型を会得した上での型破りな生き方を紹介する第四弾は、
茶人・千利休。
利休は、新しい美の価値観を作り上げた。
利休個人の美意識を世間の美意識に変えた。
「わび茶」という茶の湯文化を確立させた。
彼のいう「わび」とは、
「全部整ったものは面白味がない。歪みや不完全なところがある」ことをいう。
利休は、常に新しい工夫を凝らして、意外性で人を喜ばせる達人だった。だが、「作為が出すぎるとわびていない」と、これみよがし的なものは避けた。
利休が求めたのは「極小の美」。
ごくわずかなもの、ごくわずかな動き、ごくわずかな文字、
ごくわずかな香り・・・そういう出来るだけ小さいものに、より多くのものを想像させる。自分を無にして一体化する境地なのだ。
利休が、「もてなしの心」を詠んだ歌がある。
振舞は こまめの汁に えびなます 亭主給仕を すればすむ也
一汁一菜の質素なものでいいが、人任せでなく亭主自らが給仕する。
心遣いを最も重視していたことがわかる。
質素な食事をわびしいものに感じさせないようにするには、どうしたらいいのか。それは「一期一会の工夫」。
その場その場だけでの一回限りの臨機応変の「工夫」。
利休が自分が意図した「型」にこだわり、「型」にこだわり過ぎなかったゆえんがそこにある。