ったものは面白味がない。歪みや不完全なところがある」ことをいう。

利休は、常に新しい工夫を凝らして、意外性で人を喜ばせる達人だった。だが、「作為が出すぎるとわびていない」と、これみよがし的なものは避けた。

 

利休が求めたのは「極小の美」。

ごくわずかなもの、ごくわずかな動き、ごくわずかな文字、

ごくわずかな香り・・・そういう出来るだけ小さいものに、より多くのものを想像させる。自分を無にして一体化する境地なのだ。

 

利休が、「もてなしの心」を詠んだ歌がある。

振舞は こまめの汁に えびなます 亭主給仕を すればすむ也

一汁一菜の質素なものでいいが、人任せでなく亭主自らが給仕する。

心遣いを最も重視していたことがわかる。

質素な食事をわびしいものに感じさせないようにするには、どうしたらいいのか。それは「一期一会の工夫」。

その場その場だけでの一回限りの臨機応変の「工夫」。

利休が自分が意図した「型」にこだわり、「型」にこだわり過ぎなかったゆえんがそこにある。