ノートルダムの鐘 | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

四季劇場に、久しぶりに足を運んだ。

新作ミュージカル『ノートルダムの鐘』のプレ公演を観てきた。

ディズニーやマスコミなど関係者ばかりだが、惜しみない拍手が送られていた。

 

『ノートルダムの鐘』は15世紀末のパリを舞台に、

ノートルダム大聖堂の鐘楼に住む異形の青年カジモド、

彼を世話する大聖堂大助祭フロロー、警備隊長フィーバス、

その3人が同時に愛するジプシーの娘エスメラルダを中心に物語は紡がれる。

この日のエスメラルダ役の岡村美南さんの歌唱や演技が光った。

富山県射水市出身ということで、親近感を持った。

 

舞台は、木組みで作られた鐘楼で展開される。

大がかりなセット転換はない。

ベンチや柵を効果的に動かすことで、街中やジプシーたちの隠れ家へと変化していく。

出演者も、ローブを脱いだり着たりすることで、どんどん違うキャラクターになっていく。

シンプルだからこそ作品の要である音楽も際立ち、

役柄の感情を歌にぶつける出演者たちの熱唱が耳に残る。

ミュージカルにしては、宿命に翻弄される悲哀を描くシリアスな内容。

矛盾に満ちた世の中で、理不尽なことが繰り返されるが、

人は、一縷の望みを捨てない。明日を信じて祈る。

容貌怪異なせむし男を、人は蔑み敬遠するが、

むしろそれを取り巻く人々の方が、善人面をした怪物かもしれない。

人間が抱えた闇だけが描かれるのではない。

極限に追い込まれても、自分のことはさておき、人のために生きる姿には、

光を感じる。

 

劇団四季、久々の力作『ノートルダムの鐘』は、明後日11日初演。

来年6月25日までの上演が予定されている。